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許される嘘





  ゴブリン達が、マイカに襲いかかった頃。


  セルアルは、マナの消費を抑えつつ、サーチを繰り返しながら

  やっとの思いで、反応を捉える事が出来た。

  それは幾つもの小さな点が、一つの点に向かっているビジョンだった。

  このひしめき合ってる点は、魔物だよな?

  そうすると、この一つの点は?

  

  一体、どうなってるんだ?

  マイカ達は、六人で討伐に向かった筈なのに、何故点がひとつだけ?

  嫌な予感がして、セルアルは現場へと急いだ。


  そして一つの点の元に辿り着いた時、それは明らかになった。

  マイカ目掛けて、ゴブリン達が襲いかかった瞬間に、

  出会したのだった。


  腹部は拳で貫かれて、振り下ろした棍棒が、頭を直撃・・・

  その残虐極まり無い諸行に、セルアルの怒りは頂点に達した。


  握り締めた拳から、血がポタリと滴り落ちて

  唸り声を上げようとしたが、喉元で止まった…


  ゴブリン達の前から、マイカの姿がかき消えたからだった。


  「よかった、残像だったのか」「ビックリした」

  ホッと気を抜いたセルアルは、木の枝から足を滑らせ、

  『ドス〜ン』と派手な音を立てて地面に落ちた。


  その音にゴブリン達が、ビクッと反応してセルアルを見た瞬間

  一斉に飛びかかった。


  「そりゃ、そうだよね」

  小さく呟いた後

  二、三度大きく呼吸をして居合いの構えになった。


  「念術剣 四の型」「絶の舞 一絶」

  剣を抜いて、ゴブリンの群れに向けて放つと、無数の刃が

  三十体のゴブリン目がけて襲いかかり、一瞬で殲滅したのだった。

  「ふ〜上手くいってよかった〜」

  「絶を使うのは鍛錬の時以来だったからな」

  セルアルは、小袋を取り出すとゴブリンの魔石を回収し始めた。


  「セ、セルアルさん、お強いですね…」

  物陰から、マイカが申し訳なさそうに、姿を現した。


  「マイカさん、無事で何よりです」


  「貴方、剣術は誰に教わったの?」


  「ああ」「ミルセ姉さんが、武術から魔法まで

   全部教えてくれました」


  え?ミルセ姉さん?マイカは、自分の耳を疑った…

  「あの、ミルセって、まさかミルセ・ジェイス?」


  「おお、マイカさん、知り合いでしたか!」


  「いや、そうじゃ無いけど」

  そうじゃ無いけど、騎士なら誰でも知ってる、『ミルセ・ジェイス』

  『盗賊団 紅』のカシラで、以前は冒険者で最強と謳われた人物。

  確か、妹さんが王都の冒険者協会のギルドマスターだとか。

  セルアルさんは、ミルセが盗賊団のカシラって知ってるわよね?


  「マイカさん、どうかしましたか?」


  「い、いえ」「もし差し支えなければ、いいのですが」

  「ミルセさんとは、どう言ったご関係なのですか?」


  「ああ、俺が幼い頃村が魔物の群れに襲われまして、

   それをミルセ姉さんと仲間の方が、助けてくれたのですよ!」

  

  「そうですか、じゃあ命の恩人ですね!」


  「正しくその通りです!」

  「今の俺がここに居られのは、ミルセ姉さんのお陰です!」


  セルアルは嬉しそうに言い放っていたが、マイカは思った。

  それは多分違うと…

  推測だけど、ミルセはセルアルの村を襲ったが、そこで魔物達と

  偶然に鉢合わせした為、魔物達を駆逐したのだろうと…

  正しく、運命の悪戯としか言いようがない。

  もし魔族が、村を襲っていなかったとしたら…

  果たして、セルアルさんは、ここに居ただろうか?


  「マイカさん?どうかしましたか?」


  「あ、いえ」「何でもありません」

  

  「それより、これどうぞ」


  セルアルが、集めたゴブリンの魔石をマイカに手渡した。


  「いえ、これは受け取れませんよ」

  「ゴブリン達を倒したのは、セルアルさんです!」

  

  マイカが、小袋を突き返した時、セルアルのお腹が、悲鳴を上げた。

  「お腹が、泣いてます」「ところで、食料ってあるんですか?」

  

  無言でマイカが首を横に振った。

  「何とかしなきゃいけないと、思っているのですが

   魔物が何時襲って来るか分からないので、なかなか…」


  「じゃあちょっと、俺は食料でも調達してきます」

  「マイカさんは、先に帰ってゴブリン討伐の報告をお願いします」

  「くれぐれも、俺じゃなくて、マイカさんが倒したと報告をお願いします」


  「イヤイヤ、そんな嘘は吐けませんよ」


  「あの子供達もそうですが、住民達もマイカさんを慕って

   マイカさんを、信頼してます」

  「ゴブリンはマイカさんが倒した、それでいいじゃ無いですか」

  「じゃ、そう言う事で!」「俺も直ぐ戻ります!」

  セルアルは、右手を上げると物凄い速度で走り去っていった…


  マイカは、セルアルの後ろ姿を見送って講堂に戻ると

  子供達がドタバタと駆け寄り、出迎えてくれた


  「マイカお姉ちゃん、大丈夫?」「怪我してない?」

  「魔物は?お姉ちゃんが倒したの?」

 

  「いや、魔物はセ…」

  そう言いかけた時、子供達が自分を見上げるその羨望の眼差しと

  『マイカさんを慕ってます』セルアルの言葉が、頭を過った。

  

  「し、心配しなくても、全部お姉ちゃんがやっつけたわ」


  「すげ〜!やるな〜マイカねぇ!」


  「マイカお姉ちゃん、強いんだね!」

  

  子供達の言葉に、マイカは心が痛んだが

  でも、それでも、とても嬉しそうな子供達の笑顔を見て思った。

  こんな嘘なら、神様だってきっと、許してくれるわよね…と

  


  

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