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 04

 珈琲に口をつけた時、エリーは突然感じた。


 アイツだ。


 全身の血が急に沸き立った。

「来い」いくつかのイメージが飛び込んでくる。

 脳裏によぎったのは上に円筒形の建物がついた、ホテルらしい白いビル。国旗がいくつか掲げられている。見覚えがあった。次に、赤い四角い柱の門、上の装飾が極彩色に輝いている。店の看板も、飾られている街灯も赤が基調になっている。中華街大通りだ。

 ヤツが呼んでいる。仕事のことは一瞬頭から完全に飛んでしまった。

 バッグを取り上げ、コートをつかんで表に飛び出す。

 駅近くでタクシーを止めた。「中華街、ローズホテルへ」

 タクシーは走り出した。


 車中でも、エリーはずっと彼を捜し続けた。

 いったんつかめば、多分見失うことがないくらい特徴のある思念パターン、しかし今は、それをしっかりと自分の中に閉じ込めて鍵をかけているらしい。

 JR関内駅に寄ってもらい、借りていたコインロッカーを開けた。

 カバンを投げ込み、少し考えてから、奥に突っ込んであった野球帽を取り出して、かぶる。あと持っているのは、身につけた武器のみ。


 久々に、手応えのある相手に対峙し、エリーの血は騒いでいた。しかも十中八九、彼は超能力の使い手だ。相手についてじっくり調べたい気はもちろんあったが、捕まえてどこかにとどめておくには危険が伴う。始末するしかない。それからゆっくり、カスガの料理だ。

 急にまた、声がした。「中華街で待つ」

 なぜヤツはそこを選んだのか、高揚する頭の中で考えてみた。

 依頼主が予告状を出したというが、そちらから足がついたのだろうか? 

 クライアントはもしかしたら中国人かもしれない、とは思ったことがあった。しかしいつもならばいちいち詮索はしない。中華街は仕事で何度か使ったことがあったので、路地裏までなじみがある。スカウトされたのも、そんな働きがいつの間にか彼らの目にとまったのだろう。

 もしも今回、彼が仕事とは直接関係のない男を追っているのが依頼主にバレたらどうなるのだろうか。

 瞬間、新横浜に戻ったほうがいいのでは? と頭をよぎった。

 先に請負い仕事を確実に片付けたほうがいいのではないか? 


 しかし今、エリーにはどうしても、誘惑を断ち切ることができない。

 もしかしたら、何かが変わるかも知れない。自分のあり方に大きく関係すること、そして……


 エリーはぶるっと頭をふった。今は、ヤツを追う、それだけに集中しよう。


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