(短編) 小説の書けるシャープペンシルの芯 - 1,100文字
商店街にある古ぼけた文房具店で見つけてきたこの0.9mmの太さのシャープペンの芯、国産品のものの聞いたことのないようなメーカー名で、商品名も『The文豪 ショートショート』とへんちくりんな名前の商品だけど、性能が物凄い。
シャープペンから芯を出してノートに載せるだけで勝手に文字を書きはじめて物語を紡ぎ出す。
5分もすると原稿用紙キッカリ5枚分の短編小説を書上げる。
話の内容もとても面白く試しにショートショート作品のコンテストに出してみたらコンテストに優勝して出版話さえ来た。
僕はこの芯を使って書いて書いて書きまくった。
一か月ほどで本一冊分の原稿を書き上げて出版社に持っていくとこれは面白いと絶賛され出した本はベストセラーとなり、僕は新生の高校生作家として有名人となった。
でも、一つ忘れていた。
僕は高校生であった。
当然期末テストが有る。
僕は全く勉強してなかったので期末テストがさっぱり解らず、The文豪のシャープペンシルで適当に解答欄の空欄を文字を埋めたら「ふざけんな!」と先生に怒られ当然全教科赤点で再テストを受けることになった。
「この芯のせいだな」
と僕は芯のせいにして文房具に新しいシャープペンの芯を買に行くと『The学生 優秀生徒』という芯が売ってたので買ってみた。
この芯はテスト用紙にシャープペンから芯を出して回答用紙に載せるだけで勝手に答えを書いてくれる優れものだった。
当然、テストは全問正解で赤点を逃れた。
そんなこんなで僕は小説を出しまくりテストは常に満点で、TV出演するほどの日本一有名な高校生となった。
そんな僕に不幸が舞い降りた。
多くの本を執筆したのでシャープペンの芯を使い切ってしまったのだ。
文房具店に行くと既に『The文豪 ショートショート』は売っておらず、在庫品を全て買い占めたものの売ってたのは『the文豪』でも『ミステリ』やら『ラノベ』、『官能』で本を出しても作風が変わったと言われて誰も読んでくれなくなった。
半年もすると一発屋の作家として過去の人になってしまった。
その後の僕は人生どん底に落ちて終わったと思っただろ?
残念でした。
俺は残ってた芯の『the学生 優秀生徒』で東京大学の法学部に入学し卒業、
買い占めた芯の中にあった『the学生 資格試験』で司法試験に合格、
そして『The裁判官 主文判決文』で書いた素晴らしい判決文で名裁判官と呼ばれてるのさ。
まだ買い占めたシャープペンの芯はいろいろある。
次は何になろうかな。
検察、政治家、発明家、まだまだ芯は沢山残っているぞ。