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降ってゐる
雨が降ってゐる
雨が降ってゐる
誰を労う訳でも
誰を慈しむ訳も
無いのであるが
雨が降ってゐる
雨が降ってゐる
煙のように薄らと
鉄森を灰に染めて
道が象られていく
雨が降ってゐる
雨が降ってゐる
神々が零した泪か
人の集い積った涙か
どちらも同じことだ
雨が降ってゐる
雨が降ってゐる
人の哀しみを覆ひ
友人の別れを彩り
肩から染みて慰める
雨が降ってゐる(夕暮れ時の)
雨が降ってゐる(未完成交響曲)
どこかで白波が高く響き合うが故に
たゆみなく風が己を顧みないが故に
私は一人、ここに立つのだ
一度この雫に身を投げ出したなら
震える冷たさを分ち合ったのなら
誰もが平等でなければならない!
―――――――……はずなのに