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すずちゃんは可愛い女の子

 ひかるさんの実家にお世話になるようになってから数日が経った。

 このところは作業にも慣れてきて身体も大分だいぶらくになった。


 琴子も同じようでさっさと作業を終わらせては裏庭でサボっているのをよく見かける。


 あれから琴子は大人しく働いている。たまにお腹が減ったと死にそうな顔をしているが、それ以外はおおむね元気に過ごしていた。


 琴子はたまに俺の顔をじっと見てくる。「何か付いてるか?」と聞くと不機嫌そうに顔をしかめてどこかに行ってしまう。気儘きままに生きていて猫のような娘だ。


 昼間よく働いて夜は泥のように眠る。夜になると不安な気持ちになりやすいので眠れるのはありがたいことだ。


 空いた時間にはちょくちょくトンネルがあった場所に行く。もしかしたら…と一縷の望みを持って見に行くのだが、何度見てもそこにトンネルはなかった。


…この先どうなるんだろうか。このままこの世界で暮らすのだろうか…だとしたら…決断しないとならない。近々ひかるさんと琴子と話合う必要がある。



 ある日ひかるさんのお供で市に出かけることになった。ひかるさんは綺麗な着物を着て、俺は相変わらず喜作爺さんのお下がりの作務衣だ。

…一応婚約者なんだけどな。


 ひかるさんが購入した物を俺が抱えていく。結構な量だ。


「あっ!先日の!」


 正面から歩いてきた女の子に声をかけられる。女の子は俺達の前で立ち止まるとペコリとお辞儀をする。


「あら…こんにちは。あれからお父様はお元気?」


 ひかるさんは優しく話しかける。


…あぁ。熊男が守ってあげた村人の娘さんか。


 女の子はひかるさんを見上げて嬉しそうに笑うと2人は楽しそうに立ち話を始める。


…いつの時代も女の子はお話好きだねぇ


 俺は聞くとも無しに会話を聞く。


「今日はお出かけ?」


「はい!市でお仕事を探そうと…」


「あら、偉いわね。見つかったの?」


「それが…私みたいな年頃の娘では役に立たないと…」


「そうなの…ならとりあえず焦らずにお家のお手伝いをしては?」


「それが…」


「どうしたの?」


「いえ…いいんです…」


「いいから!お姉さんに教えて?お願い」


「えっと。家には弟が5人いて…でもお母さん死んじゃったからお父さん1人で田んぼやってるんですけど、とても全員分のご飯は作れなくて…このままだと弟を口減くちべらししないとって…」


「まぁ…!そんな…」


…ひかるさんが絶句ぜっくするのもわかる。簡単に言っているが農家の口減らしって、売り飛ばされたり、下手したら殺されたりするやつだろ?


「だから私が働いてみんなの食べる分持って帰らないとなんです!」


「お姉さんはひかるといいます。あなた…お名前は?」


「え?すずって言います」


「すずさん…あなた家で働きなさい。いつから来られる?」


「え!?あの立派な御屋敷おやしきで!?働かせてくれるんですか!?」


「ええ!働きものは大歓迎だわ」


「あ…ありがとうございます!私はいつからでも!今日からでも!」


「そう、じゃあこのまま付いて来なさい。太助様。すずさんに荷物を持たせて」


 ひかるさんに言われて俺は大量に抱えていたうちの軽い物をすずに手渡す。


「太助様。いけません。ちゃんと半分持たせてください!すずさんにお給金きゅうきんを払わなければならないのですから、ちゃんと働いて頂きます」


 ひかるさんにぴしゃりと言われて俺は慌てて荷物を半分すずに手渡した。


 すずは重い荷物を受け取ってもさほど苦にする様子もなく無事に屋敷まで運んだ。


「すずさん。母上から許しを頂きました。今日から正式にうちで雇います。母上にご挨拶しますから付いてきてください」


 屋敷に戻るとひかるさんは早速手配をしてすずは正式に島家に雇われることになった。


 ひかるさんを待っている間に話をしたらすずは12歳だと言っていた。

 弟のために頑張るんだと意気込んでいた。


 すずはおかっぱの髪を揺らしてひかるさんに付いて母屋へと入っていった。

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