03
「あれハルさん遅かったねえ」
「木曜は班会議があっていつもとっちめられるんだよ。サンちゃんこそ、ランチいくの? 珍しいじゃん」
「解析に一晩かかって作戦課で徹夜。シヴァがいてくれてたらオレがこんなことせずに済んだのにさ」
「あの小僧はいつこっちに戻ってくるんだ」
「知らねえ。向うでまた学校通うらしいしな」とにかくコンビニ飯に飽きたんだよ、とサンライズ。
「一緒に行ってやろうか、メシ」春日はなれ慣れしく彼の肩を抱いてから急に
「おい、気をつけろ」とこちらに引っぱり、車道に向かいきつい目を投げる。
サンライズすれすれの歩道に乗り上げるようにして、タクシーが去っていった。
「何だか、混んでるなあ」他人事のように言うサンライズに、春日が言った。
「知らなかった? 駅前ですげえ事故があってさ、トラック同士の衝突」
「へえ? さすが総務だね、詳しいじゃん」
「おかげで抜け道もすごいことになってる。郵便はとりあえず来たけど、荷物とかメール便はまだ来てないし」
「ふうん、ま、いいや。何食べたい?」
春日が腹を上から押さえて
「もたれっぽい……和食がいいなあ。ホテルの上はどう?」
と言うので、金のないサンライズはあわてて(近頃電話なしで残業遅帰りが続いた罰として、小遣いを減らされた)こう提案した。
「ミナミビルの五階の、鴨志田に行こうよ。ランチ始めたけどまだ知られてなくて、客も少ないって。安くて早くていいってさ。よっちゃんの受け売りだけど」
「えええ、5階。階段きっついし」
「ホテルだって11階じゃんかよ、それにエレベータあるよ」
「オレが閉所恐怖症なのを知ってて、言うか。ミナミビルのエレベータ殺人機械並みだぜ」
「だいじょうぶ、オレが守って、あ、げ、る」
ばーか、と笑いながら春日はサンライズと並んで歩いていった。
その様子を、エリーは屋上からじっと見つめていた。
今日は一人ではないのか。今まで見たことのない連れだった。
しかしもう日は決まっている。
彼は銃を取り上げた。
場合によっては二人とも撃たねばならないだろう。しかし、彼にためらいはなかった。
都合のよいことに、彼らはここのビルの前は行き過ぎたものの、次の角を左に曲がった。大通りを渡らなければ、次に、あの小路の隙間を通りかかるだろう。
構えて待つ。彼らが見えた。
カスガが少し前になった。しかもこちら側にいる、ますます都合がいい。一人だけ殺れる。
エリー、そっと引き金をしぼる。
春日がふり返って
「でもさ、乃木さんみたいな上司だとさ」
サンライズ、はっと立ち止まった。