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悪魔少女の祓魔術《エクソシスム》  作者: 加賀谷紫苑
悪魔の右手と乙女の純情
4/6

悪魔祓いⅡ

「じゃあ、服貨して」

 サシャが手を出す。

「……は?」

「は? じゃないよ。服貨して」

 えーっと。

「何故?」

「言ったじゃん。私のこのローブも祓魔術エクソシスムで生成したものだからその内消えるの。だから」

 「服貨して」と手を出すサシャ。

「……僕がお前を手伝うのは確定事項なのか?」

 煉の部屋のサシャが上がりこんでからおよそ二時間が経っていた。

 議論は平行線で結局決着はついていなかったのだが。

「もう、手伝ってくれれば良いじゃん。私の力は全部煉にあげたんだし」

「お前が勝手に押し付けてきたんだろ?」

 煉はいい加減うんざりしていた。

 というかこの少女の自分への態度が一時間でかなり砕けてきた気がする。

「ええぇぇ。いいじゃんいいじゃんいいじゃんいいじゃんいいじゃんいいじゃんいいじゃんいいじゃんいいじゃんいいじゃんいいじゃんいいじゃんいいじゃんいいじゃんいいじゃんいいじゃんいいじゃんいいじゃんいいじゃんいいじゃんいいじゃんいいじゃんいいじゃんいいじゃんいいじゃんいいじゃんいいじゃんいいじゃんいいじゃんいいじゃんいいじゃん」

「うざいうざいうざい」

 煉にとってもっとも恐ろしいのは自分がこの状況に慣れ始めている(・・・・・・・)事。

 祓魔師エクソシストって奴をやっても良いと思っている自分。

(おいおいおいおいおいおいおい、僕はいつからこんな非日常の身を置くことをよしとするような人間になったんだ)

 必死に自分を律するも、自分の中のもう一人の自分がやってやれば良いんじゃないかと言っている。それに目の前で目を潤ませながら手を合わせている少女を無下には扱えなかった。

「………ああっ! もう分かったよ! やるよ、やってやる。ただしお前が僕の中から力を取り出せるようになるまでだぞ!」

 煉が半ばヤケクソで叫び、クローゼットを漁る。

 なるべく男女どっちでもいいような服が良いのだろうが、煉は自らの容姿のせいであまり中性的な格好はしないようにしているので、結構男物ばかりである。

「コレ着てろ!」

 取り合えず、紺の短パンと茶色っぽいフード付きのシャツを放り投げる。

「おう、さんきゅー」

 サシャはそう言うと、その場で服を脱ぎだした。

「うぉい! 何脱いでるんだよ!!」

「え? 脱がないと着替えられないよ?」

 キョトンと首を傾げるサシャ。ローブは既にはだけに、はだけ、胸元の当たりまでが大きく露出していた。そして見えるのはブラジャーの肩紐のみ。

 って、下、服着ろよ!!

 そう思いつつ煉は光の速度で後ろを向く。

 取り合えず見たら駄目だろう。

 時間にして五分も掛かっていないだろうが、錬にはそれが永遠に感じられた。

「いいよー」

 煉の前で服を脱ぎだすほどの無神経でも、彼が後ろを向いた理由を察したのか着替え終わった後に声をかけてくれた。

「おう」

 振り返ると先ほど渡した服を着用したサシャ。

 なんと言うか滅茶苦茶可愛い。

「どー? 似合ってるぅー?」

「ん? ああ……」

 煉は取り合えずなんとなく褒めておいた。

 ここで可愛いなんて言えば絶対コイツは調子に乗る。

 それだけは阻止したかったので変に生返事を返してしまった。

「そっ、じゃあ悪魔の講座をはじめるね」

 そう言って立ち上がるとサシャは髪を纏め、伊達眼鏡をかけた。

 正直男物の服でそれをやってもあまり似合わないが、まぁそれで悪魔の弱点教えてくれなかったら錬にとっては死に直結するので言わないでおく。

「悪魔は超超超回復能力の持ち主なの。殺すには中心の核を破壊するしかない。まぁ私たち上級悪魔は人間で言う脳の部分に核があるわけだけど」

 サシャは自らの頭をポンポンと叩いてから言葉を続ける。

「悪魔は核を破壊される以外の傷はそっこーで治すから、攻撃しまくって出てきた核を見失う前に破壊って感じかな? まぁ肉ごと核を貫ければ最短だけど」

 サシャはそういうと言葉を切った。

「…………」

「…………」

「…………」

「……それだけ?」

「うん」

 なんと、単純明快だった。

「だって、さっき私が着てたあのローブの防御力は半端ないし、祓魔術エクソシスムには回復系のものもあるし、その使い方は、私が直接送った力が教えてくれるだろうし」

 「うん大丈夫」と、本気で言っている辺りが怖い。

「はぁ、でもあれだ。やっぱ強くなるには実戦経験が必要だろ? ポ○モンだって戦闘に出ないと経験値溜まんねえじゃん? それとも何? 学習装置があったり、馬車に入ってるだけでいいの?」

「馬車、ポケ○ンじゃなくてドラ○エだし……ってそうじゃなくて……悪魔召喚とか?」

「呼んで殺すの? 酷くね?」

「まぁ……」

 結局ぶっつけ本番か。いやまぁ、何か練習が有れば……。まぁ悪魔と戦うという点ではどれにせよぶっつけ本番だが。

「はぁ、まぁ、仕事が無いのが一番なんだけどねぇ」

 この少女は戦場カメラマンみたいなことを言う。

「まぁ、それもそうか。まぁ仕事が無いに限るよな? 僕の命の危険も減るし」

 そう言って気軽に構えていたが、

「ん?」

「どったの?」

「いやなんか急に体が引っ張られてるような感覚が……」

 どうも両肩を掴まれて後ろに引っ張られているような感じがする。

「………あっそうだ!」

「ん?」

「私たちは、下級悪魔が暴れてると、そっちの方向に体が引っ張られる感覚があるんだった! 鬼太郎の妖○アンテナみたいな?」

「………? ってことは?」

「初仕事到来! 良かったね、煉」

 まさかの電撃的に初仕事到来。

(嫌過ぎる!)

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