第2小節目♫沈黙の晩餐
兄弟の年齢ですが、
クロウリー22歳
ミケル14歳
の設定で書いています♫
かなり年の差があるようです。
宵時、王城の広間には大きな燭台の灯り、そして慎ましくも美しいシャンデリアが煌めいていた。
純白のテーブルクロスがかけられた長いテーブルには、王家家族たちの夕食が並べられていた。
香ばしいロースト肉、バターたっぷりのポテトグラタン、彩り豊かな季節の果物が陶器の皿に盛られ、甘やかな葡萄酒の香りが漂っていた。
テーブルを挟み、クロウリーとミケルは向かい合って座っていたが、二人の間には微妙な距離感があった。
弟のミケルは上品にナイフとフォークを使いながらも、ちらりと兄の様子を伺っている。
対して兄、クロウリーはというと、目の前の料理には殆ど手を付けず、ぼんやりと窓の外のおぼろな月を眺めていた。
彼の指先は膝の上で小さな動きを繰り返しており、頭の中ではオカリナの音を奏でているようだった。
オカリナのこととなれば寝食忘れる。これはいつものことで、クロウリーの悪い癖である。父である国王もまた、そうであるように。
しかしそれにしても、ここ数日のクロウリーは上の空であることが多かった。
あの川のほとりで、バスオカリナの音を耳にしたあの日から。
「兄さん、食べないの?」
ミケルが声をかけるが、クロウリーは気づかず返事は返ってこない。
「…それで、次に二人で吹くセレナーデのことだけど…。」
ミケルはやや声を張りながら話を続けた。しかし…。
「…兄さん?」
弟の美しい顔が不満げに歪む。
兄の切れ長のエメラルドの瞳は遠くを見つめたまま、動かない。まるでこの空間に彼はいないかのように、思考はどこか別の場所へと飛んでいた。
ミケルが食台を叩くまでは。
「兄さんってば!」
ガシャン!
その音に、クロウリーはようやく現実に引き戻された。
彼は少し驚いたように目を瞬かせると、弟の方を向いた。
「すまないミケル。…今なんて?」
クロウリーの声は穏やかだったが、どこか上の空のままだった。
ミケルはその態度にさらに苛立ちを覚え、テーブルの上の手を握りしめる。
一方でクロウリーの頭の中では、あの時のオカリナの音色がぐるぐると響いていた。
晩餐は気まずい雰囲気のまま終わりを迎えた。
つづく