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マリンスノー
波の響きは 遥か遠くに風と流れ
漂い散る光は 水面で囁いている
ここは深海 ただ硬質な不毛に徹し
闇よりも濃い水の中 全て飢えている
ちか、ちか、と明滅する光
脆く、儚く、砕けそうな光
眩しかったのか、珍しいからか
誰も知らぬ鱗を纏ったイキモノが
もぐもぐ、と口を動かしながら
よろよろ、と進んでいけば
ばっくん、と喰われてしまった
しばらく大きな口を伴った光は
その場に佇んだままであったが
飢えは未だ満ち足りぬのか
腹で命を砕きつつも泳いでいく
マリンスノーが降っている
死へと導く光に照らされて
淡く、白く白く輝いている
マリンスノーが降っている
いつかどこかで朽ちた命が
誰かの飢えを満たし始める
マリンスノーが降っている
誰もが預かり知らぬ場所で
今もまだ、積もったままに
マリンスノー 深海の星
網に釣られて 漁師の手の中
垢みたいに こんにちは