表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
オカリナ王国〜音楽の力が全てのこの世界で〜  作者: 早乙女リリィ
第 I 楽章 オカリナ王国〜自由と優しさ〜
3/45

第2小節目♫沈黙の晩餐

 兄弟の年齢ですが、

 クロウリー22歳

 ミケル14歳

 の設定で書いています♫

 かなり年の差があるようです。


 宵時、王城の広間には大きな燭台の灯り、そして慎ましくも美しいシャンデリアが煌めいていた。

 純白のテーブルクロスがかけられた長いテーブルには、王家家族たちの夕食が並べられていた。


 香ばしいロースト肉、バターたっぷりのポテトグラタン、彩り豊かな季節の果物が陶器の皿に盛られ、甘やかな葡萄酒の香りが漂っていた。


 テーブルを挟み、クロウリーとミケルは向かい合って座っていたが、二人の間には微妙な距離感があった。

 弟のミケルは上品にナイフとフォークを使いながらも、ちらりと兄の様子を伺っている。


 対して兄、クロウリーはというと、目の前の料理には殆ど手を付けず、ぼんやりと窓の外のおぼろな月を眺めていた。

 彼の指先は膝の上で小さな動きを繰り返しており、頭の中ではオカリナの音を奏でているようだった。


 オカリナのこととなれば寝食忘れる。これはいつものことで、クロウリーの悪い癖である。父である国王もまた、そうであるように。


 しかしそれにしても、ここ数日のクロウリーは上の空であることが多かった。

 あの川のほとりで、バスオカリナの音を耳にしたあの日から。


 「兄さん、食べないの?」

 ミケルが声をかけるが、クロウリーは気づかず返事は返ってこない。


 「…それで、次に二人で吹くセレナーデのことだけど…。」

 ミケルはやや声を張りながら話を続けた。しかし…。

 「…兄さん?」

 弟の美しい顔が不満げに歪む。


 兄の切れ長のエメラルドの瞳は遠くを見つめたまま、動かない。まるでこの空間に彼はいないかのように、思考はどこか別の場所へと飛んでいた。


 ミケルが食台を叩くまでは。


 「兄さんってば!」

 ガシャン!


 その音に、クロウリーはようやく現実に引き戻された。

 彼は少し驚いたように目を瞬かせると、弟の方を向いた。

 「すまないミケル。…今なんて?」

 クロウリーの声は穏やかだったが、どこか上の空のままだった。


 ミケルはその態度にさらに苛立ちを覚え、テーブルの上の手を握りしめる。


 一方でクロウリーの頭の中では、あの時のオカリナの音色がぐるぐると響いていた。


 晩餐は気まずい雰囲気のまま終わりを迎えた。




 つづく





評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ