旅の始まりは
彼らが目指しているのは、サシュランの氷原を抜けた雪に覆われた山の村、デルフォ。
万病によく効く薬草が取れるため、薬師の村として知られている。
「それはつまり──看護婦の村、ということだろう? ……いい、実にいい。白衣も好きだがピンクというのも悪くない。いや、悪くないどころかむしろ良い選択だと言わざるを得ない」
澄ました顔をしながら器用に浮かれるのは牧義だ。
さりげなく胸元に練り香水を小指で塗るのを見て、
「はいはい、色魔色魔。薬師の村っていうんだからそこは医者でしょ。しわしわに枯れたおじいさんがたくさんいるっていうイメージだわ」
牧義から漂い始めた甘ったるい香りをかき消すべく、ばっさばっさとローブの裾をはためかせる竜香。
「ついでに、姫竜もみてもらおうな? 最近体調よくないだろ」
熱っぽい顔をして、それでも笑顔で頷く姫竜を抱き寄せて寄りかからせるのは持山。
先日砂漠の古城で受けた毒は、その場で中和してもらったとはいえ、やはりダメージは大きかったのだろう。
街に戻ってから発熱し、寝込むこと数日。
竜香の治療を受け、熱が下がり落ち着いたかと思いきや、定期的にぶり返し、なかなか調子が戻らないでいる。
「うんうん、ダリの人の薬ももらって、姫竜もいいお薬もらってこようね?」
そう言うのは遊希だ。
うん、と頷くと持山の膝を枕にうつらうつらし始める姫竜を心配そうに見る。
「ダリの人たちも、あんなんじゃ大変だろうなぁ……」
先日の状況を思い出したのだろう。
渋い顔をしながらしみじみと砂流がつぶやく。