10 質問:聖女は怪物を阻止していますか? 答え:全く出来ていません。
嘘と言えば、もう一つある。
怪物を阻止する聖女の力だ。
この世界には怪物が存在してる。
地球の創作でよく出て来るゴブリンや鬼。
異形となった獣や草木に花。
こういった存在がはびこっている。
これらは前世でいう害獣に似た扱いだ。
町中に出て来る熊といえば良いだろうか。
熊よりも凶暴で凶悪、力も強いものが怪物になる。
また、人間には劣るが、知恵を持って行動するゴブリンのような人型怪物もいる。
こういった存在が人々に襲い掛かってくる。
聖女はこれらを阻止するという。
神の奇跡を用いて、結界を作り、怪物が侵入できないようにする。
人々はこの力でようやく安全な場所を手に入れ、安心して過ごせるようになったと。
教会の教える歴史ではこうなっている。
「嘘つくな」
実際にはそんな事はない。
人間の領域の外縁部では怪物の侵入が常におこるという。
その都度、教会の騎士団が怪物成敗にのりだすとか。
何のことはない。
実際に怪物を追い払ってるのは騎士団という戦闘力だ。
聖女の起こす奇跡ではない。
教会側のいいわけはこうだ。
聖女の奇跡でもほころびは出てしまう。
力の及ばない遠くまで来ると、怪物も侵入しやすくなる。
だから教会の騎士団が補うのだと。
「よくもまあ、色々考えるもんだ」
並ぶ言い訳に呆れるしかない。
実際には怪物が侵入するのは結界のほころびがあるからではない。
怪物の思いや習性にのっとって襲ってくるだけだ。
さほど頻繁ではないのは、怪物の数そのものがそう多くはないから。
これが繁殖して数が多くなると、餌を求めて人里へとやってくる。
ただこれだけだ。
とはいえ、怪物は天然自然に発生した生物というわけではない。
異常なる力で強化・凶暴になってるのは確かだ。
一般的な動植物とは異なる。
人間の脅威である事だけは変わらない。
だとしても、これらを遮る力を聖女が持ってるわけではない。
教会が持ってるわけでもない。
神がいるかどうかは分からないが、いたとしても怪物を防ぐ奇跡をもたらしてるかどうか。
もし、こういった力があるなら、怪物をしっかりと遮るだろう。
人間の領域ももっと拡大していたはずだ。
女神が聖女に奇跡の力を渡してるのならばだ。
力を授かった聖女を量産できるはず。
なのに女神はやらない。
教会に数多くの聖女や聖職者がいるのにだ。
その中の一部しか奇跡を使えない。
女神に認められる者はそれだけ少ないと教会はいっている。
では、数多くの聖職者は必要ないだろう。
力をもたらされる者がそれほど多くないなら、大量の聖職者は不要だ。
聖女の候補として集められる女だって、大量にいる必要は無い。
見込みのある者を集めていけばよい。
なのに、聖女候補は常に集められている。
それが見目の良い女ばかりとなれば、理由も簡単に察する事が出来る。
有力者が楽しむ為だろうと。
もちろん、色事そのもので。
「金も女もよりどりみどりか?」
税として金や収穫を強奪し。
女という欲をむさぼる。
さすが強欲によって成り立つ宗教。
清廉潔白とは真逆な事しかやらない。
これらはコウサクの想像でしかない。
だが、かなり正解をとらえてると考えていた。
「欲にまみれたやつが権力握ればそうなるからなあ」
注意するべきは、権力者や有力者が非道を働くという事ではない。
非道を行う輩が権力を持つ有力者になったら悲惨な事になると言っている。
問題を起こすのは人間だ。
それも悪さをする人間だ。
まともな人間は悪さなどしない。
悪さを思いつく事もない。
悪さは悪さをする人間が行う。
これが前世で得たコウサクの実感だ。
そんな連中が教会を作って悪さをしている。
金も女も人も集めて。
必要もないほど大勢集めてるのは女に限らない。
信者という形でも様々な人間を集めてる。
数は力になるからだ。
大勢で圧倒するのは、悪人悪党の常套手段だ。
教会を作ってる連中も例外ではないだけだ。
そして、強制された寄付という脅迫と強盗で財をなして。
これらを大量に中抜きしてから人々にほんのわずかな見返りをよこす。
慈善団体の収奪方法は異世界でも変わらない。
こんな極悪非道な存在がこの世界にはいる。
怪物どころではない。
人間社会そのものに巣くってるのだ。
「どうにかしないと」
だが、どうやって?
方法は分からない。
だが、力はあった方がよい。
その為にひたすら経験値を積み重ねていく。
レベルをあげて強くなるために。
強くなれば、たいていの事には対抗出来るのだから。