王妃のお誘い
こんな特徴のない田舎でも良い点はあった。
中央のような喧騒もなく、静かなので落ち着いた気分になれるという点だ。
ただしその点はアリアちゃんと第1王子ことアレイドルによって壊された。
なのでアリアちゃんは部屋に帰してひとり閉じこもることにした。
そうしてようやく手に入れた静けさの中、お昼に王妃からお茶会に誘われた。
使用人に案内してもらい、王妃のいる部屋に向かった。
「ファルラさん、よく来てくれました。本当は陛下も交えてお話をしたいのだけど、陛下は仕事中で」
国王はこの旅行中にも仕事があるらしい。勤勉で優しいとかもう聖人じゃないか?
そして王妃は落ち着いた雰囲気で、風格はありながらも実家を思い出させる安心感を放っていた。
アレイドルみたいじゃなくて良かったと内心ほっとした。
「まず、使用人から聞いたのだけど、アレイドルが粗相をしたようで代わって謝罪させてもらいたいわ。ごめんなさいね」
「いえいえ……私の風貌にも問題があるので。それにほかの王族の方は皆様とてもお優しいですし」
「ええ。特にディルケンは優しいから、本当はあの子に王を継がせたいんだけど、この国の慣わしで長男が国王になることになっているから…」
使用人が紅茶を入れてくれる。
「はい、ディルケン様には本当に色々助けて貰っています」
あ、このお茶美味しい。
途端に王妃の目が変わった。
彼女は使用人に目配せして、使用人は部屋を出ていった。
「そこでなんだけど、ファルラさん、ディルケンと結婚する気はないかしら? 」
「っっっ! ごほっごほっ」
お茶を吹き出してしまった。
けっ、けっ、けっこん!?
聞き間違えだろうか。いやそうに違いない。
「そうですね。魔物を倒す時は血痕が服につかないようにしてます」
なんかすごい困惑した顔をされた。
「私は結婚と言ったのよ? 魔王を倒した英雄となら陛下だって賛成するはずよ」
結婚って、まだ私14歳なんだけど……
いや精神年齢は30歳か。
「私が…け、結婚を…ディルケンと……? 」
様をつけ忘れた。それくらいには動揺してしまっている。
「い、いくら魔王を倒したからってそれは…私は悪魔ってまだ巷では呼ばれていて……」
「あら? そんなの1部の妬みよ。今となっては多くの人が貴女を慕っているし、英雄って呼んでるのだから。それともディルケンじゃ嫌かしら? 」
そんなことない。彼のことは好きなような……気がしなくもない。
「まぁ、確かに少し早すぎたかしらね。そういう話は学園を卒業してからにしましょう。でも考えておいてちょうだい」
「わ…わかりました…」
「改めて、この国を救ってくれたこと感謝しているわ」
最後にお礼を言われて、私はその部屋を後にした。
過呼吸になっていたらしく、立った時立ちくらみをした。
帰り際にディルケンに会った。
「ん? ファルラ、どうしたんだ、熱でもあるのか?……ぐふっっ」
ディルケンが私の額に手を置いた時にはさすがに突き飛ばしてしまった。
「あっ……ご、ごめん!! 大丈夫!? 」
咄嗟に回復魔法を使う。
力の加減もせずに吹っ飛ばしてしまった。
「…………はぁっっっ、はぁ、はぁ、どうしたんだよ」
よかった、死んでなかったようだ。
上級の回復魔法でも蘇生まではできない。
「な、なんでもない。でも嫌いになった訳では無いから、気にしないでね? 」
むしろ私が今ので嫌われてないか心配しなければいけないのだが、
遠回しに好きと言ってしまったのではないかと心配になる。
「あ、でも別に好きと言ってるわけでは無いわけじゃないけど…」
あぁ……もう、この状況に限界を感じた私はその場を離れようと方向転換した。
途端に、後ろから抱きつかれた。
「俺はファルラのことは好きだが、お前は嫌いなのか? 」
限界に達した私は、また彼を吹っ飛ばしていた。




