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2 年貢6割が今年は9割、文句を言うのも当然である

 事の起こりは、神官による招集。

 話があるから集まれという呼びかけ。

 実質的な命令である。

 なお、逆らえば有形無形の虐待が待っている。

 逆らう事は出来なかった。

 そこで出てきた話に、コウサクははっきりと言い返したのが始まりだ。



「無理だ」

 はっきりとコウサクは言い返した。

「そんな事したら、俺たちの分がなくなる。

 来年の種籾もなくなる」

 事実である。

 要求はそれほど酷いものだった。



 だが、それを言ってるのが代官であり。

 教会の神官であるから誰も何も言わなかった。

 言えなかったというべきだろう。

 逆らえば神への反逆として裁かれるのだから。

 だから言いたいことを押し殺して誰もが黙っていた。



 それを、コウサクが覆した。

 無理だと。



 それはそうだ。

 もともと年貢は6割。

 食い扶持と来年の種籾と、わずかばかりの利益しか残らない程だったのだ。

 作物を売ったわずかな利益も、日々の生活用品を手に入れる為に用いられる。

 贅沢など出来るわけもない。

 生きていくのでやっとだ。



 それが今年は9割だという。

 なんでも祝祭が行われるから必要なのだとか。

 ふざけた話である。

 しかもだ。

「これも神の思し召し。

 あなたがたにも幸がもたらされる」

 神官である代官はこんな戯言をほざいた。



「いつ、そんな幸をもってきた?」

 コウサクが激怒したのも無理はない。

 そして「そんなの払えるか」という言葉に続く。

「むしろ、今まで奪っていった分を返せ」

 こうも続けた。



 さすがに神官もこれには驚いたようだ。

 表情は変えないが、一瞬黙り込んでしまった。

 反発されるとは思ってなかったのだろう。



 だが、コウサクの言ってることは誰もが思っていた事だ。

 神の思し召し、幸を恵んでくれるとは言うが。

 毎年6割も年貢をとられて、得られた何かがあったのか?

 全くないというのが答えである。



 生活は厳しく、楽になった事はない。

 神の思し召しというなら、毎年豊作にしてもらいたいものだが。

 そんな事も全くない。

 むしろ、ここ10年の間に日照りや洪水、冷夏などにより収穫は安定しない。

 そんな時に神官は言うのだ。

「神の与えた試練だ。

 これを乗り越えれば大きな恵みがもたらされる」

 なお、乗り越えても何も得られないのは言うまでもない。



「それが今年は9割?

 ふざけんな。

 まずは神の恵みをもってこい」

「無礼な!」

 すかさず神官が怒声を放った。

「この罰当たりが!

 神に要求をするとは何事か!」

「その神が何ももってこないから文句いってんだよ、この馬鹿が。

 こんな事も分からないくらい馬鹿なのか?」

 憤りがたまってたコウサクも言い返す。



「ああ、馬鹿なんだな。

 神なんぞを信じるくらいだからな」

「貴様…………背教者と認定するぞ」

「だからなんだ」

 ひるむ事無くコウサクは言い返した。



 背教者。

 それは教会が支配するこの世界における悪党の烙印である。

 認定されれば、人間としてのあらゆる権利が認められない。

 殺されようと全くおとがめなし、むしろ、侵害虐待をするのが推奨される。

 これを認定する権利を教会は握っている。



「すげえな、人を救う神様が人間をいたぶるのか」

 呆れた口調でコウサクは馬鹿にした。

「そんな悪魔なんかを信じてたまるかよ」

「そうか、ならば────」

 おまえを背教者に認定する、そう神官は言おうとした。

 しかしその前に、

「あ、そう」

 コウサクの方が先に鍬を振り上げた。



 そして、神官と聖職者と教会は土の中に飲み込まれていった。

 それを見て、しばらくコウサクは様子をうかがった。

 自分の身に何かがおこるのかと。

 しかし、1分2分と待っても特に何かが起こる事はない。



「なんだ」

 拍子抜けした声を漏らす。

「天罰も神罰もないじゃん」

 本当に神がいるなら、何かするだろう。

 神を騙る悪魔であっても。

 超常的な力が存在する世界だ。

 こういった事が起こってもおかしくはない。



 しかし、それらしき事は一切おこらない。

 高レベルになったコウサクなら、それらしき事があれば察知出来るのだが。

 こうなるとはっきり言える。

「神なんて嘘じゃん」

 教会がデタラメをほざいていたと。



 それどころか。

 教義と経典。

 これらを使い、教会は人々を支配していた。

 天罰や神罰を用いて。

 そうして手に入れた権威と権力を使って。

「独裁国家だな。

 宗教国家か?」

 前世のオタク知識から、そう呼ぶのがふさわしいと思った。



 そんなコウサクを周りの村の者達は恐怖と共に見ていく。

 それはそうだらう、ひれ伏していた存在を容赦なく殺したのだから。



 だが、気にする事なくコウサクは振り返る。

 怪訝な目で見られるのはいつもの事だ。

 今更どうでもよい。

 そもそも、コウサクは同じ村の者達をとっくに見限ってる。

 こいつらは使えないと。

 だからみんなに言ってやった。



「良かったな!」

 満面の笑みを作って。

 大声で語りかける。

「これでもう年貢を奪われなくていいぞ!」



 だが、誰もコウサクの声に返事をしなかった。

 誰もが教会を敵に回した恐怖を。

 そんな事をやらかしたコウサクへの怒りを浮かべている。



 そんな村人を、コウサクは心からさげすんだ目でみていった。

 虐げられても何もしない奴隷のような連中を。

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