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第1章 内田花乃の日常 04


「やっぱ、北海道はでっけーなー!」


松尾君の言葉に、みんなで大きく頷く。

少し大きな公園との前情報からのイメージよりも遥かに広大な広場で、私たちは駆け出した。


いや勿論、私なんて足も遅いし持久力も無いんで、早々に歩き始めましたけどね。

松尾君と一ノ瀬君は、何を張り合っているのかかなり遠くまで走っている。


「若い…」


思わず呟いた一言に、ヒナちゃんが若いというよりワンコでは、と答えたので笑いが止まらなくなった。


「ね、ね。

一ノ瀬君てさ、やっぱりかっこいいね。」


ヒナちゃんがこっそり喋る。

一ノ瀬君たち、あんな遠くにいるからこっちの声は聞こえないよ。


「あー、彼氏いなかったら、危なかったわぁ。」


「ん?」


「フリーだったら、好きになってた。」


「それの何が危ないの?」


「いや、沼でしょ!?

確率低いし、ライバル多いし、他に目を向けようと思っても、あんな顔も性格もいい男、他にいないし。好きになったら、もうずっとずぅーーーっと抜け出せなさそう。

怖っ!」


両肩を抱いて、ブルブルし出すヒナちゃんに、少しだけ視線を向ける。

それは、私の未来では…?

怖っ!


仲良く戻ってきた松尾君と一ノ瀬君はなぜかバドミントンを持っていた。

遊びに来ていた大学生から借りてきたらしい。


みんなで広がって打ち合ってると、上手い下手が分かってきた。

予想通り、ダントツ上手いのは一ノ瀬君で、次に松尾君、ヒナちゃん、一番へたっぴは私。

打とうと思いっきりラケットを振るっても、全然シャトルに当たらないか、ラケットの縁にあたって変なところに落ちちゃう。


「ごめ〜ん…」


ラリーが続かず半泣きになった私は、みんなの邪魔になるかもと思って離脱しようとした時、一ノ瀬君が言った。


「今からダブルスで競争な!

松尾と三宅さんがペアで、内田さんは俺と。

で、15点先に取った方が勝ち。」


負けたペアはソフトクリームをおごるという事で、早速試合が始まった。



***********



「ごめんね、足を引っ張っちゃって。」


一ノ瀬君の頑張り虚しく、案の定シャトルを取りこぼした私のせいで僅差で負けてしまった。

大学生にバドミントンを返すために歩きながら、一ノ瀬君に謝る。


「楽しかったから良いよ。」


まっすぐ前を見て歩く一ノ瀬君を見ながら、気になっていたことを聞いてみた。


「あの、ね。

もしかしてだけど、私が離脱しようとしてたの気付いてた?」


「んーー、まぁ。」


「そっかぁ。」


「うん。」


それきり少し会話が途切れてしまった。

だけど。


楽しくなかった?って、ボソッと聞かれて。


「ううん!

すっごく楽しかったよ!」


ありがとうねって伝えたら、一ノ瀬君と目が合った。

そして、だったら良かったってフワって笑われたから。


ヤバい。

顔。

赤くなっちゃう。


思わず顔を背けて、バドミントンを抱え込んだ。


「俺、嫌なんだよね。

仲間はずれとか、せっかくみんなといるのに仲良くできないとか。」


一ノ瀬君は、視線を前に戻してゆっくり話し始めた。


「人の悪意って苦手で。

人間関係って結構簡単な事で壊れたりするけど、誰かの一言や行動一つで改善することもあるなら、出来れば良くなるように、自分が動こうって思ってて。」


遠くを見つめながら語る一ノ瀬君は、少し寂しそうに見えた。

そんな彼の姿に、少し動揺した。


「一ノ瀬君て人の気持ちを察する能力、高いよね。

でも、人の気持ちを気にし過ぎちゃうと疲れない?」


「まあ、たまにはね。

けど、ギスギスしてるの見てるより、よっぽど良いよ。」


「私、2年3組のクラスがみんな仲良しなの、一ノ瀬君のおかげだって知ってるよ。」


思わず、心の中のお布施の話までぶっちゃけそうになったけど、その前に一ノ瀬君が立ち止まるから、私も止まって見上げる。


「いつも誰かに一言声かけてくれたり、庇ってくれたりしてるの、気付いてた。

これまで一ノ瀬君と話したことなかったから言えなかったけど、実は結構感謝してたんだ。

楽しいクラスにしてくれて、ありがとう。」


いつも思ってることをやっと言えたのが嬉しくて、お礼を伝えれた事が嬉しくて、顔がにやけちゃった。


そしたら一ノ瀬君が口元を手で覆って、俯いた。


え?

うそ、何?

もしかして、照れてる???

えーーーー、そんなのこっちまで照れるからやーーめーーてーー!!!


思わず二人して向かい合って俯いてしまった。



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