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第1章 内田花乃の日常 02


「内田さん、集合時間過ぎてる!」


お土産選びに夢中になってたら、少し後ろから私を呼ぶ声が聞こえた。

ヤバっ!って振り返って、声かけてくれた親切な人にお礼を言おうと思ったら、一ノ瀬君だった。


え?

私の顔と名前、一致してた!

じゃなくて。


「教えてくれてありがとう!」


慌てて戻ろうと、手に持ってたラベンダー入りの石鹸とラベンダーのサシェを棚に戻した。


「それ、買いたいやつじゃなかったの?」


一ノ瀬君がちょっとだけ近づいてきた。


「どっちにしようか迷ってたんだけど、でも時間ないなら諦める。」


一ノ瀬君はチラッとレジを見て


「今、レジ混んでないから、もし欲しいなら買っておいでよ。

俺、待ってるからさ。」


まって!?

神なの?

ホントに高2?

転生何回目なのかな???


違う、違う。


「あ、あのね。

おばあちゃんのお土産、この石鹸かサシェかで迷ってたんだけど、決めれなかったの。

…どっちが喜んでもらえるかなって。

けど」


バスの時間も気になってるし、一ノ瀬君を待たせるのも気になるしで、やっぱりお土産は別の日にって言おうと思ったら。


「俺だったらそっちの袋のにするかなぁ。

うちのばあちゃん家、ハンドソープあっても、石鹸置いてないし。」


「あ、なるほど。

ウチもだ。」


私はサシェを手に取って、小走りでレジに向かった。


包装してもらったサシェを鞄に詰めながら、一ノ瀬君の元までやっぱり小走りで戻って、お礼を言った。


「あの、ありがとう。

助かっちゃった!」


「うん。

じゃ、ダッシュで戻ろ。」


ダッシュ…

足の長さと、もともとのスペックが違うから、うさぎとカメになりそうだけど、がんばる!



先を行く一ノ瀬君は、時々こっちを振り返りつつ、バスに手を振った。


ドア付近で私が追いつくのを待っていてくれた一ノ瀬君とバスに乗り込むと、一ノ瀬君は大きな声で、遅れてごめんな〜って、内田さんに呼ばれるまで時間気が付かなかったわ〜って、まるで自分が遅刻したみたいに言った。


で、私に振り返って、教えてくれてありがとねって笑った。

本当は私が遅かったのに。


クラスメイトは、しっかりしろよ〜とか、一ノ瀬だからなぁとか、みんな笑顔で答えてて、一ノ瀬君もごめんごめんって笑って。


なんか。

その時。


撃たれたって思った。

しまったなぁって。


憧れて、拝んでるだけで、良かったのに。


恋に、落ちてしまった。



***********



「花乃ちゃん!

一ノ瀬君と一緒に帰ってきたね!」


ちょっと興奮した様子の杏ちゃんが隣の席から声をかけてきた。


すると前の座席のヒナちゃんと柚月ちゃんも、身を乗り出してきた。


「何?どういう事?

私たちを撒いて、一ノ瀬君と会ってたの?」


「まさか!

そんなわけないじゃん!

たまたま、偶然だし!」


「あーーー、そんな偶然、私も欲しかったぁ!!!」


ヒナちゃんが小声で嘆く。

杏ちゃんも柚月ちゃんも、うんうんって頷きあって、3人で話し始めた。


わかるよ。

わかるけど。 

憧れてるだけで良かったのに…。


「私は、欲しくなかったな。」


誰にも聞かれないくらい小さな声が、ぽつりと溢れた。



バスが動き出すと、ガイドさんがクイズを出してくれたり、名所の説明をしてくれる。

ぼうっとしながら聞いてたら、杏ちゃんがそっと話しかけてきた。


「明日の自由行動、ちょっと行き先変えない?

ヒナとユズには、もう話したんだけど。」


「みんなが良いなら、私も良いよ。

でもなんで急に?」


私の質問に、杏ちゃんはムフフと笑った。


「さっきバスで花乃ちゃん待ってた時、金田グループの行き先、聞こえちゃったんだよね。

結構良さそうなプランだったから。」


金田グループとは、クラス委員の金田君、松尾君、小島君の優等生グループだ。


そして杏ちゃんもクラス委員なので、金田君とはそこそこ仲良くしている。

ちなみに、先ほどから一ノ瀬君を褒め称えている、杏ちゃん、ヒナちゃん、柚月ちゃんは、一ノ瀬君にリアコしているわけではない。

杏ちゃんは、最近金田君の事が気になってるし、ヒナちゃんにはバイト先で知り合った年上彼氏がいる。柚月ちゃんは既に人妻だ。旦那は2次元だけど。


「なるべく偶然を装いつつ一緒に回りたいの!

お願い!」


杏ちゃんのお願いに、少し戸惑ったけど、うんって答えた。


なぜなら、なんとこの修学旅行、一ノ瀬君のいつもの仲間達はみんな沖縄に行ってしまったので、今回彼がグループを組んだのは、金田グループだったのだ。


「でも、一ノ瀬君いるから、多分グループ同士では回れないと思うよ。

一緒に回りたい子たち、いっぱい居そう。」


「わかってる。

一緒に回れなくても良いんだ。

一緒のもの見て、同じ時間過ごせるだけで、十分楽しいから。」


杏ちゃんが、はにかみながらそんなかわいい事言うもんだから、ついぎゅって抱きしめてた。



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