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12話 刻印

 家に戻るとアリーアはそっと彼を抱きしめて落ち着かせた。温かいココアを彼に渡すと彼の表情には儚さよりも悲しみが滲んでいた。そして熱いお風呂に入るよう促した。お風呂から出てきた彼は今日は体をきちんと拭いて服も着ていた。アリーアはおどけたように「よくできました。」とルークの頭をなでた。まだ濡れた髪から水滴が落ちた。アリーアはできるだけ明るく笑いかけ、タオルを手に取って彼の髪を拭こうとした。その手をルークは遮り「ありがとう、自分でするよ。」と静かに言った。とても綺麗な優しい声だった。彼は彼女からタオルを取り自分で髪を拭き始めた。


 アリーアの表情から血の気が失せた。初めて聞いた彼の声、言葉。本来なら嬉しいはずなのに…。彼の後ろ首筋から背中にかけての「刻印」が服からのぞいている。昨日まではなかったはずなのに…。学院長が言っていた通り、私が預言の導く者。そして、災いを鎮めるために生贄のように災いに向かっていく青年が彼、ルークなのだ。ずっと忘れていた預言。忘れたかった預言が今、目の前に具現化していっている。


 二人の間に沈黙が流れる。彼はタオルを置いて立ち上がると「おやすみ」と言って部屋を出ていった。


 アリーアは一人で部屋に残った。彼の部屋は静かだった。彼は眠ったのだろうか。鍵のかかった戸棚から預言書を出し、預言のページを開いてみた。すると確かに預言の一部が書き変わっていた。



 一人の精霊が この預言を導く

 精霊は探す 一人の青年を 

 安寧は終わりを告げる

 背の「刻印」が証

 それは人心を惑わす地の神にもたらされる災い

 固く扉を閉じ 災いが過ぎ去るのを待て

 一人の青年は 命と光をもって 事を成し遂げる



 アリーアは「人心を惑わす地の神」とは神殿の事かもしれないと、今気づいた。


 私が預言を忘れ、神殿に近づいたから、彼の背に「刻印」が浮かび上がったのだ。やっぱり私が彼を過酷な運命に導く者なのだ。ルークは自分の運命を知っていたのかもしれない。「刻印」が現れ、彼自身に自分の役割の時がきた事がわかったのだろう。私はなんて愚かなことをしてしまったのだろう。昨日に時間を戻したい。そう願っても彼女の頭の中で「必ず実行される」という学院長の言葉が何度も繰り返された。


 静かに流れる涙は嗚咽に変わり、顔を布団に押し当てた。ルークは隣の部屋から漏れ来るアリーアの嗚咽を聞いていた。

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