第88話 砂漠の変身
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モ愛が倒れ粒子となって消え去った後には、大剣と大盾と、そして奇妙な球体が残った。
それはそれとして、モルジアの様子が……
「ふぁぁん、お兄様~愛しのお兄様~♪」
「ちょ、モルジアくっつき過ぎだってば。どうしたの?」
そう、なにか目がトロンっとしている、足もフラフラしていたし、なにかちょっとおかしなことになっているんだ。
『ケケッ、俺の濃い魔力を多少とはいえ注ぎ込んだからな。魔力酔いを起こしてんだよ』
「ま、魔力酔い!」
初めて聞いた。魔力切れや魔力枯渇は知っているけど、魔力酔いなんてね。
ちなみに魔力切れは極端に魔力が減っている状態で、魔力枯渇は魔力が全く無くなった状態。切れの方は疲れが一気に出て魔法の行使も思うようにいかなくなる、枯渇は深刻な状態だ放置すると死ぬとも言われている。
で、魔力酔いというのは濃い魔力を摂取した場合に起きる現象で酒に酔ったような状態になるとか。
「魔力酔いであれば魔力が馴染めば自然と治るであろう」
ということでモルジアは暫くはこのままにして収まるのを待つことになる。ただ、魔力酔いも酷いと命の危険もありえるらしい。注いだ魔力がそこまでの量じゃなかったからこの程度だとカセは言っていたよ。
モルジアの魔力が回復して消費の激しい空間固定をあれだけ使えたのもカセのおかげだったみたいだ。それでもカセからすればごく僅かな量だったらしいけどね。
さて、改めて僕たちは戦利品に目を向ける。
「えっとこの玉は一体?」
「ふむ。恐らくは今のモアイの魔核であるな」
核――そういえば砂巨人のときにも核を狙ったんだったね。
「核、特に魔力の集合体でもある魔核を持つ魔物は少ないのでのう。希少価値は高いであろう」
そうなんだ……それならペルシアに見せたら喜ぶかな?
う~ん、でも何だろう。少し勿体ないと思えてしまった僕がいたんだけど。
「そ、それならその魔核に私の魔法を試してみたら駄目、かな?」
迷っていた僕に声を掛けてきたのはイシスだった。イシスはどうやらこの魔核に生命魔法をかけてみたいようだ。
「おいおい、そんなことしたら折角倒したのに再生しちゃうんじゃないのかい?」
「かも知れない……だけど悪いようにはならないと思って……ただ勝手なことを言っているのはわかっているから無理なら無理で」
「いいよ」
「え?」
イシスがキョトンっとした顔を見せる。
でも僕にはなんとなく言いたいことがわかったからね。
あのモ愛をこのまま終わらすのはしのびないと思ったんだろうなって、だから。
「はい魔核」
「う、うん! ありがとう。それなら、生命魔法・生命付与!」
イシスが魔法を魔核に向けて使う。瞬間、ドクンっと魔核が心臓のように動き出し、そして段々とモアイの形に戻っていく。
「愛よね愛ーーーーーー!」
そして立っていた、今倒したばかりのモ愛が。
「ちょ、本当に復活したよ!」
「大丈夫なのかよ?」
『ケケッ、倒した相手を復活させるなんて物好きな女もいたもんだ』
「おにぃさっま~愛ですの~あい、愛~うふふ~」
「ン、ンゴッ……」
「ス~ナ~……」
思い思いの反応を見せる一同。そして復活したモ愛の顔がイシスに向けられた。
「私を再生したのは貴方ね」
「は、はい。そうです」
「そう、愛ね! 愛を確かに感じたわーーーーー!」
モ愛が感激の言葉を発した。両手を祈るように組んでそして熱い視線をイシスに注ぐ。
「でも、どうして私を?」
「その、そこまで悪い人、えっと? モアイ? には見えなかったから……」
イシスがそう説明した。僕も感じたことだけど、倒して終わりにするには忍びなかったんだよね。
「うふふ、そう。わかったわその愛、にはしっかり答えないとね。マイマスター、今日から私は貴方の愛の下僕よ! マスターであるイシスの為にこの身と愛を捧げるわ!」
「お、おいおいマジかよ! それって!」
「仲間になってくれるってことかい?」
「そうね。マスターに忠誠を誓った以上、私はみんなの仲間、ということになるかしら。愛よね愛!」
「えっと、道を譲ってくれるかなぐらいと思っていたんだけど……」
イシスはキョトンっとしていたけど、でも、モ愛はすっかりその気みたいだね。
「ふむ、面白い魔法よのう。カセの時もそうであったが、傷を癒やすだけではなく、このように下僕を増やすにも使えるのだからのう」
『ケケッ、俺は別に下僕じゃねーよ!』
「そういうつもりもなかったのだけど、でも、よろしくねモ愛!」
「イエスマスター! この愛に掛けて貴方を守り抜くわ!」
「でもよぉ、このまま連れて行くにはデカすぎないか?」
ふと、ライゴウが言った。確かにモ愛はかなり大きい……加速モードになったとしてもそれでもまだ結構大きいしね。
「心配ご無用。私は言ったはずよ。あの時二回変身を残していると。つまり後一回私は変身を残している! いくわよ愛のメタモルフォーーーーぜッ!」
そしてモ愛がキラキラと輝きだし、その身が変化。みるみるうちに縮んでいったよ!
「うふふ、どう? これが私の最後の変身した姿。愛モードかしら!」
「「「「「えぇえええぇえええぇええええ!?」」」」」
「ンゴォ~~!」
「スーーーーナーーーー!」
僕もふくめて一斉に驚いたよ。モ愛が手のひらサイズのちっちゃな女の子になっちゃったんだもん!
「ふふふ♪ どう? とっても愛らしいかしら? 愛よね愛!」
「えっと、本当にモ愛?」
「そうよマイマスター」
えっへんっとモ愛が胸を張った。見た目はピンク髪の小さな少女だ。ちなみに理屈はよくわからないけど羽衣のような服も着ている。
それにしてもモアイの面影が全く、あ、でもしっかり愛の文字は残っていたよ。
「マスターの肩に乗せてもらってもいいかしら?」
「あ、うん!」
イシスが彼女を手のひらに乗せて肩まで持っていくと、うんしょうんしょという声を上げながらモ愛がイシスの肩に移動したよ。
「これで一緒に移動できるかしら! 愛よね愛!」
「なんだかよくわからないけど、それで戦えるのか?」
「馬鹿にしないで欲しいかしら! 愛の打ち上げ!」
「ゴフッ!」
モ愛が言うと、ライゴウの足元から石が伸びて股間を直撃した。悶絶しているよ。これは痛い……
「やるわねモ愛」
「どうかしら。でも、モ愛は過去の名前かしら。愛のために! マスターから新しい名前を求めるかしら!」
「え? 名前、う~ん。それなら、アイちゃんでどうかな?」
イシスは決断早いね! だけど、確かに彼女によくあった名前だと思うよ。
「気に入ったかしら! 愛よね愛!」
うん、新しい名前をモアイだった彼女も気に入ったみたいだね。こうしてイシスの力で新しい仲間としてアイが加わったんだ――
愛よね愛!
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