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自分の手の届く場所






  翌日セルアルは、協会専属冒険者の説明をスハノから聞いていた。


  「協会専属冒険者に抜擢されるのはAランクの冒険者で、

   その任務は協会から紹介された依頼の遂行と、魔物討伐に向かった

   冒険者からの応援要請に応える事、後は低ランクの冒険者から

   訓練の要請があれば、それも任務に含まれます。給金は定額制で

   毎月金貨三十枚です。説明は以上になります」

  

  

  「え?それだけで、金貨三十枚も貰えるのですか?」


  「はい」「ですが魔物は、突然変異で上位種や希少種に

   進化してるので、くれぐれも油断しない様に」


  「分かりました!」


  「あ、それと王都に来て色々と物入りだろうから

   金貨十枚を先払いで渡す様に、カルラ様から預かってます」

   

  「え?金貨を十枚も?」


  「はい」「これで身の回りの物を揃えに行きましょうか」


  「一緒に来てくれるのですか?」


  「王都はとても広いです、市迄の道が分からないでしょう」

  「それにカルラ様からも、案内する様に言われてますから」

  

  「そうですか!宜しく頼みます」



  そしてスハノに連れられて、セルアルは市へと向かった。


  「今日は馬車じゃ無いんですね」


  「ああ、あの馬車は普段使わないですよ」

  「違う馬車なら使えますけど、どうしますか?」


  「いや、自分の足で歩く方が好きなので、いいです」

  「生きてるって感じがするじゃないですか」


  「そうですかね?」

  セルアルが何を言ってるのか、分からなかったが

  楽しそうに歩いてる姿を見て、『まぁ、いいか』

  聞こえない様に、小声で呟くと先を急いだ。


  冒険者協会から歩いて役三十分、右に左に曲がりながら

  スハノはスイスイと前を歩いた。

  

  「スハノさんが来てくれて良かったです」

  「俺一人じゃ、絶対迷ってた!」


  「そうですか、それはよかったです」

  「着きましたよ」「この先が、王都ご自慢の市です」


  セルアルの目の前には、幅二十メートル程もある広い道の

  両脇と中央に食べ物やアクセサリー等、色々な店が

  ズラリと並び人々の活気で溢れていた。


  「すげ〜まるで祭りみたいですね!」

  セルアルが小走りで駆け出す後ろ姿を見て

  スハノは『クス』っと笑った。

 

  「セルアルさん、逸れないで下さいね」

  「絶対に、迷いますよ〜」

  

  スハノの叫び声も虚しく、人混みの中をスルスルと

  抜けながらあっという間に先へ先へと、進んで行く

  セルアルの後を必死で追いかけた。


  どうしてこんな人混みの中を、あんなに速く動けるのよ!

  このままじゃ、ホントに見失ってしまう…

  人にぶつかっては謝りながら、これ以上離されない様にと

  急ぎ足で後を追いかけてると、立ち止まり何かを

  見下ろしてるセルアルに、漸く追いつく事が出来た。


  「ハァ、ハァ」「セルアルさんどうかしま…」

  セルアルの目線の先を見て、スハノの言葉は途切れた。


  そこには傷だらけで、息も絶え絶えになってる

  獣人の小さな女の子の姿があったからだった。


  「酷い傷」「もう助からないでしょうね」

  「さあ、買い物に行きますよ」


  セルアルはスハノの方を見る事もなく、膝を落とすと

  女の子にヒールを唱えた。


  「セルアルさん?何してるんですか?」

  「その子は獣人で・・・」


  「静かにして下さい」

  スハノに背を向けたまま、静かにゆっくりとした口調だったが

  その圧にスハノは思わず後退り、ゴクリと息をのんだ。


  セルアルは、傷だらけの獣人の小さな女の子の姿を

  自分の幼い頃と重ねて見ていた。

  

  気に入らない事があれば、八つ当たりされて暴力を振るわれて

  生きるのが、辛かった幼少期。

  この子に何があったのか等、勿論分からない。

  そして人間では無く、獣人だけどそんなのは取るに足らない事。

  放って置くなんて出来る訳がない。

  

  『セルアル』『この世の中には困ってる人、救いを求めてる人は

   星の数ほど居る、それを全員助けるなんて事は勿論無理だ』

  『でもな、自分の目の前で自分の手の届く場所で困ってる人が居たら

   必ず救いの手を差し伸べてやれ』『私がお前にしてやった様にな』

  

  分かってるよ。ミルセ姉さん、俺はこの子を決して見捨てない。

  獣人の小さな女の子を抱くと、セルアルは立ち上がった。


  「スハノさん、ごめんなさい」「俺はこの子を助けます」

  「ミルセ姉さんが、俺を助けてくれた様に」

  

  「分かりました」

  ダメだと言ったら、協会に戻って来ない気がしてならないし

  もしそんな事にでもなったら、カルラ様に合わせる顔が無い…


  セルアルのヒールで、応急処置をした後

  女の子の身の回りの物を買い込み、急いで協会へと戻った。

  

  


  応急処置はしたものの、傷口は深く薬草をすり潰して、調合して

  その時間は果たしてあるだろうか?

  いや、急を要する。

  セルアルが協会に足を踏み入れて、叫んだ。

  「時間がありません」「誰かこの子を治癒出来る方居ませんか?」

  「お願いします!」


  協会に居た冒険者達は、騒ついた。

  「いや、でもあの子獣人だよな〜?」


  「助ける義理はないよな〜」


  「そうよね」「助ける必要無いわよね」


  クソ〜なんだよコイツら!ふざけやがって!

  セルアルが心で叫んだその時

  

  「あ、あの〜私で良ければ」「冒険者になったばかりですけど

   治癒の魔法だけは、幼い頃から修練してたので」


  「おお!有難う!」「是非!お願いします!」


  「じゃあ中に入って、設備も整ってるしマナを回復する

   装置もあるから、お願いね」


  「は、はい!」「頑張ります!」


  スハノに連れられて、二人は受付のカウンターの横にある

  関係者以外立ち入り禁止の表示の扉から、中へと入っていったのだった。

  

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