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楽しい楽しい(?)家族旅行 後編

両親が来たのはアリアが来てから10分後くらいだった。

彼らは国王にテンプレ挨拶を済ませて、全員が揃ったのでそのまま馬車に乗ることになった。

第1王子と王妃はゲームに出てこなかったので初めて見たのだが、特に言葉を交わすことなく馬車に乗り込んだ。


家族単位で乗ることになったが、アリアは家族が来ていないので私の馬車に乗ることになった。


馬車の中の雰囲気というのは最悪なものだった。両親はまず私に対して口を開かないし、気まずすぎるので私も口を開けていなかった。


「…あ、あの、ファルラさんは黒髪なのにご両親は銀色なんですね」


沈黙を破ったのはアリアの一言だった。

悪い空気をどうにかしようとしたのだろうけど、それ地雷…


「ファルラが黒髪なのは悪魔の子だからだ。おお神よ。なぜ私たちに悪魔の子をお与えになったのですか…」


「悪魔の子? 貴方ファルラさんの親なのになんでそんなこと言うんですか!? 」


「逆に何故ファルラを庇う? 黒髪に赤眼。大悪魔の特徴と一緒じゃないか。君は聖女なんだろう? 」


「でも結果的に魔王を倒しましたし、人を見た目で判断しちゃいけないんですよ! 」


一向に進まない口論に突入してしまった。

母に至ってはそもそも私を視界にすら入れていない。徹底無視だ。


このもっと悪くなった空気の中、私は地獄の時間を過ごすことになっていた。


とはいえ、2日近くかかる旅路なので夜になるとさすがに口論が終わった。終わったのだが、結局結論に至ることは無かったらしく二人はムスッとした態度で黙りこくってしまった。


この雰囲気で酔いそうだ。

魔法で飛んで行った方が絶対楽なのにな。と思いつつ眠りについた。


そんな最悪な旅路も終わりを迎え、目的地へと着いた。


この地方、王国の北端に位置していて、漁業も栄えていると聞いた。私は前世の日本の漁村を想像して、この話を聞いてから心踊っていた。私が住んでいたド田舎は漁村なのだ。

磯の香りと独特の景色がそろそろ恋しくなっていた。


早く景色を拝みたいのと最悪の監獄車から脱出したいのと相まって馬車が止まる前に降りてしまった。


馬車を降りた瞬間、爽やかな風が頬を掠めた。

そして潮の香りとのどかな漁村が……。


……なかった


ドラゴイド領や王都と何ら変わらない建築様式に、王都に比べ見劣りする街のインフラ。海は全く見えないし、結局のところ気温以外は王都の劣化版だった。

がっかりした。

街を歩くのも漁師っぽい元気のいいがっちりしたおっちゃんではなく、服装も顔もドラゴイド領の人と変わらなかった。

やっぱりがっかりした。


たださすがに漁業が盛んなのか、野良猫がそこらじゅうを闊歩している。

撫でようとしたら引っ掻かれた。


ちなみにステータスカンストなので痛くもなんともない。


「アリアさんなにやってるんですか! 」


ようやく止まったらしい馬車から降りたアリアちゃんが駆け寄ってくる。


「それにしても涼しいですね。ちょうどいい気候です」


昨日まで北国に行く格好をしていたことを忘れているらしいが、今はさすがに薄着だ。


両親はと言うと、少し離れた場所に立っていた。


「ドラゴイド様方、アリア様、王族の方々はすでに宿泊施設へと移動しておられます。ご案内させていただきます」


しばらくすると使用人がやってきて案内してくれた。


両親は私たちの後ろ5メートルくらいを1寸もずらさず着いてきた。

反抗期の親の気持ちとはこんな感じなのだろうか。


街並みというのはどこをどう見ても変わらないもので、海も一向に見えることがなかったのだが、多少潮の香りがしたような気がする。


宿泊施設はと言うと、


さすが王族の避暑地と言うだけあるのか、超豪華だった。


「見てくださいファルラさん! この柱、ガラスで出来てます! 」


アリアちゃんは幼い子供のように興奮して走り回っている。

そのまま客室へと向かったが、客室も超豪華だった。


部屋は1人につき1部屋らしく、両親と同じ部屋で地獄の時間を過ごさずに済むと思うと胸をなでおろした。


「ファルラさん! この部屋プールまでついてます!! 」


無論アリアちゃんとも別室のはずなのだが、何故かここに居る。

暇だけど街は観光するほどのものでもないし、だからといって部屋にこもっているのも勿体なかったので施設内を歩くことにした。


さすが王族の宿泊施設、至る所が金ピカで細部まで拘られている。

正直、こんなド田舎に勿体ないほどの建築物だった。


ブラブラしていると、向こう側から誰かが歩いて来るのが見えた。

第1王子だ。ゲームには登場しないが、ディルケンが第2王子なので第1王子は居るはずだった。

名前はたしか…


「アレイドル様、お初にお目にかかります。ドラゴイド長女、ファルラ・ドラゴイドと申します」


この完璧な挨拶文は旅行前にディルケンに叩き込まれた。


「…ちっ 」


あ、結構当たり強い。 今まで話してきた王族が皆優しい人だったからちょっと驚いてしまった。


面倒そうな人なので関わらないでおこうと思い軽く会釈して通り過ぎようとしたのだが


「俺はお前が魔王を倒したなど信じていないからな! 」


後ろから怒鳴られた。

面倒なので聞こえないふりをして歩き続けた。


「魔王を倒すのは聖なる王族だと決まっているのだ! 」

「本来はこの第1王子の俺が倒すべきなんだ! 」

「100歩譲ってまだ弟のディルケンが倒すのならいい! 」


まだ追いかけてくる。めちゃくちゃ面倒くさい。

走っても追いかけてくる。ストーカーか?


ステータスにものをいわせて全力で走ったらすぐに振り払えたが、


「どこ行った! まだ話は終わってないぞ! 」


まだ探しているようだ。

厄介な人に顔を覚えられてしまったなと1人ため息をついた。


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