05
「今度はどこ、どこ入ったの」
モニターの光点を長い指先で追いつつ、マヤラはぶつぶつと一人、つぶやいている。
「おいおいおい、バカぁ、行き止まりよそっちは」
陳がたまりかねてモニターに叫ぶ。
「誰だよ。中華街がいいなんて言ったのは」後ろで誰かが言った。
見守る外野が騒ぎ出す。
「サンちゃん、自分でいいって言ってたんじゃねえの」
「ちがうよ、ハルさんだって」
「何で俺なんだよ、って、おい、今ぁそんなコト言ってるヒマねえよ」
「サンちゃんどこ行った」
「徳記の裏入っちゃった」
「お兄さんは」
「動いてる。食器屋の向こう」
「まだ連絡とれないのかよ。サンちゃんは」
「さっき大阪弁が聴こえてから、急に切れたよ」
マヤラは懸命にグリーンの光点をおいかけている。一つは迷走し、もう一つは、徐々に、間の距離をつめていた。
路地を走りぬけ、つき当たりを左に折れ、次のつき当たりを右に曲がったそのせつな、
目の前に彼が立っていた。音もなく。
息をはずませたまま、サンライズ、じっと彼をみつめた。
「ったく。」春日、両手で顔をおおっている。
やっぱり中華街って言ったのはオレだったのだろうか? どちらにせよ、そんなことは今どうでもいい。とにかく、サンライズが無事、逃げ切ってくれれば。
マヤラが悲痛な声をあげた。
「だめ、ヤバイ、ヤッバイよ、追いつかれた」