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楽しい楽しい(?)家族旅行 前編

学園生活1年目も中盤に差し掛かり、夏の長期休暇が目前になっていた。

相変わらずアリアちゃんにはお茶会だったり買い物だったり色々誘われるので他の生徒からの誘いは断るが、アリアちゃんからの誘いは受け入れていた。

他生徒の誘いは明らかに家族ぐるみの政略的なものを感じるが、アリアちゃんのそれはただ前世での親友と同じものを感じた。

家族ぐるみと言っても私の場合は学園に入ってから1度たりとも顔を合わせるどころか文通すらしていない。

していないのだが…


「ファルラ、夏休暇中の予定空いてるか? 」


そう昼食を食べている時に声をかけてきたのはディルケン。

あの日以来かなり親しくしている。


「うん。というか私の家族と楽しくお出かけとかそんなのあると思う? 」


「あぁ…いやそうだよな。そうなんだが、それを分かっての上でのお願いなんだが…」


すごく言いにくそうにしているが、少し間を置いて口を開いた。


「父上が感謝の気持ちを込めて、改めてファルラ…というかドラゴイド家と会いたいということでな、それもちょっとした慰安旅行で…」


彼の父、すなわち国王のことだが、私が魔王を倒したことでかなり感謝されているということは前にも聞いた話だ。

そして本来ならば王族と旅行という点に驚くべきなのだろうけど―

私にとっての問題は


「要するに私と両親が一緒に何日間か過ごすってことだよね? 」


すこし違うが前世で反抗期だった私にとって親と旅行など苦痛以外の何ものでもなかった。

今回に関しては、私は別に反抗期では無いのだが親が1種の反抗期のようなものだろう。産まれてからずっとだけど。


「頼む! 父にもドラゴイド家の内情は話したが、父としても国王の面目があるんだ」


彼には以前に借りがあるし、さすがに断れない。


「うん。わかった」



とりあえず『国王陛下直々のお望みで家族全員と旅行に行きたい』という内容の手紙を送ったのだが、わざわざ長々と近況報告だったり健康を気遣ったりと書いたのに返ってきたのは『分かった。準備する』の一言だった。

まぁ、意外とあっさり受け入れてくれたから良かったけど…



そして特になんの問題もなく夏休みへと突入した。


「お久しぶりです。お招き頂きありがとうございます国王陛下」


旅行出発の日となり、私は王宮に来ていた。


「はっはっは。そんなに畏まらずに楽にせい。例の件、本当に助かったぞ。ファルラ嬢」


この王、めちゃくちゃいい人だ。

あなたの息子を馬鹿とか言ってすみませんでした。

この人の息子ならディルケンの根の優しさも理解出来る。


「おぉ! ファルラ、来てくれてありがとうな!! 」


あ、ディルケンが来た。

魔王討伐の時はガチガチ装備だったし、何気に普通の私服を見るのは初めてだ。

似合っている。


「そ、その…似合ってます」


何故か敬語になってしまった。


「ありがとう。ファルラも似合ってるぞ」


前世でこんな会話をした事がなかったので嬉しい。

顔が赤くなってないだろうか…


「ファルラさん!! ディルケンさん! 」


後ろから聞き覚えしかない声が聞こえてきた。


「…ア、アリアさん? 」


何故ここに彼女がいるのか、すぐ理解した。


「お久しぶりです! 国王陛下!! 旅行、楽しみにしていました! 」


良く考えれば、魔王討伐の立役者は聖女としてのアリアちゃんということになっているのでこの旅行に彼女が来るのは妥当だった。


なのだが…


「ファルラさんと旅行に行けるなんて楽しみです! 」


「な…なんですか? その格好? 」


モコモコの上着にブーツ。完全に北国の冬の格好である。


「え? これですか? 避暑地に行くって聞いてたので防寒をしっかりとして来ました! 」


ば…馬鹿すぎる。避暑地と言ったって行く場所は夏である。オーストラリアに行く訳では無いんだよ。


「あ…アリア…その、似合ってる。似合ってるんだが…」


いつも以上ににこやかな顔なアリアに中々指摘しづらいのか、ディルケンも口ごもっている。


本来のファルラはこんな状況すぐに壊したがるだろう。だが、今の私はその輪の中に入ってしまっている。

悪役令嬢と主人公という関係の微塵も残っていない。


そんなやりとりを見ながら、すこし切ない気持ちなった。


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