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 01

 エリーは翌朝、わざわざ新横浜駅近くの交番に出頭した。


 彼の供述と物的な証拠などから、殺人を依頼した団体が特定され、数名が逮捕された。


 彼らの中華街での追いかけっこは、実は数名のベテラン組織員に常に監視されていた。

 とある組織のナンバー2である老婆は、ずいぶん後になってからだが親類の集まりの時に、親戚の陳にこう語っていた。自分の妹の孫にあたる陳は、MIROC東日本支部という訳の分からない防犯機関で働いており、彼女の最もお気に入りの小僧だった。

阿文アーウェン、もっと肉を食べないと太らないよ」

 そう、皺だらけの手で自分の膝もとに招きながら、遠慮しがちな彼の手を小柄な割に強い力でぐいと引き寄せ、耳うちのように小声で話してくれる。

「アタシが助けに行った時には、乾物屋の頼んだ殺し屋は帰っていったよ。オマエの会社の子だったっけ、鼻血が出た子は。あの子は運が良かった」

 陳は控えめに目を伏せ、「ホントですね」とだけ応えた。




 エリーが逮捕されてから数ヶ月後。

 知らない女性から、サンライズの元に手紙が届いた。

 春日が、

「カズコちゃんて人から、オ、テ、ガ、ミっ」

 とやや大きいピンクの封筒をデスクまで持ってきた。

 中には、写真と手紙が入っていた。以前エリーの所で会ったヘルパーの女性だった。


―― 恵莉ちゃんのお父様のことはとても信じられず、残念です。恵莉ちゃんをすごくかわいがっていらっしゃいましたし、私たちにはとても親切で、良い方でした。

 罪をつぐなうことを、生きていられる限りこれからずっと考えていきたいと仰ったとのこと。その言葉を信じたいです。

 恵莉ちゃんには以前から、私の知合いがやっている施設をお勧めしていたのですが、こういう形で入所されるとは思いませんでした。それでも、彼女はここを気に入ってくれたようで安心しております。

 富士山と海と段々になったみかん畑が見えて、恵莉ちゃんは窓辺で景色を眺めるのがすごく好きなのだとか。

 

 写真には、恵莉と施設のスタッフが写っていた。明るくて、素敵な所のようだった。

 施設の担当者からの手紙もあった。


―― 恵莉ちゃんの笑顔には、いつもスタッフ一同いやされています。いっしょうけんめい毎日がんばろうというエネルギーで、逆にみんなを励ましてくれるんですよ。

 リハビリも少しずつ、進んでいます。

 字も、少しですが書けるようになりました。おじさんにお手紙だそうです。

「たんじょひに うさき くたさいね」

(約束したんですか?いつくれるのか、怒ってましたよ!(笑))



 女子からのおねだりには弱い。サンライズはまた通りかかった春日に聞いてみた。

「ねえハルさん、ウサギを経費で買ってくんない?」

「経費からウサギを出せ、ってか?」春日は、ははっと笑った。

「オレら、一体何なんだよ、マジシャンか?」

「ある意味ね」そう言って、サンライズは大きくのびをした。








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