牢獄の老人
さすが王国の牢獄ということだけあってか、警備の人数は多いし施錠された鉄の扉が何重にもなっていた。
まぁ……警備は勿論全員動かないし、扉も私が少し力を入れれば簡単に開いた。 時間停止のせいでオブジェクトが破壊できないとかいう展開も有り得たけど、そこはご都合主義でなんとかなった。
ということでいとも簡単に目的の人物が投獄されている場所に行くことが出来た。
王宮に直談判、しかも武器も持っていたわけではないのにこんなに奥に投獄されているのも少し変だと思ったが、気にしている時間もないので早速鉄格子を壊そうとした。
「ん? 」
おかしい。開かない。
「どうした? いつもの意味不明な力でさっさと開けてくれよ」
分かっている。早く開けたいのだが、かなり力を入れているのに開く気配がしない。
「……なるほど。これは―」
目を細めて鉄格子を眺めていた魔王が前に出てきた。
「<極・解錠>」
聞き覚えのない魔法詠唱が聞こえ……
ガチャン、という音がして鉄格子が開いた。
「これは力ずくの類では開かぬ。貴様がこの世の理から外れているような力を持っていようが関係ない」
「なにか知ってるんですか? 」
「この世界を見たところ、オブジェクトの耐久値が我のいた世界よりも低いようだ。ただ、この鉄格子に限っては、我のいた世界のそれの耐久値すら大幅に超えている」
やはり平行世界によって世界自体に色々な違いがあるらしい。というかこの魔王、そんなことまで分かるのか。
「そこでこの魔法だが、これは我の一族に代々伝わる魔法だ。何故か我の一族以外には誰にも知られていない魔法。そして使い道も特になかったが……こんな所で役に立つとはな」
なるほど、一応理解はした。
とにかくこの王宮にはいくつも不可解な点がある。
でもそれを調べる余裕は今は無い。
「ファルラさん、この方です」
開いた鉄格子の奥には、動かない男性老人が座っていた。
「本当にこの人なのか? その騒いでいたってやつは」
ディルケンが疑うのも頷ける。
そこにいた老人は、オカルトチックな風貌をしているわけでも、悟りを開いた仙人みたいな見た目をしている訳でもない。
ただそこら中にいそうな ザ・街のおじいさん な見た目をしていたからだ。
「間違いないはずです。そもそも人は見かけによらないって何度も言いましたよね? 」
うん。見た目によらないって言う言葉はアリアちゃんから何度も聞いた。
まぁ……この子馬鹿だけどしっかりしているとこは結構あるし、信じて大丈夫でしょ。
「じゃあいきますよ」
ピクリとも動かない老人に手を触れた途端―
「「この世の終わりじゃぁぁぁぁぁぁぁ!!! 」」
鼓膜が破れそうになるほどの大声が至近距離で放たれた。
「うっ……」
大抵の攻撃じゃなんてことないのに、この声にはさすがに頭がくらってきた……
「ん?? これは……それにおぬしらは……? 」
「私、王国第2国王のディルケンと申します。あなたは何に対してそんなに焦ってらっしゃるのですか? 」
「ちょ、ディル……」
急に何を言い出したのかと思ったが、ディルケンが私の口を押えた。
(少し任せてくれ)
小声で私に耳打ってきた。
なるほど……多分まだこの老人が目的の人か不確定だから確認してくれているんだと思う。
「第2……なるほど、お主は王子なのか。ならば分かるじゃろ。今まで時間が止まっていた。わしには自覚はなかったが、わかるのじゃ」
「時間……はて? 」
「ぬぬぬぬ……さてはお主、天からの使い……いや、管理者じゃな!? だから動いておられるのじゃろ!! 」
「管理者、やっぱり知ってるんですね!? 」
管理者という言葉を聞いて我慢しきれなかった。
「あ、あぁ……というか、お主らが管理者なんじゃないのか? 」
「じつは……かくかくしかじか」
「な……なにぃっっ!? つまり、お主だけが時間停止を免れ、しかも他人の時間停止まで解除できると!? そんなことが……」
んー……、反応的に転生だったり異世界のことは知らないらしい。
「はい。それで、何か管理者とその上位種について知ってたりしないですか? 」
彼はふぅ、と息をついてから話し始めた。
「この世界の構造を知ったのは3年前の事じゃ……」




