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砂魔法で砂の王国を作ろう~砂漠に追放されたから頑張って祖国以上の国家を建ててみた~  作者: 空地 大乃
第八章 狙われた砂の王国編

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第328話 当然の違和感

いつも感想や誤字脱字報告を頂きありがとうございます!

 ロキが大事な話があるというので、僕たちは一旦執務室へ移動した。扉を閉めると、外の喧騒が一段薄くなる。


「それでロキ。話というのは?」

「その前に、フィー殿には席を離れていただきたい」

「え? フィーに?」


 真顔で告げたロキに、僕とフィーは顔を見合わせた。空気が少しだけ張りつめる。


「フィー殿。私は陛下と込み入った話があってな。お願いできぬか?」

「――ふむ。そうか。ロキよ、お主は本当にそれで良いのか?」

「勿論だ。私は陛下と話がしたいのだからな」

「そうか。ところで妾を見て、何も思わぬか?」


 フィーがわざと胸元を強調するような姿勢を取る。挑発、というより試金石だ。


「……何を言っているのかわからぬが」

「そうか。良いな、陛下」

「そうだね。だけど話は聞きたいから、やりすぎないでね」

「安心せい。これでも最近“加減”を覚えたのじゃからな」

「加減?」


 小首を傾げるロキに、フィーが右手をひと払いいれた。空気が鋭く鳴り、風の刃が走る。ロキはそれを紙一重でかわし、窓際へ跳んで口角を上げた。


「驚いたな。何故わかった?」

「うつけが。あのロキが妾に“部屋から出ていけ”など、天地がひっくり返っても言うわけがない。まして、これだけあからさまに“好物”を見せてやっておるというのに無反応なのだからのう」


 フィーが胸元に手を当て、淡々と告げる。そう、ロキは女性の胸に目がない。そんなロキがフィー相手に一切反応を見せないのは、最初からおかしかった。


「残念だったね。見た目だけいくら真似ても、中身が伴ってなければ意味がない」

「なるほど。とんだ好き者だったわけか、あのドワーフ」


 偽ロキが鼻を鳴らす。余裕を装っているつもりなんだろう。


「それで。お前は一体誰だ? コレクト公国の手の者か?」

「好きに想像するといいさ」


 ハッキリとは答えてくれないか。だけど否定もしていない。


「随分と余裕があるがのう。追い詰められておるのがわかっているのか?」

「そうでもないさ。どちらにしても、あんたらにとって“あのロキ”ってドワーフは大事なんだろう? ――それが既にこちらの手の内にあると言ったら?」

「何だって? お前、一体ロキに何を――」

「答えるわけがないだろう」

「それなら力づくでも聞くまでよのう」

「そう上手くは行かないさ」


 腰の革袋から小さな球体が取り出され、そのまま床へ叩きつけられた。ぱん、と乾いた破裂音。瞬く間に白濁した煙が室内を満たし、視界が奪われる。


「しまった!」


 ガシャアン! 窓ガラスの割れる音。僕が咄嗟に身構えるのと同時に、フィーが風を巻き起こして煙を霧散させた。だが、既に窓枠の向こうに姿はない。


「逃げ足の早い奴よのう」

「砂感知!」


 僕はすぐさま魔法で偽物を追う。けれど、外は人の流れが複雑に渦巻いている。砂の“揺れ”は幾重にも交差し、目印はすぐに紛れた。変身を解かれたら、なおさら見つけづらい。


 偽物の正体はわからない。しかも別の姿に化けられるとしたら、砂感知一本では厳しいか。


 街を警護する砂人形(サンドゴーレム)に命じて周辺を洗ってもらうけれど、そう簡単に尻尾は出さないだろう。胸の奥で、嫌な予感が砂のようにざらついた。


「とにかく皆に知らせないとね。ロキのことも気がかりだし」

「うむ。正直、ロキなど妾としてはどうでも良いのだがな」

「もうフィ~ってば」

「ス~」


 フィーが心底どうでも良さそうに肩をすくめ、スーが小さく頷く。困ったものだよ……いや、気持ちはわからなくもないけれど。


 でもこれって――女性陣は逆にロキがいなくなったことを歓迎したり、しないよね?


 冗談みたいな不安が喉元まで出かかったところで、僕は深呼吸してのみ込んだ。今は感情より先に、手を打たないと。


「フィー、見張り塔と砂人形(サンドゴーレム)の連携を強めよう。見張りを増やして警戒を強めるんだ」


 ロキの偽物もそうだけど、コレクト公国からの刺客が他にもいないと限らない。それに今後の事もある。


「確かにそれが良いであろうな。流石我が主であるぞ」

「そんな褒められるような事でもないけど――アマネトの警護も増やす必要はありそうだね」


 砂感知でアマネトの存在は確認できている。だから一先ず安心だけど、偽装、変身、撹乱――敵の手は一つじゃない。こちらも、一つじゃ足りない。


 いよいよコレクト公国が仕掛けてきた。割れた窓の外、砂交じりの風が街路を流れていく。日常と戦前の境目は、案外こういうところにあるのかもしれない――そんなことを思いながら、僕は執務室の扉を押し開けた。

本日発売の月刊コミックREX12月号にて本作のコミカライズ版第14話が掲載されてます!

コミック単行本1~2巻も重版され大好評発売中!どうぞよろしくお願い致します!

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