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第1章 内田花乃の日常 01


世の中には、常に好かれ選ばれ続ける人間っていると思う。

みんなに一挙手一投足気にかけられて、いつでも誰かがその人の視線に入りたいって熱望するような。


一ノ瀬亮もその一人だ。


一ノ瀬君を一言で言うなら、顔がいい。そして性格も良い。雰囲気も柔らかい。

あ、一言になってないな。

でも、一言じゃ済まないくらい、良いところしか思い浮かばない。


例えばマラソン大会で、足の速い一ノ瀬君はさっさとゴールした後、次々とゴールする仲間たちと話はするけど、誰かがゴールするたびに拍手なんてしてるし、マラソンの苦手な子がなかなかゴールできなくて、みんながかったるいなーなんて空気になってても、もう少しだぞーとか、がんばれーとか率先して声出したりするから、彼の仲間たちや女子たちも一緒になって応援し始めて、何だよこれ青春かよってくらい、みんな熱くなっちゃったり。(ちなみに、最後にゴールした男子生徒はみんなに揉みくちゃにされて、すごくすごーーく嬉しそうにしてた。)


例えば、下校中の小学生が転んで泣いていたら、しゃがんで小学生と視線を合わせて、痛いよなーって頭撫でてあげて、泣き止むまで話しててあげるような。(ちなみに、泣いてた女児は泣き止んだ時、目がハートになってた。)


とりあえず、彼の欠点ってどこかなってくらい、良い人だ。


だから、まあ当たり前にモテる。

女子からはもちろん、男子からもモテる。

先輩からは可愛がられ、後輩からは慕われ、先生たちだって一ノ瀬君と話す時、みんなニコニコしてる。


そんなにモテるのだから、さぞ恋愛遍歴だって華麗だろうと思いきや、なんとかなり真面目らしい。


そして、中学から付き合っている彼女がいるらしい。


で、この辺は又聞き、噂でしか知らないけど、自分が好きになった人じゃないと、どんなに告白されても付き合わないと決めているらしい。

実際、うちの学校一かわいいと言われてる野間先輩や、学年一かわいいと言われている赤羽さんが告白したけど振られてしまったというのは有名な話。

浮気の心配のない完璧彼氏なんて、その彼女前世でどんな徳を積んだの?と思わなくもない。


そして、気になるその噂の彼女、どうやらうちの高校ではないらしい。

うちの高校だったら、きっとすごく目立っただろうなぁ。

一ノ瀬君の(輝かしい)学校生活に立ち会えないのは残念かもしれないけど、妬みややっかみが凄そうだから、同じ学校じゃなくて良かったんじゃないかな、なんて思う。


私?

私はただのクラスメイト。

1年の時、違うクラスだった一ノ瀬君の話は、女子の間でさんざん噂されてたから人となりについては知ってた。

で、2年で同じクラスになってみると噂は本当で。

一ノ瀬君を中心に、いわゆる一軍と言われるキラキラ男子とキラキラ女子の壁ができてるもんだから、私はもちろんお近づきになんてなれなくて、光の届かない教室の隅から、チラチラ光を拝む日々。


一ノ瀬君が優しいからか、うちのクラスにはいじめなんてない。

キラキラの取り巻きクラスメイトたちも、1年の時なら相手にもしなかったような私たちに対して、なんだかんだ優しくしてくれるようになった。


やっぱりもうちょっと拝んどこうかな。


きっと一ノ瀬君にしてみたら、私たちのことなんて、話したこともないクラスメイトでしかないし、名前くらいは知ってても、顔については認識してないんじゃないかなって思うけど、平穏な学校生活が送れてる身として、気持ちの上では常々お布施をしたい気分である。


そんな平穏な高校2年、とうとうあの季節がやってきた。

そう!

修学旅行!!!


沖縄組と北海道組に分かれた今年の修学旅行は、2年の進級時早々に行き先の選択があった。

その時はまだクラスメイトと仲良くなってなかったから、今同じグループの友達と行き先が違ってるなんてこともあって、ちょっとした騒ぎになった。


そんな時に一ノ瀬君が、行き先を変えたい人を集めて、行き先を交換できるようにアレンジしてくれてた。

で、その時に北海道から沖縄に変えたかった子が一人あぶれちゃったんだ。

そしたら、沖縄組だった一ノ瀬君が、交換を言い出したの俺だからって、その子と行き先交換したの。

もちろん、一ノ瀬君との沖縄を楽しみにしてた彼の仲間たちからは大ブーイングで、泣き出す女子まで居たけど、一ノ瀬君は意見を変えなかった。

(そして北海道組は、歓喜で震えてた。)


私?

私は、お寿司とじゃがバターが大好きだから、最初から北海道にしてたんだ。

だから、修学旅行の間、また一ノ瀬君を拝める機会があるかもってすごく嬉しかったんだ。


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