冒険者ランク試験の始まり
今度こそ、王都に向けて出発したセルアルは、鼻歌混じりで
木から木へと、飛び移りながら進んでいた。
今度こそ、本物の王都か〜 楽しみだな〜
木から木へと飛び移りながら、順調に王都へ向かう
セルアルの目に映し出されたのは、とても大きな町だった。
幼い頃住んでいた村から、一歩も外へ出る事もないまま
ミルセに拾われて、森の奥深くにあるアジトで過ごしたセルアルには
先程の町も大きく思えて、王都と勘違いするのも無理は無かったが
それとは比べ物にならない程、王都は大きかった…
そして漸く王都の門の前に辿り着いたセルアルだったが、
長い槍を持った門番に、行く先を阻まれていた。
「すいませんが、通行証かギルドカードはお持ちですか?」
「いえ、持ってません」
「王都に来るのは、初めてなので」
「そうですか」
「お持ちでない方には、銅貨を一枚納めて貰う規則に
なってます」
「あ!そうだ」「紹介状なら、あります!」
セルアルがガサゴソと、ポーチからヨレヨレの紹介状を
取り出して門番に渡すと、怪訝そうな顔付きで、紹介状を手に取り
その内容に目を通した瞬間。
「こ、これは大変失礼致しました!」
「ささっ、どうぞお通り下さいませ!」
「え?銅貨持ってないけど」
「いえいえ、結構です」「どうぞどうぞ」
「そう言えば、王都は初めてだと仰ってましたよね」
「広い王都で迷子になる可能性もあります」
「直ぐに案内の者をお呼びしますので、少々こちらでお待ちください」
紹介状を渡した途端に、セルアルは手厚く迎え入れられて
言われるがまま、休憩所と書かれた小綺麗な部屋の椅子に腰を落とした。
「ふ〜」
今度こそ、王都か〜。
セルアルが大きく伸びをした時、表から騒がしい声が聞こえてきた。
「それで、ここの休憩所で待ってるのね」
「はい!お待ちになって頂いてます」
「有難う」「貴方の事はギルマスによく言っときます」
「はっ」「有難う御座います」
そして、『コホン』と咳払いが一つして、休憩所の扉が開いて
ローブ姿の少女が入って来た。
「ギルドマスターの付き人の、『スハノ・ランシ』と申します」
「セルアルと言います」
「表に馬車を用意してます」「どうぞ」
「わざわざ、有難う御座います」
「どうぞ、お乗り下さい」
スハノが開いた扉から馬車に乗り込み、驚いた。
柔らかい椅子に、豪華な装飾、綺麗に磨かれた大きな窓から
外を眺めると町民達の、注目を集めていた。
「あのセルアルさん」「紹介状を預からせて貰っていいですか?」
「あ」「はい、これです」
ヨレヨレの紹介状を、スハノに手渡した。
シワだらけじゃない…
そんな事よりギルマス宛に紹介状なんて一体誰が?
スハノは差し出し人の名前を見て、一瞬固まった。
『ミルセ・ジェイ様!』
あの王都最強と言われ、王都で初のSSランク冒険者の!
次期ギルマスの最有力候補だったが、貴族のお偉いさんと
揉め事を起こして、王都から姿を消した為に
妹である『カルラ・ジェイス様』が、ギルマスに抜擢されたと。
で、でも、でもいいな!あの『ミルセ・ジェイス様』から!
一体、一体、どんな関係なんだろう!
「ふ〜ふ〜」
ミルセ崇拝者である、スハノの鼻息は荒くなっていた。
「あ、あの…スハノさん」「ど、どうか、しましたか?」
「あ、ごめんなさい」「時にセルアルさん!」
「ミルセ様とは、一体どう言った御関係でしょうか?」
「え〜っと」「実は・・・」
セルアルの話をスハノは、ただジッと聞いていた。
「成る程!じゃあミルセ様は、セルアルさんの命の恩人で
ミルセ様に、戦闘を教わったと!」
「そ、そうですね・・・」
えええ、さっきも思ったけど、ミルセ様って…
セルアルが、引いたその時、馬車がゆっくりと止まった。
「どうやら、到着したみたいです」
馬車から降りて、冒険者協会の大きさにセルアルは、後退った
凄い・・・こんなに、大きいなんて・・・
スハノに先導されて協会に入ると、多くの冒険者達の視線が
セルアルに集中して、辺りが一気に騒ついた。
「え?何だか、俺って見られてます?」
「自意識過剰じゃ無いですよね?」
「ああ、ギルマス宛の紹介状を持って来る人が居ると
噂になっていたましたからね」
「え?噂になっていたのですか?」
「そりゃあ、ギルマス宛に紹介状なんて、普通じゃないですからね」
と言う事は、ミルセ姉さんって凄い人だったのかな?
とてもそんな風には、見えないけど・・・
そして、ギルドマスターと表示された部屋に、セルアルが通されて
中に入ると、大きな机に右肘を着き、手の平に顎を乗せた
カルラ・ジェイスが、こちらを向いたままニヤリと唇を歪めた。
「よく、来てくれましたね」「待っていましたよ」
「え!ミルセ姉さん!どうして此処に居るのですか!」
「あ〜聞いて無いのですね」「全く困った姉ですね」
右手を額に当てて首を横に振った
「え?姉?」
「ええ、私は双子の妹で、ギルドマスターの『カルラ・ジェイス』
これから、宜しくお願いしますよ」
カルラが立ち上がり、差し出された手とセルアルが握手を交わすと
今度はセルアルが、ニヤリと唇を歪めた。
「妹さん、いやカルラさんもかなり強いですね」
「あら、有難う」「貴方には王都で冒険者になってもらいます」
「聞いてますよね?」
「はい」「聞いてます」
「凶暴化してる魔物を倒す為に、力を貸すと」
「そこで、セルアルには今からランク試験を受けてもらいます」
「ランク試験?ですか?」
「ええ、冒険者は最低のFランクからですが、腕に自信のある冒険者は
ランク試験を受けて少しでも、上のランクからスタートしてます」
「そうすると、より強い魔物の依頼を受けられますから」
「成る程!分かりました」
「スハノ、セルアルを訓練場まで案内してあげて下さい」
「畏まりました」
スハノとセルアルの後ろ姿を見送ったカルラは、顔の前に上げた
握手を交わした手が、小刻みに震えてるのを見て思った。
金貨五百枚の大金を、払っただけの価値はありそうですね…と
そして、カルラもランク試験を観戦する為、部屋を後にしたのだった。




