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砂魔法で砂の王国を作ろう~砂漠に追放されたから頑張って祖国以上の国家を建ててみた~  作者: 空地 大乃
第八章 狙われた砂の王国編

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第331話 感覚の戦い

いつも感想や誤字脱字報告を頂きありがとうございます!

 ギルとアイン――互いの剣と槍が交差を繰り返す。火花が散り、擦過音が空気を裂いて耳朶を打った。


「その覚悟は認めてやってもいいが、自ら聴覚を失ったのは失策だったな」


 ギルの足さばきが変わる。砂を舐めるように滑り、踏み替えの“音”を消したまま、視界の死角へ身を落とす。


「む……」


 アインが低く唸る。自ら聴覚を封じた以上、視界から消えた相手の位置を割り出す手段は限られる。


「貰った!」


 視覚外からの刃――狙いは頸動脈。いまのアインには避けられまい、とギルは勝利を確信した。


「フンッ!」


 だがアインは石突(いしづき)で地を打って反発を得ると、槍の尻を跳ね上げる要領で刃筋を挟み込み、ギルの一撃を受け流した。ギルの眉間にわずかな強張り。


「テメェ、音は聞こえないはずだろうが!」

「聞こえこそせぬが、貴様が“焦っている”のはわかる。残念だったな。我はアイアンアント(・・・・・・・)だと言ったはずだ」

「……何だと?」


 ギルが間合いを切り、アインの額から伸びる触覚(しょっかく)へ視線を落とす。


「そうか――それはただの飾りじゃなかったってわけだ」


 人化しても残った蟻としての名残。その“感覚器”は健在だった。


「今度はこちらから行くぞ!」


 アインが槍を振り回す。力強く、当たれば骨ごと砕く一撃――だが振りは大きく、視覚的には隙も多い。


「何だその攻撃は? お前は風車か」


 嘲りは届かない。ただ外見上は、闇雲に槍を廻しているだけに見える。


「――貴様は“感覚”を制限されても、その挑発を続けられるかな?」

「な……まさか!」


 ギルの声に緊張が滲む。アインの大振りは“風車”ではない。扇のように空気を攪拌し、砂を巻き上げる“払拭”だ。

 砂礫がうねり、茶の壁が視界を埋める。


「これが目的で――」

「終わりだ! 蟻顎羅穿豪槍(ぎがくらせんごうそう)!」


 回転の(うな)りが深く鳴る。砂幕の向こうから迫る螺旋の穂先(ほさき)。アインは触覚(しょっかく)で相手の微細な気流の変化を捉えている。

 逆に、視界を奪われたギルは“見る”を封じられ、初動が半拍遅れ――腹甲(ふくこう)に直撃。


 ギルの身体が砂を引きずって大きく吹き飛ぶ。


「やったぞ!」


 アインが叫ぶ。音は届かぬ。それでも槍柄を伝う“重み”が確かな手応えを教えてくれる――が。


「裏斬り!」


 ギルの喉が震えた直後、アインの背に衝撃。


「なッ――」


 熱が走る。振り返るより早く、背を走る痛覚が“深い”と告げた。そこには剣で切り裂かれた裂傷が刻まれている。


「馬鹿、な――」


 完全な死角。身構える猶予もなかった。傷は深く、アインは膝をつき、そのまま砂上に崩れた。


「惜しかったな。……と言っても聞こえやしないだろうが」


 ギルが砂を払って立ち上がる。臍下から上衣(うわぎ)をめくると、下には鎖帷子――魔銀(ミスリル)製の(スケイル)がきらりと光る。

 穂先(ほさき)が穿った箇所には丸い穴。金属が“めくれ”、砂がこぼれる。


「これをあっさり穿つパワーは認める。だが――お前の敗因は聴覚を捨てたことだ。触覚で補ってはいたが、技を“撃つ”時に参照していた情報が欠ければ、キレは落ちる。普段頼っている分、な」


 ギルは冷ややかに告げると、倒れ伏すアインの背傷を一瞥する。

 “裏斬り”――刃の届かぬ距離からでも背後へ切っ先を回り込ませる、ギルの得意とする奇襲刃。見せれば警戒されるため、ここぞでのみ温存する切り札だ。


「ま、いいさ。テメェはここで死ぬ」

「ぐっ!」


 ギルが剣を振り上げ、アインが喉の奥でうめく。刃が落ちる――その瞬間。


「光魔法・指閃!」


 鋭い光条がギルの視界を横切る。身を翻して一条をやり過ごすも、続く光が矢継ぎ早に迫る。


「チッ、仲間か」

「アイン! 大丈夫ですか!」

「……メル――」


 アインがかすかに呟く。ギルが横目で確認すると、アインと同じく触覚(しょっかく)を戴く女――メルが、眦を吊り上げていた。


「ボスが好きそうな女だが……時間切れか。命拾いしたな、蟻ども!」


 ギルが吐き捨てた直後、陽を遮る巨大な影。見上げれば、空を裂いて舞い降りる怪鳥。

 脚の鉤爪がギルの身体を易々と攫い上げる。


「じゃあな」


 高度を取り、怪鳥はそのまま旋回して離脱。メルの指から次の光線が放たれ、怪鳥の翼膜を正確に撃ち抜くが、ソレは怯む素振りも見せず、砂漠の彼方へ――あっという間に黒い点になっていった。

本日発売の月刊コミックREX3月号にて本作のコミカライズ版第27話が掲載されてます。

そしてコミック単行本第3巻が2月27日発売!どうぞ宜しくお願い致します!

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