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砂魔法で砂の王国を作ろう~砂漠に追放されたから頑張って祖国以上の国家を建ててみた~  作者: 空地 大乃
第八章 狙われた砂の王国編

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第326話 処分して欲しい物

いつも感想や誤字脱字報告を頂きありがとうございます!

「ははは……あまりからかわないで下さいよ」


 ひとしきり騒ぎが落ち着いたところで、ロベリアにそう伝えた。商会の会長、しかも大勢の商人や領主と渡り合ってきた相手だ。

 普通に考えて、僕なんかを相手にするわけがない――そう思ってたんだけど。


「あら? 私はわりと本気よ。砂漠に一国を築き上げた陛下とあれば、相手として申し分ないわ。陛下にとっても利益のある事でしょう」


 口元に指を添えて、ロベリアが含みのある笑みを零す。


「陛下も、私を好きにできると考えれば悪くない話では?」


 胸元をわざと見せつけるみたいにしながら一歩詰められて、思わず喉が鳴った。


「い、いけないです! そんな考え――こういうのはお互いもっとよく知って、あ、愛ですよ愛!」

「その通り! 全ては愛! 愛よね愛!」


 イシスが僕とロベリアの間に割って入り、肩の上のアイも声を合わせて愛を連呼。勢いだけは満点だ。


「愛、ねぇ。うふふ、微笑ましいわね」

「なッ!?」


 軽くいなされて、イシスの表情がぴしっと変わる。


「なぁあんた。主とやらが迫られてるけどいいのかい?」

「問題ないのぉ。偉大なる主であればモテて当然。勿論、妾が正妻であることに代わりはないがのう」

「そんな事、勝手に決めないで欲しいですの」


 向こうではフィーにモルジアが噛みついてる。僕の気持ちはどこ。


「聞き捨てならんな。主の正妻には余こそがふさわしい。貴様など側室で十分だ」

「何を言うかと思えば。後からおまけで眷属になった魔神風情が図々しい」

「それは余に喧嘩を売っているということで良いのだな?」

「貴様こそ、身の程を弁えよ」


 フィーとリタの間でバチバチと火花が散ってる気がする! どうしてそうなるの!


「ス~」


 肩のスーがぎゅっと抱きついてきた。まるで「取られたくない」って言ってるみたいで、可愛い。可愛いけど、周囲の状況が目について心臓に悪い。


「なぁ。陛下がモテるのはわかったけどよ、いい加減話を進めようぜ」

「全くだな。陛下も妹に振り回されすぎであるぞ。情けない」

「ご、ごめん。でも確かにその通りだよ! ロベリアもそう思わない?」

「仕方ないわね。そうね――彼女の言い分も一理あるし。この続きはまた別の機会にしましょう。商売の話を続けましょうか」


 助かった……。話題を切り替え、ロベリアが持ってきた品の確認に戻る。もちろん商売だから、こちらから提供する物もある。

 アリババ商会の時と同じく、砂金や宝石混じりの砂なんかがうちの主力の交換品だ。


 交渉はトントン拍子に進み、数字も折り合った。よし、まとまった――


「それではこれで失礼しますわね」

「はい。今回も良い取引が出来てよかったです」

「それならよかった。ところで――」


 ロベリアが距離を詰めてきて、どきっとしたけど――


『アマネトは元気でやってるかしら?』


 耳元でささやかれた。そういえばロベリアは、アングルがまだアマネトの事を知らないと思ってるんだっけ。


「はい。アマネトは元気ですよ。良ければ会っていかれては?」

「ちょ! 貴方!」


 慌てるロベリア。そこへ、やれやれとアングルが肩をすくめる。


「どうせ私が知らないと思っているのだろうが、とっくに知っているぞ。残念だったな」

「え? そ、そうなの?」

「はい。そのうえで僕たちに協力してくれると、アングルは約束してくれたんです」

「……そう」


 ロベリアはアングルへ視線をやってから、ふっと優しく微笑んだ。


「やはり、陛下にお願いして間違いなかったようね」


 その笑顔は、さっきまでの妖艶さとは少し違って見えた。


「それでは、会われて――」

「いえ、今日はやめておくわ。それより一つだけお願いしても宜しいかしら?」

「え? はい。内容にもよりますが」

「大した事じゃないわ。あそこにある車体を処分しておいて欲しいのよ」


 ロベリアが指差した先には、ラクダに曳かれてきた幌馬車の一台が停まっている。


「え? でも十分綺麗ですし、まだ使えそうですが」

「それがね、荷台(にだい)床板(ゆかいた)が脆くなってて使い物にならないのよ。だからお願い。この一台だけだから」

「そうですか。そういうことなら構いませんよ」

「ありがとうね。特に床板は危ないから、一度しっかり確認しておいてね」


 ウインクひとつ。何気ない仕草で、また心臓が跳ねる。






◆◇◆


 トヌーラ商会の隊列を見送ったあと、残された幌馬車を確認する。


「主殿。見たところ異常は感じませんね」

「うん。荷台の床もそんなに傷んでるようには見えないんだよね」

「本当だねぇ~」


 僕が屈んで車体の底も確認しているとメルの声と同時に、頭にずしんと重み。……この大きさは。


「えっとメル。その胸が……いや、なんでもない」


 メルが手を伸ばして床板を叩き、反発を確かめているだけ。うん、仕事熱心。僕は大丈夫。理性は保つ。多分。


「ス~……」


 やめてスー、その目はやめて。誤解だから!


「ンゴンゴッ」

「ラク。それは食べ物じゃないから」


 ラクが床板の端を噛んで、イシスに怒られていた。……でも、噛めるってことは。


「ラク、ちょっとごめんよ」

「ンゴッ?」


 ラクにどいてもらって、荷台の床板をもう一度よく観察する。

 板の一枚に小さな蝶番(ちょうつがい)とピンが隠されていて、指を掛けられる切り欠きがある。


「この板、簡単に外せる……」


 傷んでるというより、最初から点検蓋(てんけんぶた)みたいに可動式。意図して作ってある。


「アイン。手伝ってくれる」

「勿論ですぞ」


 アインと二人でピンを抜き、床梁(ゆかばり)に沿って持ち上げる。ぱかり。


――その下に詰まっていたのは、ぎっしりの武器と防具だった。


「これは一体……」

「にゃ~! うちの収納用魔導具が組み込まれてるにゃん!」


 ペルシアが目を丸くする。なるほど。だから見た目よりずっと入ってるわけだ。

 にしても、並んでいるのは完全に戦用の装備ばかり。


「主様。こんなものが中に」

「え?」


 アインから受け取ったのは、一枚の羊皮紙。そこには――


『ここにあるのは売り物にならない不用品ばかりよ。ついでにこれも処分しておいてね』


 丁寧な筆跡と、端に小さな口づけの痕。


「……参ったな。ほんと、ロベリアもアリババも」


 口元が勝手に緩む。

 評議会の目を避け、表では“生活用品だけ”。でも裏では、僕たちに必要なものをきちんと届けてくれる。


「ありがたく“処分”させてもらおう」


 胸の奥に感謝をしまい込み、僕は皆に指示を出した。

 必要な整備を施し、足りない所は僕らで補う。――それで十分だ。


 砂漠の風が、幌をぱたぱた揺らして通り抜けていった。

発売中の本作のコミカライズ版ですが、なんと1巻2巻共に重版が決定しました!嬉しい!

これも偏に皆様の応援あってこそ!本当にありがとうございます!

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― 新着の感想 ―
相手が厳しいとき助けるとこちらが厳しいとき助けてくれる 理想の関係かもね
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