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その1、竜香

 

「んー、寒いわ」



 寒さに不機嫌そうにため息を吐く、目深にフードを被った若い女。

 背中まで伸びた髪は、凍り付いているのか、風に吹かれるたびにサラサラと音を立てる。


 彼女の名は、竜香。

 無から有を生み出すのではなく、そのもののチカラをあげることを得意としていて、治癒力を向上させるなどして白魔術に近い魔術を使う。


 相性など様々な条件はあるが、戦士や魔術師問わず、一時的にその潜在能力を高め、普段出せる倍以上もの能力を引き出すこともできる。

 彼女が持つ能力は「助」であり、基本的に戦闘に参加することはあまりない。



「よりにもよって、こんな吹雪ではぐれるとか、ないわよねぇ」



 はぁ、と吐き捨てるようにため息を吐く。


 予定では、明日の朝あたりにつく予定だった、雪山の村、デルフォ。

 仲間達と歩いて雪山を旅していたのだが──



「姫竜、無事かしら……」



 吹雪に耐えつつの行軍が続くこと、約一週間。

 身も心も疲れ果て、警戒心や集中力が鈍っていたのが災いし、雪の陰から現れた大型モンスターに先制攻撃を許してしまった。


 数日程前雪にから体調を崩し、自力で歩いてはいるが、ひどく辛そうだった姫竜。

 激しく肩を上下させながら、彼女の前に立ち、敵に剣を振るうも、ひときわひどい吹雪に視界を奪われ、次に目を開けたときには、彼女の姿はなかった。



「全くもう……凍えちゃうじゃない」



 それだけではなく、周りにいたはずの仲間たちも──それどころか襲い掛かってきたはずのモンスターの姿すら、消えていた。



 耳を澄ましても、聞こえてくるのは吹雪の音。

 声を枯らして叫んでも、誰の返事もない。


 しばらくその場にとどまり仲間を探すも、何の手がかりも得られないばかりか、いたずらに冷気を吸い込み喉を傷めるばかり。

 仕方なく、万が一はぐれた場合は目的地をめざせ、という仲間内のルールに沿って、一人目的地を目指して吹雪の中歩いているのだ──が、最低限しか荷物を背負っていなかったこともあり、食料や水はおろか、休むための設備もない。



「全く、冗談じゃないわよ。なんで私が凍えながら雪にまみれなきゃいけないの。おかしいでしょ。愛され系ゆるふわガールが凍えてカチカチでどうすんのって話じゃない」



 寒さでうまく口がまわらないのも、寒いを通り越して辛いのも、全てに対して腹が立つ。

 それでも歩かなくてはいけないのも、非常に不愉快だ。



「デルフォについたら、絶対好き放題飲み食いしてやるわ。もう無理ってくらい飲んで食って飲んで食って……」


 ブツブツと呟きながら、重い足を引きずり、目的地を目指すしかないのだ。


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