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プロローグ

 遠い昔のある国の物語。

 夜明け前の薄暗い港。人気のない静かな港には、大小様々な舟がロープにつながれてとまっていた。舟はゆるい波に揺れながら、ギィギィと小さな音を立てている。

 そこへ、小柄な少年が足音を忍ばせて歩いてきた。肩に釣り竿をかけ、片手に釣り籠を持っている。寝癖のついた不揃いの茶色い髪。小さすぎる服とズボンは薄汚れ、シャツはだらしなくズボンからはみ出している。

 少年は眠そうに大きく欠伸をすると、キョロキョロと港を見渡した。そして、一艘の小さな舟の元まで小走りで駆け、ピョンと舟に飛び乗った。素早く舟のロープを外し、オールで漕ぎ出す。月明かりが反射する静かな海を、舟はゆっくりと沖へ進んでいった。

 少年の名前はハンク。生まれた時から孤児院暮らしで、親の顔さえ知らない。今夜も孤児院を抜け出し、一人で釣りに出かけたのだった。もちろん、自分の舟など持ってはない。港の舟を適当に選び、いつものように拝借する。


 その日、なかなか魚は釣れなかった。太陽が水平線に顔を出しても、ハンクは魚一匹釣ることが出来なかった。

「今日はダメだー!」

 ハンクはついに諦め、釣り糸をたらしたまま、ドサッと仰向けに寝ころんだ。そのまま目を瞑り、波に揺られながらウトウトとする。雄大な海に一人で浮かぶ、一番自由で心地良い時間だった。

 しばらくして、頭上で鷲のような鳴き声が聞こえた。バタバタという羽音。鳥の声。その音もやがて静かになった頃、ハンクは目をこすりながら起きあがった。

 太陽は大分昇り、朝の光を放ち海面を照らしている。

「ん? ありゃ、何だ?」

 何か白い小さな物が波間を漂い、ちょうどハンクの舟の方へ向かって来る。そして、釣り糸をたらした辺りで舟にぶつかり止まった。

「……?」

 ハンクは舟から身を乗り出し、白い物を抱き上げた。柔らかく温かい感触。そして、キャッキャッという小さな笑い声。……笑い声? ハンクは白い物を見つめて固まる。

「赤ん坊!?」

 生まれて間もない赤ん坊が、ハンクの手の中で両手足をばたつかせ笑っている。と、その白い布で覆われた赤ん坊の首元がキラリと光る。まだ大きすぎる首飾りが、赤ん坊の首にかけられていた。

「バラ模様の十字架だ」

 金色の鎖の先には、バラの模様が彫られた十字架がついていた。赤ん坊はハンクの腕の中で嬉しそうに笑っている。

「魚の代わりに赤ちゃんが釣れちゃったよ……」

 ハンクは赤ん坊の円らな緑色の瞳を見つめる。自分に向けられた無邪気な笑顔。家族というものを知らないハンクだが、その笑顔を見ていると愛しい気持ちがこみ上げてくる。

「よし! 俺、お前のパパになってやるな」

 ハンク、八歳にして赤ん坊の父親になる決意をした。



だいぶ前になりますが、ファンタジーのキャラ募集をしてました。考えてくださった皆さんのキャラも旅の途中で登場させていただきますね。

どんな旅になるか、まだ検討もつきませんが、最後まで読んで下さると嬉しいです。よろしくお願いします。(^^)

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