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禁忌の魔法と獣人の娘






  翌朝目が覚めたセルアルが、部屋を出ると

  一般冒険者は立ち入り禁止のロビーでカルラとスハノが

  コーヒーを飲みながら、くつろいでいた。


  「やあセルアルも起きるの、早いじゃないの」


  「お早う御座います」「すいません、お待たせしました」

  

  「いやいや、別に時間を決めてた訳じゃないからね」

  「それと後一人来るから、もうちょっと待ってくれないか?」


  後一人?

  セルアルとスハノは顔を見合わせて、首を傾げた。

  

  昨日からの流れ的に考えれば、もう一人はあの治癒魔法を

  使った冒険者の女の子。確か『カーシェ』とか言ったっけ?

  いやだけど、会ったのは、昨日が初めての筈。

  だけど、他に思い当たる人が居ないし。


  その時、関係者以外立ち入り禁止の扉から、案の定カーシェが

  姿を現した。


  やっぱ、そうだよね。

  セルアルとスハノは、心で呟いた。


  「たた大変おおお待たせ致しました」

  「なな何かご用でしょうか!」

  

  カルラが吹き出して、カーシェの肩に手を置いた。

  「そう固くならなくていいわよ」

  「リラックス、リラックス」

 

  「はははい〜!」


  「さて人も揃ったので念の為、最後にもう一度確認するわね」

  カルラが三人を一瞥すると、咳払いを一つした。

  「獣人の娘を守るのに、異論は無い?」


  「はい!」

  三人はほぼ同時に返事をして、首を縦に振った。


  「よし」「…と私の考えを話す前に、カーシェは

   何処かのギルドに所属している?」


  「い、いえ」「所属はしてないです」

  

  「それは僥倖」「それじゃあ私の考えを話すわね」

  「貴方達三人で、ギルドを立ち上げなさい」


  「え?」

  

  「だけど俺は、協会専属の冒険者になったばかりですよ?」


  「そうです」「私にだってカルラ様の付き人と言う

   重大な任務がありますよ?」


  「あわわわわわ」


  「三人共、落ち着きなさい」

  カルラが、なだめたが三人の動揺は止まらなかった…

  

  

  「それに俺、前払いで貰った金貨十枚は獣人の女の子の

   身の回りの物一式と、自分ので殆ど使ったから返せないですし」


  「そうです」「それにカルラ様は目を離すと直ぐに、デスクワークを

   サボろうとするので、私が監視しないと」


  「あばばばばば」


 

  「落ち着け!」

  カルラの少し大きめな声で三人は『ハッ』と我に返った。


  「スハノとセルアルには、付き人と協専の冒険者の任を

   引き続き行ってもらう」

  まぁ付き人のスハノが居ない方が、自由で仕事もサボれるけど

  スハノが居ないと、紅茶の葉でさえ何処にあるかを

  私は把握してないから、実際居なくなると困るのよね…

  それに、セルアルには金貨五百枚分の仕事はして貰わないと!


  「それはどういう事ですか?」

  「ギルドを設立すれば、そう言う訳にはいかないのでは?」

  「それに、私達三人でギルドを設立する意味が…」

  言い終わる前に、スハノはカルラの意図を理解した。

  「あ〜成る程、そう言う事ですか!」


  「うんうん」「スハノは聡明で助かるわ」

  カルラがチラッとセルアルとカーシェに視線を送ると

  二人が顔を見合わせて、セルアルが口を開いた。


  「あ〜成る程〜」「そう言う事か〜」

  「って、どう言う事?」


  「わわわ、私も分かりません〜」

  



  「あ〜もう説明するのが面倒だから、本題に入るわよ」

  「あの娘もそろそろ起きるでしょうから」

 

  カルラが治療室の扉を開けると、『ギギギ』と音が静かな部屋に響いて

  それに気付いた獣人の娘がベッドの上で上半身を起こした。


  「やあ、傷はもうすっかり治ったみたいね」

  カルラの問いかけに返答は無く、娘はただボ〜ッと一点を見ていた。

  

  「え〜と」「私はカルラ・ジェイス、横に居るのがスハノ・ランシで

   その横がセルアルに、カーシェ・ハカト」

  「貴女も名前を教えてくれないかしら?」

  

  だが返答は無く、四人の誰を見てるのかも分からない

  焦点の合ってない目に、カルラはハッと息を呑んだ。


  「貴女」「まさか、目が見えてないの?」


  獣人の娘はコクリと頷いて、カルラの横一列に

  並んで立ってる三人は、呆然と佇んだ。


  「そうなの」「ねぇ」「せめて名前位は、教えて…」


  だが娘は何も言わず、俯いたまま黙っていた。

  

  「ねぇ」「名前くらいは教えてくれて…」

  「まさか」「喋れないの?」


  カルラの問いに、娘が顔を上げて口を開くと

  舌が切断されていた・・・


  「酷い」


  「こんな幼い娘に、一体誰が」


  「こんな所業が許されるのか…」


  「許せない」


  そして沈黙が室内を包み、カーシェが一歩前に歩み寄った。


  「カルラ様」「私に治療させて下さい」


  「カーシェ」「まさか治せるの?」

  

  「完全に元通りに出来るか、分かりませんけど

   このままじゃ、いくら何でもこの子が不憫すぎます」

  

  「そうよね、カーシェに任せるわ」


  「有難う御座います」

  「今から使う治療魔法は、理を無視した魔法故に

   本当は使用を禁じられているので、他言無用でお願いします」

   

  カーシェが娘の両の頬に手を当てると呟き始めた。

  「心なき者の手で奪われた、この者にどうか御慈悲を

   時の天使よ、我に力を貸し与え給え」

  「時よ遡れ『リバース』」


  すると眩い光が空から天井を突き抜けて、獣人の娘に降り注いで

  光と共に小さな天使が二人、娘の周りをグルグルと

  回りながら降りてくると、娘の目と口にそれぞれが両手を当てたまま

  その場に止まり、二人の天使が娘の体に入っていった瞬間

  一段と強い光を放ち、思わず三人は目を閉じて顔を背けた。


  「どうなったの?」


  「治ったのか?」


  三人が獣人の娘に視線を戻すとカーシェが、ヨロヨロと

  後退りそれをセルアルが支えた。


  「大丈夫ですか?」


  「一度に大量のマナを消費したので、少し目眩がしただけです」

  「あの子はどうなりましたか?」


  すると、ベッドの上で上半身を起こしている、獣人の娘の瞳から

  ボロボロと涙が次から次に、零れ落ちていた。


  

  

  

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