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第七十一話 ラーム登場

 パキーン! 鋭い音を立ててリルの水晶球が粉々に砕け散る。

「あぁ……水晶球が……」

 この前ラームが現れた時も水晶球は砕けた。粉々になった破片を苦労して元通りにしたばかりだが、今はそんなことは言ってられない。リルが砕けた水晶を見つめているうちに、光の中からラームが姿を現した。

「ラ、ラーム様! よくいらっしゃいました」

 リルは慌ててラームの足元に跪く。

「随分遅かったじゃないか。もう、来ないかと思っていた」

 アビーは、ラームの神々しい姿に目を奪われながらも、平静を装って言った。

「弟子達のところをまわるのに、少しばかり時間がかかりました。しかし、私は一度約束したことはちゃんと守ります」

「さすがラーム様です。ご到着を心よりお待ちしておりました」

 リルはラームを見上げ、目を細めて微笑んだ。

「本来ならば、リル一人で始末しなければならないことですよ」

 ラームはリルに鋭い視線を投げる。

「は、はい……」

 リルは微笑みながらも、タラリと額から冷や汗を垂らす。

「まぁ、出来の悪い弟子の後始末をするのも師匠の勤めです。では、さっそく王子の元に行きましょう。私はまた直ぐに戻らなければなりません。手早く済ませてしまいましょう」

 ラームは冷静な口調で言うと静かに笑った。

「どうやって行くんだ? 城は警備されているから簡単には中に入れないぞ」

「入れないのは人間だけでしょう。さあ、あなた方は私のマントの中に入りなさい。エルフなら、簡単な呪文を唱えるだけで直ぐにエレック王子の元にたどり着けます」

 ラームはそう言って両手を大きく広げた。ラームの長いマントはアビーとリルの体をすっぽりと包み込む。

「さあ、行きましょう」

 ラームは静かに呪文を唱え始めた。




 ジェナとチェスは、使用人の家に『黄金の果実』を取りに行こうと、足早に城の庭を歩いていた。使用人の家に保管してあるという古い『黄金の果実』を一刻も早く手に入れたい。

 三人が城の馬小屋を通りかかった時、バタバタという羽音が馬小屋の中から聞こえてきた。小屋の中には城の馬達の他に、ジェナ達を運んできてくれた三頭のペガサスも入っている。そのペガサス達の羽音が響いてくる。

「ペガサス達が暴れてる。どうしたんだろう?」

 気になったチェスは馬小屋の方へ駆けていった。ジェナと使用人も後に続く。

 チェスが馬小屋の中に入ると、暴れているペガサス達を抑えようとしているハンクがいた。

「ハンク、どうしたの?」

「俺にも分からないんだ。今朝起きてペガサス達の様子を見に来たら、三頭とも羽をバタバタさせてさ」

 ペガサス達は何かに怯え、苦しそうに羽をばたつかせている。

「今までずっとおとなしくしていたのに、どうしたのかしら?」

 ジェナも心配そうにペガサスを見つめた。

「これは……ペガサスは幸せの象徴。邪悪な物の気配には敏感です」

 使用人は、落ち着きのないペガサスの様子を見て顔を曇らせる。

「そう。ネイルさんも言っていたわ。ペガサスは平和な場所にしか現れないって」

「じゃあ、ここに危険が迫っているってことか?」

 ハンクは暴れるペガサスの手綱をどうにか抑える。

「とても怖がってるよ」

 チェスは一頭のペガサスに近づき、そっと体に触れた。

「……何か悪い物が近づいて来るって言ってる……王子様が危ない! 早く王子様の所に行かなきゃ!」

 チェスはそう叫ぶと、急いで小屋を出ていく。

「チェス!」

 暴れるペガサス達を残し、皆は城へと向かった。 






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