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悪魔少女の祓魔術《エクソシスム》  作者: 加賀谷紫苑
悪魔の右手と乙女の純情
6/6

陰陽道Ⅰ

久々の更新です。いやぁどっちつかずは駄目ですねぇ。

「八点を固定。結界を発動」

 小柄な少女が叫ぶ。

「結界を多重展開。式神、白虎を召喚」

 時刻は深夜。

 その時間帯に、年頃の少女が一人で人気の無い場所にいるのはかなり物騒である。

 さらにはその出で立ちも不可思議。

 足元まであろうかと言う長い黒髪を一つに纏めた髪型。肩の露出した巫女装束 (と言うかそのコスプレ)。足元も草履と凝っている。

「水を持って木とし、木を持って火とし、火を持って土とし、土を持って金とする」

 言葉とともに何かが発光しだす。

 徐々に照らされてあらわになる、少女の前の光景。

 薄青い結界。

 封じられた上級悪魔。いわゆるキマイラ。ライオンの頭に山羊の体に毒蛇の尻尾を持つ怪物である。彼女たち陰陽師・・・ぬえ等と呼んだりもする。

 黄色と赤の鮮やかで毒々しい色彩を持つ魔獣の前に召喚されたのは真っ白な虎。五行の金属性をもち、風水において西を守護する四神獣、白虎。

 白雷を纏った神獣は四肢を雄々しく振るわせると結界を隔てて対面した悪魔に牙を剥く。

『ぐるぅぅぅぅらぁぁぁぁ!』

 同時に結界の一面が解除される。

『ぐるらぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!』

 咆哮。

 雷が放たれキマイラを捕らえる。

『GYAAAAAAAAAAAAAAAAAAAA!!!!』

 キマイラが絶叫する。白虎はまるでその声を止めるかのようにその喉笛に噛み付いた。

『GYAAAA……AAA…A………AA……』

 消え行くような断末魔を上げて魔獣の肉体の至る所が砂と化す。

 胸の肉がボロボロと砂になっていき、真紅の宝石。つまり魔物の核。

 少女が両腕で抱えても抱えきれないような大きな核。

 露出したそれに少女は錫杖しゃくじょうを突き立てる。

 パリィィィィ

 金属音がして核が砕け散る。と共に白虎に噛み付かれところどころが砂となっていたキマイラは今や完全に砂となり崩れ落ちた。

「ふぅ」

 少女は短く息を吐くと彼女よりも背の高い白虎の喉を撫でてやる。

「ありがとう、白虎」

『我が主よ、我はそんな撫でられた程度では……そ、そこ、もうちょっと右』

 白虎が威厳も糞も無い可愛らしい声を上げる。

「うんうん。分かってる。またよろしくね」

 そう言って少女が印を切ると、白虎は風となって消えた。

 同時に彼女の着ていた巫女装束も消え服装はリボンタイつきのブラウスに紺のプリーツスカート、白のハイソックスと茶色のローファーといった平凡な服装。

 整った顔は表情に乏しく、錫杖を抱え少し顔をしかめながら帰路に着いた。

    ■

「いいか? 絶対何も触るなよ!」

「それは触れと言うフリですかな?」

「ふざけんな!」

 夏休みの後半に控えていた学級登校日。

 何故か煉の高校に存在する悪しき風習である。

 今からそれに出掛けると言うところ。そうして不穏分子に釘を刺しているのだ。

「ってかさぁレンレン」

「レンレンゆーな」

「なんでこの家誰も居ないの?」

 そう言って無意味に床を転げまわる。

 サシャが煉の家に居候して四日が経つ。その間にこの少女の奇行には慣れている。

「両親は仕事で世界を飛び回ってるし妹は部活の合宿であと一週間帰ってこない」

「ほぇー」

 そういってサシャは三点倒立を決める。

「スカートで逆立ちすんな。パンツみえんぞパンツ」

「いってらっしゃい。私は大丈夫」

「どこがだよ」

 頭を使ってブレイクダンスの要領でくるくる回るサシャを半眼で睨みながら言う。

「いやホント大丈夫だよ、信じて」

 姿勢を正すと煉の目をまっすぐ見てきた。ちなみに煉は逸らす。後ろめたい事が在るから。白だった。

「ふぅ、分かったよ」

 サシャはよく分からない言動をよく取るが、こうやって姿勢を正した真剣なセリフでは嘘をつかない。これまた四日間で分かっているので諦める。

「行って来る。十二時半くらいに帰るから昼飯はちょっと待ってろ」

 煉が四日間で学んだ事その三、この悪魔少女の料理スキルは皆無である。

「ほーいっ」

 元気良く返事をする少女を不安げに見詰め、鞄を取る。

「行ってきます」

「行ってらっしゃい」

 お気に入りの日傘を広げ、煉は真夏日の中に繰り出した。

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