第94話 後継者
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死の砂漠を中心とし、その南に位置するエルドラド共和国。大陸に存在する国の中で唯一王政を廃止し、共和政を取ったこの国を自由国家と称する声も大きい。
そしてエルドラドの首都エルドラ。大陸に存在する都市の中でも最も商いが盛んであり、市場は活気に溢れそして商業ギルドの影響力も高い。
そんな商い中心の都市において商人たちの間で騒ぎになっている事件があった。
トヌーラ商会の商会長である、ヨクゴウ・トヌーラの死亡である。
トヌーラ商会はここエルドラにおいて、アリババ商会と一、二を争う大商会であった。
その一角が商会長の死で崩れ去った、と多くの商人が思っていた。だが、そういった有象無象の商人とは異なり冷静に状況を分析できる商人達の間ではこれからのトヌーラ商会に期待する声もあった――
「新会長として就任おめでとうロベリア」
「これはこれはわざわざ来て頂けるとはありがとうございます」
トヌーラ商会に挨拶に来たのは、これまで商会と懇意にしてきた顧客の一人だった。
そして彼を出迎えたのは紫色のドレスに身を包まれた妖艶な美女であった。谷間を強調するようにカットされた扇情的なドレスであり、相手の視線もついついそちらを向いてしまう。
「これからも何かとお世話になることもありますので宜しくお願いしますね。私は商会長としてもまだまだ経験が浅いので貴方様のことは特別に頼りにしています」
「う、うむ。そうか? いやまいったな、ははは!」
美しいロベリアに頼られて嬉しくない男はいない。そういう意味でロベリアはよく自分を知っていたと言えるだろう。
こうしてその日次々と就任の祝辞を述べに訪れる客たちを相手していく。それが彼女、ヨクゴウ・トヌーラの娘であるロベリア・トヌーラであった。
「お疲れさまですロベリア様」
「えぇ、本当に疲れたわ」
やってくる客たちの対応を終え、ようやくロベリアは一息ついた。彼女に声を掛けたのは元々は父であるヨクゴウの秘書だった男である。
「砂漠で見つかった遺留品が届いております。それと葬儀の手配などいかが致しましょうか?」
「処分しておきなさい。それと葬儀は行わないわ」
「え? 行わないのですか?」
秘書は処分の件はともかく、葬儀の件では意外そうに聞き返した。
「しない。ただし取引のある商会や顧客には近親者だけで執り行うとしておきなさい」
「しかし、何故?」
「簡単よ。これでもし大掛かりな葬儀なんて行って参加者を集めたりしたら、私がアイツの意思を引き継いでいるように思える。アイツを嫌っていた人間は多く、好いていた人間に関して言えばゼロよ。精々自分の利益になるからいい顔をして付き合っていた程度でしょう。そういった連中に対して葬儀なんて大掛かりにやっても不信感が募るだけ。もっともだからといって何もなしだとそれはそれで薄情な娘と捉えられる。だからあくまで近親者で行うという体を見せるの」
「なるほど……しかしお兄様達は納得されますか?」
「するわよ。あいつらだってアイツのことを本心では嫌っていただろうし、近親者だけで葬儀をやるといっても絶対に参列しない」
なるほど、と秘書は顎を引いた。
「しかし、この度の動きは見事でしたね。前会長が死の砂漠に向かうと聞いた時点で次期商会長であることをアピールするために各所を回られた。おかげで砂漠での死が発覚したころにはロベリア様が後任になるという既成事実が出来上がっていた。議員の件もこのままいけば問題ないでしょう。しかも次男であるボング様も上手く丸め込んだ。おかげで長男であるアングル様の出る幕がなかった程です」
「当然よ。こういうのは早ければ早いほどいいのだから」
金色の髪を掻き上げながら、ロベリアが不敵に笑った。父であったトヌーラが死んだことで元老院の議員の座も一つ空いたが、これも根回し済みであり後任としてロベリアが選ばれることは間違いない。
「しかし、よく死ぬと予見出来ましたね」
「大したことではないわ。金に目がくらんだ男の末路なんていつでも似たような物。それに砂漠に関する気になる情報もあったしね」
「……追放された皇子のことですね。こちらでも更に情報が掴めないか調べているところです」
「まだ何も掴めていない?」
「直接のことは。ただ気になる情報が。アリババ商会の商会長の妹が死の砂漠から戻ってきたようです」
「そう……確かペルシアだったかしらね」
ロベリアは窓の外に目を向けながら思い出すように言った。
「はい。そしてどうやら商売に繋がりそうな相手を砂漠で見つけたと言う話が、もしかしたらそれが例の皇子の可能性が……しかし皮肉なものですね。ペルシアという娘は無謀にも護衛もつけずたった一人で死の砂漠に向かったそうです。一方前会長は冒険者も含めてしっかりとした護衛がついていたというのに、砂漠で命を落としてしまうのですから」
「……そうね。ところでアイツの護衛についていた連中については掴めている?」
「は、それが右腕として知られていたサディスや連れていた奴隷については何も……ただ前会長があの有様ですから、一緒に砂漠の魔物に食べられた可能性が濃厚かと」
「本気で言ってる? サディスはともかく奴隷のジャックは半巨人よ。それも含めて残さず食べられるというのは現実的じゃない。それに、そうね。雇っていた冒険者の行方も追いなさい。それとペルシアという女が帰りも一人だったかもね」
「え?」
「鈍いわね。もし一人じゃなければ色々と見えてくるものもあるの。後はそうね今後のアリババの動きにもしっかり目を光らせること。わかったわね?」
「は、はい。承知しました」
そして秘書は仕事に取り掛かる為に、すぐに部屋を出ていった。
一方残されたロベリアは窓の外を眺めつつ一人ほくそ笑む。
「追放された皇子様、ね。使えないとされていた砂属性が水を得た魚のように活発に動き出したってところかしら。もしかしたら帝国はとんでもない逸材を砂漠に追放してしまったのかもね――うふふ……」
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