10/61
おくり火
ゴウッ、と
炎が燃え盛るでしょう
その輝きの元で
私は、貴方からの
手紙を読みます
カサッ、と
手紙が擦れるでしょう
吹いた風の中に
私は、貴方が唄う
声音を聞きます
ジイッ、と
筆跡を見詰めるでしょう
声の形の狭間に
私は、貴方に浮かぶ
想いを嗅ぎます
パラッ、と
懐紙が翻る事でしょう
綴られる文の果て
私は、貴方が送った
"嘘"に触れます
―――またいつか、と
ポツッ、と
一滴の雫が、炎に
照らされ、落ちるでしょう
グニャッ、と
私の世界が歪むでしょう
そうしたら、貴方の
最期に綴った嘘も
ポウッ、と
霞んで滲んで
見えなくなるでしょう
サァッ、と
再び風が吹くでしょう
―――「またいつか」
響く無音に、私は
立ち上がります
光の中に、手紙を
残したままに
貴方への想いを糧に
炎は、まだ、消えません




