ミラーフェア
「え?え?」「目が、目が見える!それに喋れる!」
「どうして?」
「今度こそ、貴女の名前を教えてくれないかしら?」
「あ」「私はミラーフェアと言います」
「助けてくれて有難う」
「ミラーフェアね」
カルラは名前を復唱すると、ステータス画面を出して
操作しながら会話を続けた。
「最初に助けたのは、そこにいるセルアルとスハノで
治療したのは、ヨレヨレになってるカーシェよ」
「本当に有難うございます」
深々と頭を下げるミラーフェアの姿に癒された…
「さて、本題に入るわね」
「ミラーフェアにはこの三人が設立するギルドに
入ってもらうから」
「ええ〜?」
声を上げたのは、ミラーフェア本人とカルラの意図が
全く分かっていないセルアルとカーシェだった…
「でも私は獣人だから・・・」
「俺はミラーフェアが、入るのに異論はないけど」
「勿論、私もです」
「えっ?」
「でもこの町の住民じゃないのに、入れるんですか?」
カーシェの素朴な質問に、一瞬明るい表情になったミラーフェアの
表情は暗くなり、下を俯いて小さく呟いた
「そ、そうだよね」「やっぱり無理」
「ミラーフェアはこの三人のギルドに、入りたいと
思ってる?」
「私はギルドが、どんな所かよく分からないけど
私を助けてくれたこの人達のギルドなら入りたいです」
「それじゃあ、決まりね」
「え?でも私獣人だし、この町の住民じゃないよ?」
「細かい事は気にしないの、ミラーフェアが入りたいなら
私が入れてあげるから、大丈夫よ」
「それより、申請するからギルド名を決めてくれる?」
三人は眉に皺を寄せて、唸り声を上げながら懸命に考えた。
そして最初に挙手したのは、スハノだった。
「はい!」
「お」「流石はスハノだね、早いじゃない」
カルラに褒められて、意気揚々と自分の考えを発した。
「楓の木はどうでしょうか!」
「却下!」
間髪入れず、カルラに一蹴された…
「スハノさん、それはダメですよ〜」
「むっ」「それじゃあセルアルさんは、いい名前が
思いついたの?」
「勿論です」
セルアルは胸を張って考えたギルド名を口にした
「放課後ティー…」
「却下、却下!」
「え〜最後まで言ってないですよ〜しかも二回言ったし…」
「ダメですよ〜」「セルアルさん、学園ものじゃ無いんですよ」
「カーシェ」「何言ってるの?」
カルラが間髪入れずに言うと、カーシェが自分の胸を叩いた。
「私に任せてください!」
三度目の正直とは言うけど、本当に大丈夫かしら・・・
カルラには、不安しかなかった。
「クマさんの憩いの…」
二度ある事は三度あった〜
「却下、却下、却下!」
「三人居れば一人位はと、思ったのに・・・」
「期待した私が馬鹿だったみたいね…」
カルラが溜息を吐き、額に手を当てて首を横に振った時だった。
「思い出の場所、ダメだよね?」
ミラーフェアの発言を耳にして、四人の視線が一気に集中した。
「それいいんじゃない?」「どう思う?」
「ま、まぁ、普通だけどいいんじゃないかな?」
「そ、そうね、普通だけどいいと思うわ」
「そ、そうですね、普通だけどいいと思います」
「貴方達ね〜」
「普通、普通って素直に認めたら…」
カルラが言い終わらぬ間に、三人がベッドに駆け寄っていた。
「やるじゃないか、いいギルド名だと思うぞ」
「うんうん」「思い出の場所、いいじゃない」
「いいと思うわ」
「ですがカルラ様、ギルドに所属するには冒険者カードが
必要ですよね?」
「それに王都の住民でもなく、人でもないミラーフェアでは
冒険者カードの発行は難しいのでは?」
他の三人には聞こえないように、カルラの耳元でボソッと呟くと
「大丈夫よ、スハノ」「私を信じなさい」
スハノの声に応じて、カルラが小声で答えた時
ノック音と同時に治療室の扉が開いて、受付嬢が小走りで
カルラの元に駆け寄ると、耳元で囁いた。
「なに?騎士団の連中が、もう来たのか?」
「はい」
「獣人を差し出せとロビーで騒いでおります」
「そう、私が行くわ」
「それじゃあ、私達も行きましょう」
セルアルとカーシェが、コクリと頷いてカルラの後に続くと
ミラーフェアがベッドから降りて、駆け寄って来た。
「あ、あの私なんかの為に、皆さんが危険な目に合うなら
私を差し出して下さい」
「ミラーフェアは優しいね」
「そんな事言われたら、より一層差し出す気が失せたわ」
「それに守ってあげるって、言ったでしょ」
カルラがミラーフェアの頭を撫でると、セルアル達が笑顔で
任せろと言わんばかりに、拳を握り締めてカルラと共に
ロビーへ向かったのだった。




