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 01

 支部に帰ってみると、すでに大騒ぎになっていた。

 特務課長の乃木があわてて走ってくる。

「だいじょうぶだったか? カスガ」

 なぜカスガばかり心配する。オレも狙われたんだぞ、と少し不服そうなサンライズを、ローズマリーがそっと脇に呼んだ。

「サンちゃん、大変だったねえ」

 オマエ、巻き添えくったらしいぞ、と小声でささやく。聞くと、総務課経理ご担当春日宏光様宛ての手紙が届いたのだと。

「メール便だったからさ、事故の影響で届くのが遅くって」がやがやした事務所内で、ローズマリーが春日のほうをちらっと見て肩をすくめる。

 サンライズ、春日のデスクに向かった。数人から事情を聞かれている。

「ああ、サンちゃん」

 春日は手に、くだんの封筒を持っていた。中身はデスクに拡げてある。

 ちょっと見、結婚披露宴の案内状のようだ。しかし、封筒もカードも黒い。

 宛名もカードの文面も、印刷のようだった。白っぽい流れるような文字。

「見てくれよ、これ。日付は今日だ。『本日、貴方を殺害させて頂きますのでご了承ください』だって。予告状が来てたんだ」

 いつものようにのんきな口ぶりだった。カードを裏表ひっくりかえしている。

「この印刷凝ってるよな。百枚いくらくらいでできるんだろう」さすが経理。

 乃木が今度はサンライズを呼んだ。

「一体どうなってるんだ、説明してくれ」

 どうしてオレには詰問口調なんだよ、とむっとしながらも、かいつまんで住之江ビルまで行ったことを話す。

 

 屋上は、ほとんど人の出入りがなく、彼らを狙える屋上の位置には、足跡と服がこすれたような跡があったこと。非常階段の五階と六階の間がこじ開けられていたこと。管理に聞いたら、清掃業者は必ず午前中にやってきて、しかも女性のみだということ。彼はあわてて裏口に戻ったが、すでに不審な男の姿はなかった。


「なら、人相書きがつくれるな」

 乃木は後ろにいた二人の男に合図した。サンライズ、彼らに両脇から挟まれ、ずるずると引きずられていく。

「な、何なんだよ」

「モンタージュ作成に、ご協力ください」

 オレは犯人じゃないぞ。引っ張られていく彼を、春日が申し訳なさそうに見送った。

「頼んだよ、サンちゃん」

「目がふたつ、鼻は一つでした」サンライズは少しだけ抵抗してみた。


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