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オカリナ王国〜音楽の力が全てのこの世界で〜  作者: 早乙女リリィ
第 I 楽章 オカリナ王国〜自由と優しさ〜
8/45

第7小節目 ♫ 消えた旋律

オカリナ王国以外にも、これから色々な楽器国が登場します。お楽しみに♫


それぞれ国によってテーマカラーがありますが、オカリナ王国は『赤土色』です♫


 国中が、沈痛な空気に包まれていた。

 クロウリー王子の転落事故が起きたのは、国の中で最も高い、城の一番上の塔であった。

 あの高さから落ちて生きて帰ってこれるはずがないと、誰もが思った。


 何日にもわたる捜索が行われたが、ついにクロウリーは見つからなかった。

 塔の下に広がる林は険しい崖になっており、その下には川が激しく流れていた。

 その先に広がる森まで調べたものの、遺体すら発見されないまま、国中は悲しみに暮れた。


 そしてクロウリー王子の葬儀が行われた。

 彼の髪と同じ紫色の花で埋め尽くされたレンガの広場には、彼の死を悼む大勢の国民たちが集まり、涙を流した。

 その音楽の才で国中を魅了した未来の王の死に、楽団員たちも深い悲しみを表現するオカリナ演奏を捧げた。


 しかし事故の経緯は未だにはっきりとしておらず、唯一その場にいたミケル王子もショックのため何も語れない状況にあった。


 そんな中、国にある噂が流れ始めた。

 そしてその噂はやがて王宮にも届く。


 『クロウリー王子は実は国家転覆を企てていた。

 そしてそれを止めようとしたミケル王子と塔の上で口論になった。

 クロウリー王子はミケル王子に掴み掛かり、揉み合いとなった末、誤ってバルコニーから転落。死に至った。』

 …と____。


 その噂は、クロウリーに一番近い従者であり、学生時代からの友でもあった青年、エドワードの耳にも届いた。

 

 彼は今回のことに衝撃を受けると共に、真相について考えていた。

 (クロウリーが国家転覆?そんなことはあり得ない。

 彼は自由な音楽を通して国を、いや世界を平和にしていきたいと思っていただけだ。

 ましてやミケル王子に手をあげるなんてことは絶対に無い。

 あの弟思いの兄は、何があっても弟を守る覚悟でいた。

 そんな彼が…。)


 エドワードは強く噂を否定したかったが、いかんせん、事故当日の真相は不明なままだ。

 ミケル王子に問いただしたい気持ちはあったが、今は彼も憔悴しており、話を聞くどころではない。


 そしてエドワードの心には、妙な感覚があった。

 あれほどにも強い光を放っていたクロウリーが、こんなにも簡単に消え去るとは思えないのだ。


 クロウリーは死んでなんかいない。

 そんな気がしていた。



 つづく



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