解放作戦
顔を上げると、生き生きとした顔に少し赤いほほのアリアちゃんがいた。
「……あっ、ごめんなさい」
我に返り、抱きついたままだったことに気付く。
「な、何が起こってるんですか? 」
彼女は周りを見渡して動かない魔王たちを見て困惑していた。
というか、そもそもなんでアリアちゃんは……
あ、そうか。
私そのものがプログラム外なんだから、私が干渉すればプログラムの枷から外れるんだ。
「えっと、それはですね……」
経緯を全て話した。
「そんなことが……というか、やっぱりファルラさん何者なんですか? その……管理者? にも負けないなんて」
その理由は私が異世界から来たことを説明する必要がありそうだ。
だけど、まだ話せない。
「全部ステータスのお陰です。時間停止だって効かないんですよ」
改めてステータスの高さに感謝する。
言い訳にも使えるなんて万能すぎるぞ。
「じゃあ、時間はかかりますけど全員解放できますよね。よかった……」
「いえ、そのことなんですが、まだ全員は解放できないです」
「な、なんでですか?? 」
「まず、全員解放なんてしたら管理者に気づかれます」
これに関しては、少人数でも解放した時点でばれている可能性は大いにあるが……
「そして変に解放しようものなら混乱と、正直いって足でまといも増えます」
混乱はもちろん、視界の隅に写っている面倒な2人組を始めとする低戦力の足でまといも増えることになる。
「なるほど……わかりました。じゃあ、頼りになる人たちを連れていけばいいんですよね」
「実は、天から使者がやってきて全ての時を止めるって騒いでいた人がいるんです。
何度も私だったり国王陛下だったりに手紙を送ってきていたんですが、変人だっていって誰も相手にしていなかったんです……でももしかしたら何か知ってるかもしれないです」
天からの使者……言い方は違うが、管理者と捉えることも出来そうだ。それに、現に全ての時が止まっているのだから。
「わかりました。それで、今その方はどこに? 」
「王宮に直談判しに行って、今は牢屋に入れられているはずです」
相当熱意のある人らしい。
そんな人をあの国王が無視、ましてや投獄なんてするかな?
「それで……この場にいる人達は解放しないんですか? 」
この場にいる人を見渡す。
まず、足でまといになるので……少し私情もあるが、レードルとシュベルトは論外だ。
ディルケンはステータスに目をつぶれば強い部類、あと私情も少しはあるが解放したい。
問題は魔王。彼は正直いってかなり強そうだった。
それに加え今までで1番話の通じそうな魔王だった。
結果―
「こ、これは!? ファルラ、どういうことなんだ!? 」
「ふむ……なるほど。なにかしらの未知の力が働いたようだな」
落ち着きのないディルケンと
冷静な魔王を解放することになった。
「ふむ……なるほど。つまり我は平行世界からここに転移してきた、と。」
この魔王が平行世界から来たのは確実だが、この魔王の強さを考えると、世界によってキャラクターの強さの基準が違うのかもしれない。
「よく分からないが、とにかくその管理者っていう奴よりも強い奴がこの先攻撃してくることがやばいのはわかった」
ディルケンもある程度は理解してくれたようで、私たちは早速王都へと向かうことになった。
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王都には王都とは思えないほどの静寂が広がっていた。
広場には動かない小鳥と動かない貴族婦人。カフェにはコーヒーを凄い体勢で持っているウェイター。路地裏にはキスをしている少女ふたり……お幸せに。
「酷い……」
アリアちゃんは悲しそうな顔をしている。
「俺が管理者の存在に気づけていれば……」
ディルケンはそう言っているが、あの場で気付くべきだったのは私だろう。
「管理者……厄介な存在だ」
魔王の発言に深く同意する。
管理者だけでもこんなに厄介なのに、それの上位種が来る可能性が高いのだ。目眩がする。
王宮に着いた私たちは、すぐに牢屋へと向かった。
王宮内も、例に漏れず静粛に包まれていた。
「兄さん……」
ディルケンの兄こと第1王子アレイドルもいた。
「ファルラ。兄はこんなでも大切な兄なんだ。もちろん父上も母上も、そして国民のためにも、どうか力を貸してくれ」
ディルケンに言われなくてもそうするつもりだったが、彼に言われたことで俄然使命感が強くなった。
「うん。私頑張るよ」
1度のみならず2度も英雄になりかけていることなど気にする余地もなかった。




