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ベランダの星空

掲載日:2025/09/21

 残暑がまだまだキツい九月。春夏秋冬では秋のはずなのに、夏の背中は過ぎ去らない。エアコンが壊れて、僕と君はベランダに出て夜風に当たりながら、星空を見上げていた。


 「ねえ、世界を信じる?」


 突然、君が顔を横に向けて突飛なことを言い出す。真っ直ぐに伸びた凛々しい睫毛が夜風に揺られて、煌めく。


 「藪から棒に何を」

 「いやね、この星空をバーッと眺めてたらさ、私たちの存在がとても小さく思えて。本当に今いるこの世界は、世界なのかなって」


 この世界が世界なのか。世間一般的に見れば、世界は地球でこの世界は世界であると言える。でも、きっと君はそういう意味では言っていない。

 僕は星空を見上げて、ひと呼吸おく。そして、言葉を息を吸うように吐き出す。


 「哲学めいたことを言うんだね。……ん〜そうだな、この世界は世界だと思うよ。でも、それは君の中では世界じゃないのかもしれない」

 「というと?」

 「例えばだよ、君の中に確固たる信念があって、それに従って生きてます。でも、それを曲げたらある意味世界が壊れるでしょ?そうしたら、今いるこの世界は信じるに値しないんじゃないかな」


 世界は自分の中の価値観で形作られ、そしてそれを世界として生きている人たちも、この世界には必ず存在している。その人たちにとっては、価値観が壊れることが、きっと世界の破滅の意味を持つ。

 僕だって、そうだ。僕は君が世界で、もし君がこうして横に居てくれなくなったら僕の世界は破滅を迎える。

 エアコンが壊れても文句を言わないで、ベランダで涼むことを提案してくれて。スイカ割りがしたいと突然思い立って、海へその日のうちに行くところとか。無邪気な世界は無気力な僕にとって眩いほどの活気で、生きる意味になっている。

 だから、僕がそうであるように世界は人の数だけある。街ゆく人も心の中に信念や、誰かがいる。それが世界で全てで、生きる意味や活力になっている。世界に正解は無い。


 「君は頭がいいね」

 「こんなことしか考えれない人間だからね」

 「こんなことも考えれない私を馬鹿にした?」

 「なんていう妄想を。してないよ、君は君のままでいいのだから」

 「えー、なに告白?」

 「君は告白を信じる?」

 「哲学めいてるね」

 「真似してバカにしてる?」

 「なんていう妄想を。してないよ」

 「世間一般的にはそれをしてると言うんだよ」

 「変なの、やっぱり君といるのは楽しい」

 「奇遇だね、僕もだよ」

 「世界なんてどうでもいいかも」

 「質問の意味を無くさないでくれ」


 夜空に煌めく僕の世界は笑い声を響かせて、優しい排気ガス混じりの風は火照った僕らを冷ましていった。

ではまた。

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