第91話 砂漠で勝負を求められる!
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「馬鹿な! こんな筋肉もない非マッソーな存在に、神獣のお前が靡いたというのか!」
キングモアイは僕をマジマジと見た後に、フィーを指さして叫んだ。
でも、靡いたというのはちょっと違うような……
「ふふん。妾から見れば、そのような筋肉だけの脳筋よりも、王の方がよっぽど魅力的であるからのう」
そう言ってフィーが僕を抱きしめてきたよ。む、胸が……
「ちょ、フィー! 何してますの! お兄様から離れるですの!」
「そうだよフィー! その、こんなところで不謹慎だよ!」
「何を言うておる。この脳筋に見せつける為であるぞ」
「フィー苦しいよぉ」
「むぅ、それはすまぬのう」
ふぅ、ぎゅうぎゅう押し付けられて、柔らかかったけど息が危なかったよ……
「納得いかーーーーーーん!」
フィーから解放されてホッとしているとキングモアイが叫んで地団駄を踏んだ。それだけでダンジョンが大きく揺れ動く。
「そのようなマッソの欠片もないようなヒョロヒョロの人間が王だと! 王とはキング! つまり筋肉だ! 筋肉の部位も答えられんような軟弱な男にはふさわしくない!」
「それは偏見ですぞ! それに我が王は軟弱などではない! とても強く賢智溢れる素晴らしき王なのだ!」
キングモアイにアインが反論してくれる。ちょっと、というかかなり照れくさいです……
「ほう? 面白い。つまり貴様はそのような軟弱な形をしておきながらマッソーよりも強いというのだな!」
「え? えっと、流石に言い切れないけど……ただ筋肉があればいいというものでもないかなとは、お、思うかな?」
僕がそう答えると、キングモアイの顔がみるみるうちに赤く染まってきた。
「よくわかった俺の筋肉を冒涜するのだな!」
「えええぇええ! いや、そんなつもりはないのだけど……」
「黙れ。いいだろう。ならば貴様とこの俺、どちらが王として相応しいか、一騎打ちといこうではないか!」
「えぇえええぇえええ!?」
何故か名指しでそんな勝負を求められたよ!
「そして、もしこの俺が勝ったならスフィンクスはこの俺が貰う!」
「えぇえええぇええ!?」
しかも何故かフィーを賭けの対象みたいに言ってきたよ!
「ふ、フィーを貰うって……」
「素晴らしいかしら! 一人の女を巡って二人の男が一騎打ち! これこぞが愛よね愛!」
いつの間に愛モード形態に戻っていたアイが、謳うように言った。えっと巡ってって……
「もう、楽しんでる場合じゃないじゃない」
小さくなったアイをイシスが持ち上げたね。
「あら、でも素敵だと思うかしら。マスターも同じことが起きたら嬉しいかしら!」
「え? わ、私は、そういうのわからないよぉ~」
アイの質問でイシスの顔が赤い。正直僕にはよくわからないけど、答えは決まっているね。
「その申し出には答えられないよ」
「ムッ! 臆したか! これだから非マッソーは!」
「えっと、一騎打ちはいいのだけど、勝手にフィーを賭けるのはちょっとという意味なんだけどね」
僕の懸念はフィーのことだけだからね。
「ふむ。妾はそれでも構わぬぞ」
「え!」
「何! 俺のものになる決心がついたか!」
「何を阿呆なことを言うておるのやら。妾が認めた王が、貴様のような筋肉だけが自慢のモアイに負けるわけがないからのう。だから問題ない。王よ。妾は信じておるぞ」
一瞬驚いた僕だけど、フィーはキングモアイに言い放って僕にウィンクしてきた。
「ぐぬぬ、この俺がこんな筋肉もない小僧に負けるものか!」
「……うん。フィーがそう言うならこの勝負受けるよ」
「ほう、言ったな非マッソーな小僧よ!」
うん言った。それにさっきは僕が皆に任せたんだから今度は僕が覚悟を決めないと。それに一騎打ちなら皆に余計な怪我を負わせる心配はないからね。
「新しい剣の切れ味が試せないのは残念だが、中々面白い話になってきたな! 俺は応援するぜボス!」
「あんたも呑気だねぇ。でも何かかっこいいわ王様」
「俺は戦闘がそもそも得意でないからな。避けられるならそれに越したことはないぜ。頼んだぜ王様!」
冒険者の三人も応援してくれている。
「お兄様が決めたことならば、私は応援しますの!」
『ケケッ、非マッソーと王マッソーどっちが勝つか見ものだな』
「心配だけど……私はもともと戦えないから、でも怪我したら絶対治すから!」
「それも愛よね愛!」
「王よ! その勇敢な決意! 我は猛烈に感動しています!」
モルジアもイシスやアインも背中を押してくれた。そしてラクが近づいてきて頭を擦り付けてくる。
「ンゴォ~ンゴォ~」
「大丈夫だよラク。あ、それと暫くスーを預かっていて」
「ス~!?」
スーがどうして? という目を僕に向けてきた。いやいやってしてるようでもあるけど。
「これは一騎打ちだからね。スーの力を借りるとそうじゃなくなる。だからラクと一緒に見ていて」
「ス~ナ~」
「ふふ、心配するでないスーよ。お主の御主人様はいずれファラオとなる王であるぞ」
ファラオかフィーは時折僕に対してその言葉を口にする。それが何かはまだわからないけど、みんなの期待には答えないとね!
「準備は出来たか? 非マッソーな王よ」
「うん。この勝負受けて立つよ!」
「非マッソーにしてはいい度胸であるな。ならば俺の筋肉を受けてみろ!」
キングモアイが戦闘態勢に入る。僕も身構えた。
「ゆくぞ!」
そしてキングモアイの筋肉を乗せたパンチが僕に迫る。改めて見ると体格差が凄まじい。
僕なんてキングモアイから見れば足の小指程度の大きさでしかない。
リーチからしてまるで違うんだ。
「砂魔法・砂合壁!」
砂の壁を展開。途端に、ズシィィイイイン! という重たい衝撃が壁越しに伝わってくる。まるでピラミッドそのものを直接叩きつけられたみたいだ。
守ってはいるけど衝撃は続く。凄い連打だ!
「後ろががら空きであるな!」
「あ!」
キングモアイが跳躍してくるっと回転して僕の後ろに着地した。その衝撃だけでちょっとした地震が生じる。
「むんっ!」
キングモアイが今度は蹴りを繰り出してきた。
「砂魔法・砂柱!」
とっさに足元から砂の柱を作り上に逃げる。だけど、柱が蹴りでポキっと折られた。空中に投げ出される。
「砂魔法・砂鉄大槍!」
空中から槍を連続投射。だけど大槍といってもこれだけの体格差があると、キングモアイから見たらサボテンの針が飛んできてるようなものかもね。
「フンフンフンフン!」
キングモアイが手で槍を払い除けた。僕は砂をクッションに着地したけど、このままじゃジリ貧だ。やっぱりダンジョンマスターで王を名乗るだけあって手強い。筋肉だけじゃないよ。
さて、どうしようか。キングモアイのパワーはものすごい。
今回はスーの防御にも頼れないからね。防御するなら今みたいに砂の壁になるけど、それだと衝撃までは防ぎきれないし、防戦一方になる可能性がある。
全方位を壁で囲っても同じだ。この王と戦うには防御と攻撃を一緒に考えないと駄目だ。
その為に出来る事と言えば――
「ふん。どうやらスフィンクスよ、とんだ見込み違いだったようであるな。俺の筋肉の前に手も足もでないではないか」
「ふん、なんとも早計であるぞ。むしろ我が王はここからが本番ぞ」
「何? ふん。面白い砂ごときで何が出来るか見せてみろ!」
「言ったね。なら見せるよ! 砂魔法・砂巨人!」
「む、な、何だとぉおおおお!」
僕が魔法を行使すると、キングモアイの顔色が変わった。よかったそれぐらいのインパクトは与えたみたいだね。
「お、おおおおぉおお! ボスすげーーーーなんだこれかっこいいいいぃいいい!」
「ちょ、ライゴウ騒ぎすぎ! てか、王はどこいったんだい?」
「ふむ、どうやらあの巨人の中に、つまり巨人に乗っているようだのう」
「きょ、巨人の中に!」
そう。フィーの言っているように、今僕が魔法で作成したのは砂人形のゴーレムじゃなくて、直接の乗り込む搭乗型の砂巨人さ! さぁここからが本番だよ!
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