「何でファーストキスはレモン味っていうの?」「甘酸っぱいからとか?」
初投稿。ただ、こんな青春送りたかっただけの話です
合わないなと思ったらソッと閉じてより良い作品を探しましょう!
「ファーストキスってなんでレモンの味って言うのかな?」
「また突然、脈絡もなく変な事を言う……」
人のベッドの上で足をバタつかせながら唐突にそんな事を言う彼女は卯月ユリ、小中、今通っている高校も一緒という腐れ縁が続いている幼馴染だ。
彼女は時々、その時ふと疑問に思った事を口に出す。
そして気になった事をとりあえず俺にぶつけて解消しようと試みる。
靴下はなんで靴の中にあるのに靴下なのかという答えが出るものから、自分と他人の色の認識は本当に同じなのかという答えが出ないものまで多岐にわたる。
何故と疑問をぶつけられると今まで気にならなかった事が、途端に気になって頭を悩ますこっちの身にもなって欲しいんだが。
「いやさ? 伊織がさっきまで舐めてたレモン味の飴の包装見てふと気になったんだもん」
「何故そこからファーストキスに繋がるんだ」
「ファーストキッスはレモン味ってよく言うじゃん」
「キッス言うな」
ええ~といいながらバタバタを加速させるユリ。
おい止めろ人のベッドで泳ぐな、ベッドメイクしたばっかりだぞ!!
バタ足を止めさせるには疑問に答えるしかないか……ファーストキスね……うん。
「甘酸っぱいからとかそういう所からきたんじゃないのか?」
「甘酸っぱいから?」
とりあえず疑問に答えてみるとユリはバタ足を止め、むくりと体を起こす。
「青春は甘酸っぱいって言うだろ? ファーストキスは大半が中高時代にすることが多いみたいだし丁度青春真っ只中だから青春になぞらえてとかじゃないの?」
「そうなるとなんで青春は甘酸っぱいのって疑問が出るんだけど」
「……青春は爽やかなイメージで、爽やかの代名詞であるレモンを持ってきたからとか?」
「そもそもレモンって酸っぱいけど甘さはそんなに感じなくない?」
「そんな矢継ぎ早に疑問をぶつけてくるな」
「だって気になるんだもん」
ユリはそう言って口を尖らす。
子供か!! 拗ねるんじゃないよまったく。
「だってじゃない。大体、ファーストキスもまだの癖に疑問を持つな」
「あるけど」
「えっ?」
「ファーストキス。したことあるけど」
時が止まったような感覚を覚えた。
えっあるの? 嘘だろお前……本当に?
……あれ、なんだろ凄いショック受けてるぞ俺。
どうしよう言葉が出てこない、例え声が出ても今喋ったら声が震えそう。
「どうしたの急に黙って。……あれ、もしかしてショック受けてる?」
ニヤニヤしながら俺の肩をツンツンとつつくユリ。
止めてくれ、自分でもびっくりしてるんだよ。
「伊織だよ。私のファーストキスの相手は」
「……? 俺?」
「そっ。覚えてない? 5歳の時おままごとの最中に、夫役の伊織にいってらっしゃいのキスしたんだけど」
……全然覚えてない。ままごとをしてた記憶はあるんだけど。
でも、相手は俺なのか。そうか、俺か。
何だろう、めっちゃほっとしてる。もしかしてもしかすると俺ってユリの事好きなのか?
うわぁマジか……意識してしまうと途端に恥ずかしくなってくる、顔が赤くなってないか心配だ。
「ああ、でもファーストキスって幼少の時のはカウントしないんだっけ。そうだとすると伊織の言うとおりファーストキスはまだになるのか……」
「伊織は? もうファーストキスした?」
覗きこまれるような形でそう問われ顔をそっぽ向けてぶっきらぼうに「ねえよ」と答えてしまった。
許して欲しい、今始めてユリへの恋心に気付いてしまったのだから。
「よかった」
「いや、何がよか――っ」
顔が近い!!
ユリの言葉に反応して彼女へと顔を向けると、鼻先がくっつく寸前までユリの顔が近くまで寄っていた。
「誰にも盗られたくないからもらうね?」
何かを発する前に唇を塞がれ、一瞬のような永遠の様な時が流れたのち唇が離れた。
「えへへっ、甘酸っぱいね」
宝物を手に入れた時のような笑顔を見せながらそう告げる彼女に俺は
「さっきレモン味の飴舐めてたからだろ……」
という言葉を返すので精一杯だった。
「それじゃ飴の味かどうか確かめる為にもう一回……しよ?」
「……おう」