協会専属冒険者
噂の人物がランク試験を受けると言う話を聞きつけた冒険者達が
セルアルの腕前を一目見ようと、訓練場に人集りが出来ていた。
協会が造った擬似魔物と戦って倒すとそのランクが与えられるが
魔物を倒せないと、試験は失敗となりFランクからのスタートになる。
注意点。
擬似魔物はホログラフでは無く実体なので、攻撃を受ければ
痛みもあり傷も負うので、実際の魔物と戦うのと変わりは無い為
先ずは、ランクの低い魔物の選択を推奨していた。
倒せさえすれば、次のランクの魔物に挑戦も可能だからである。
(翌日の挑戦も可)
そしてセルアルが選んだ擬似魔物はゴーレムだった。
「セルアルさん、説明聞きましたよね?」
「ゴーレムは倒せば、Aランクですが一番強い魔物です」
「攻撃を喰らえば、痛いじゃ済まされないですよ?」
「はい」「ゴーレムでお願いします」
セルアルの言葉に、場内の冒険者達が一気に騒ついたのは
ゴーレムは本来Bランクの冒険者が、四〜五人でパーティーを組み
やっと倒せるかどうか…魔法も効きづらく、剣も弾き返す頑丈な体
そんなゴーレムの強さを、この場に居る冒険者の殆どが、
身も持って知っているからだった。
「幾らなんでも無理だろ」
「無謀すぎるわよ」
「ゴーレムの強さを知らないんだろ」
野次馬の冒険者達が、好き勝手にセルアルの
批判が始まったが
「静かに!」
ギルドマスターカルラの鶴の一声で、直ぐに静けさを取り戻した。
「セルアルがいいと言ってるのだから、ゴーレムを設定しなさい」
「か、畏まりました」
スハノがタッチパネルを操作すると、訓練場のほぼ中央に立ってる
セルアルの前方の地面がゆっくりと横に開き、地中から姿を現したのは
ゴーレムの中でも、一番厄介だと言われてるストーンゴーレム。
その体長は二メートル以上あり、体重は約一トン。
歩く度に訓練場の地面が、地響きを起こす程だった…
これは、終わったな。
いい格好しようとするからだ。
まあ仕方ないわよ。
これが現実。
冒険者の誰もが、ギルマスの目を気にして、口には出さなかった。
そしてゴーレムの封印が解かれて、目の前に居るセルアルに気付くと
ゴーレムが地面を蹴り砂埃を上げながら、巨体とは思えない速度で
セルアル目掛けて突進すると『ゴギャッ』っと鈍い音が訓練場に響き渡り
カルラにスハノそれに冒険者達がゴクリと
息を飲んで、砂埃が晴れるのを待った。
そして蔓延した砂埃が晴れた先で目にしたのは、バラバラになって
崩れているゴーレムだけで、セルアルの姿は見当たらなかった…
カルラとスハノが、名前を叫びながら訓練場の中に足を踏み入れると
ゴーレムの瓦礫の中から、セルアルが立ち上がり埃を払った。
「あ〜びっくりした」「今回はダメかと思ったわ〜」
「セルアル!無事だったか!」
「砂埃で見えなかったが、どうやった?」
カルラの横で、スハノがうんうんと首を縦に振っていた。
「突進して来たゴーレムの足の関節部分を、後ろから攻撃したら足が折れて
バランスを崩したゴーレムが、自分の体重で自滅した感じです」
「成る程ね」
しかしあの速度で移動してるゴーレムの足を、後ろから狙って普通折れる?
私でも自信がないわ・・・
流石ミルセ姉のシゴキに十年間耐えただけはあるって事よね。
金貨五百枚の価値どころか、それ以上かもしれないわ。
こりゃ、とんでもない拾い物かもね!
「あ、あの試験は合格でしょうか?」
「ああ」「ごめんなさい」
「勿論合格、セルアルは今この時をもって、Aランク決定です」
カルラの宣言に、訓練場に集まった冒険者達から歓声が湧き上がった。
「セルアルには協会専属の冒険者になってもらうが
異論は無いわよね?」
「協会専属の冒険者?」
「よく分かりませんが、ミルセ姉さんから言われたのは、冒険者になる事
なので冒険者になれるなら、異論は無いです」
「スハノ」「セルアルにリングと冒険者カードと
協会専属冒険者の説明を頼むわね」
「それと空いてる部屋を案内してあげて」
「畏まりました」
頭を下げたスハノの肩をポンっと、軽く叩いてカルラは去って行った。
そしてスハノに先導されて、セルアルは部屋に通された。
そこにはタンスやクローゼットに立派なベッド。
部屋の北側には、大きな机と椅子があった。
「ここがセルアルさんの部屋になります」
「ご自由にお使い下さい」
「ここに住んでいいのですか?」
「勿論です」
「それとこれを腕に付けて下さい」
セルアルはスハノから、丸いリングを手渡されて言われた通り
腕に付けると、チクっと痛みを感じて体全体が妙な感じに包まれた。
「これは・・・一体?」
「装着した事で、今貴方のマナがリンクしたので
そのリングは、貴方にしか反応しなくなりました」
「試しに『ステータス』と言ってみて下さい」
「え?は、はい」「ステータス」
すると四角い画面が、リングの上に表示された。
「うお」「びっくりした!」
「それが今の貴方のステータスになります」
「小さな枠に色々書いてあるでしょう」「後から色々試して下さい」
「分からない事があれば、その都度聞いて下さい」
「色々と有難う御座います!」
『グルル』セルアルのお腹が、鳴り響いた…
「クス」「食事まだのようですね」
「冒険者カードのお渡しは、明日になりますので
その時、専属冒険者のお話も一緒にしましょう」
「もう遅いので、今日は食事をしてゆっくり休んで下さい」
「どうぞ、こちらが食堂になります」
「あの、でもお金持ってないんですけど…」
「ああ、いりませんよ」「どうぞ、こちらに」
スハノと共にセルアルは、部屋を後にしたのだった。




