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砂魔法で砂の王国を作ろう~砂漠に追放されたから頑張って祖国以上の国家を建ててみた~  作者: 空地 大乃
第八章 狙われた砂の王国編

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第330話 ギルVSアイン

いつも感想や誤字脱字報告を頂きありがとうございます!

「このアイン。王への忠誠のためにも、ここで貴様を討つ」


 魔剣(まけん)ギルティスを逆手に構えたギルと、王に忠誠を誓う騎士アインが向かい合う。

 アインは槍をわずかに下げ、穂先(ほさき)と視線を一致させたまま、ギルの一挙手一投足へ意識を沈めていた。砂塵がひと筋、二人の間を横切って消える。


「なかなか手強そうだ。その触覚はダサいがな」


 口角だけで笑うギル。露骨な挑発だ。動揺を引き出せるなら安いもの、という算段。


「これは我がアイアンアント(……)であることの証。嘲る筋合いはない」

「アイアンアント? どう見ても人間だろう」

「主に名を与えられ、我は進化したのだ。主は我が命の恩人。ゆえに配下の蟻たちも王に忠誠を誓っている」


 なるほど、とギルが小さく頷く。言葉の端々から、この騎士が元は蟻の“高位”、群れの頂点にいたことが読み取れる。


「配下がいたとなると、かつてはお前自身が蟻の王、というわけか?」

「かつては、な。だが今の我は王に仕える騎士。それゆえ――」


 言葉と同時、アインの槍が“伸びた”。石突(いしづき)が鳴り、()が鞭のようにしなって間合いを食い破る。

 ギルは首の角度だけで射線を外し、紙一重で回避する。


「伸びる槍か。変わった獲物だな」

「これぞ王から賜りし宝槍――行くぞ蟻顎豪槍(ぎがくごうそう)!」


 魔力が()を満たし、伸縮機構の駆動音が低く唸る。槍がさらに加速、砂地を穿つ衝撃で周囲の窓ガラスがビリビリと震えた。


「穴掘りに便利そうな技だな」

「余裕も今だけだ」


 アインの構えが変わる。右足を半歩引き、槍を大きく引き絞って左掌を()に添える。


「――蟻顎羅穿豪槍(ぎがくらせんごうそう)!」


 手首の捻りが起点。穂先(ほさき)がドリルのように回転し、空気を刳り取りながら一直線に伸びる。

 突風。唸る旋回音。来る一突きは、避けても“巻き込む”。ギルはあえて外さず、後方へ跳んで減速を乗せながら、ギルティスを縦にして受けた。


 回転により擦れ合い、耳に刺さる金属音が弾ける。火花が散り、ギルの足が砂を蹴って後退。だが体幹を捻って力の向きを逃がし、最後の一()で刃を滑らせるように受け流した。


「ふぅ。今のは危なかったかもな」

「……なるほど。ただの賊ではなさそうだ」

「まあな。だが解せない。どうしてそれだけの力を持ちながら、人に付く?」

「先に言った。王は我が命を救ってくれた――それが理由だ」

「命をね。だが“救った”という言葉ほど、都合のいい首輪はない。疑いはしないのか?」


 ギルの声音が、砂に染みる毒のように低くなる。


「貴様、王を愚弄するか?」

「厚い忠誠心だ。だが少しも疑問はないのか? ――なぜ蟻のままではなく“人化”させた? 俺から見れば、手元で使い勝手の良い駒にするため、敢えて人型にしたとしか思えないが」

「……戯言を」

「まあ聞け。第一、“救った”が怪しい。たとえば最初から救う前提で舞台を組んでいたとしたら? お前の命の危機すら、あのホルスとかいう男の筋書きだった可能性は?」

「黙れ!」


 アインの槍が唸り、薙ぎ、突く。重い。だが、さっきまでの緻密さが数合だけ鈍る。


「心を乱したな。それこそが証拠だ。お前自身、王を――いや、“人間”を、信じ切れていない」

「黙れ!」

「それに配下の蟻はどう思っている? “王”であるお前が人間に膝を折ったせいで、急に別の王に従えと命じられた。可哀想だと思わないのか?」

「いい加減、その口を閉じろ!」


 アインの呼吸が荒む。ギルの口角がうっすら吊り上がる。

 

――“裏切りのギル”。相手の心の綻びに指を掛け、(くさび)を打ち込むのはお手のものだ。


「よく考えろ。お前は“賜った”と言ったな。その程度の褒美で、王にとっては大いに得だ。お前が王に与えたもの――群れ、素材、力――と、与えられたものは釣り合っているか? 配下を預け、自由を捨て、人間に忠誠を誓う駒にされる。それが本当に、お前の――」


 アインの足が、ピタリと止まった。

 その瞬間、ギルの目が愉悦に細まる。


「やっと気がついたか? ……そうだ。お前は誇り高い蟻の王だった。それなのに人間に――」

「フンッ!」


 アインが突然、両掌で自らの耳を強く打ち抜いた。

 鈍い衝撃音がギルの鼓膜を揺らし、次いで小さな破裂音。アインの両耳から、細い血が筋を描いて落ちる。


「――お前、まさか」

「我は、自分が情けない。貴様などの言葉に、心を乱しかけた。これは、自らへの戒めだ」

「だからって、自分の鼓膜を破るかよ……」


 ギルの声は、もうアインには届いていない。

 聴覚という最短経路を切り捨て、雑音を断ち、ただ“目で見る戦い”に全てを絞る。

 槍が微かに上下する。呼吸のリズムが変わった。足の裏が砂へ深く沈む。

 覚悟の音が、沈黙の底で確かに鳴った。


 アインは槍を胸の前で一度だけ回し、穂先(ほさき)をまっすぐギルへ。

 ギルはギルティスを肩へ預け、つま先で砂を鳴らす。心理の楔は折られた。ならば――斬るだけだ。


 風が止み、日差しだけが白く落ちる。

 二人の影が、同時に前へ滑った。

本作のコミカライズ版第16話が本日発売の月刊コミックREX2月号に掲載されてます!

最新コミック単行本第3巻の発売日も決定!2026年2月27日発売です!

どうぞ宜しくお願い致します!

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