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10話 日常

 二人の優しい共同生活が始まった。まずは何よりも服を用意しなければならない。彼女が一人、街で彼の服を購入するために出かけた。その間に彼はどこかに行ってしまうのではないかと不安になったが、その不安を押し殺して、服だけは用意しなければという使命感に燃えて出かけた。 男性物を購入した事がないアリーアは、服屋の店主たちに弟へのプレゼントと言い訳をしながら、身振り手振りで彼の身長、体型を説明しながらなんとか彼のものを揃え終えた。服屋の店主たちは彼女が帰ると「弟ね〜〜。」と言いながら笑っていた。


 彼は相変わらずお風呂から上がると腰にタオルを巻いただけ、濡れた体のまま出てきて床はビショビショ。困った顔になる彼女を見て、彼も少し困った顔をするが、それもまたかわいい。つい笑ってしまう。用意した新しい服。どれもサイズがピッタリだった。店主が彼女の拙い説明から、さすがプロ、ピッタリの物を選んでくれた。そして、本当にどの服もよく似合った。なんの変哲もない既製の服がまるでオーダーメイドで設た高級品のようにさえ感じるくらいに。


 そして、晴れた日はいつも二人で湖にやってきた。彼は相変わらず何も話さないが、それでも繋いだ手からは彼の温もりが伝わってくるだけで幸せだった。そんなある日、葉に露が光る小さな可憐な白い花を見つけた。彼はその花を覗き込んで葉を突つくと、葉から飛び散った露がアリーアの顔にかかり小さな声をあげた。彼は楽しそうに笑っていた。アリーアは嬉しかった。彼のこんなに楽しそうな表情を見るのは初めてだったから。そんな他愛もない日常がアリーアの宝物だった。


 掃除、洗濯、食事の支度なども手伝ってもらうことにした。彼はそっと手から光を放ち、あっという間に掃除、洗濯を片付けてしまう。確かに魔法を使っても良いのだが、その一つ一つの過程を楽しんで覚えていって欲しいという彼女の思いは彼には全く届かなかった。仕方がない。そう、片付けばいいのさ、綺麗に洗濯できていればいいのさ。


 ただ食事の支度は、食材を切り、鍋に入れ、火を通し、味付けする過程は面白いようだった。二人でいる時間は楽しすぎた。こんな些細な日常の中で彼の儚げな表情が消えることを願い、この時間が一生続きますうようにと彼女は思った。

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