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砂魔法で砂の王国を作ろう~砂漠に追放されたから頑張って祖国以上の国家を建ててみた~  作者: 空地 大乃
第八章 狙われた砂の王国編

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第325話 またもや生活用品

いつも感想や誤字脱字報告を頂きありがとうございます!

「職人なのに凄い装備だね」

「死の砂漠を乗り越えるんですもの。職人とはいえ、これぐらいの装備は当然ですわ」


 僕の疑問に答えるようにロベリアが言った。言われてみれば、確かにそうなのかもしれない。


「それで、持ってきた品はどこにゃ?」

「もちろん見せるわ。――開けて」


 ペルシアが首をかしげると、ロベリアの命令でラクダ車から木箱が次々と降ろされ、封が外れる。出てきたのは、手押しポンプ、粉挽きの石臼、圧搾機、乾燥棚、洗濯板、石鹸、食器や保存瓶、日除けの布などなど……生活用品がずらりと並んだ。


「……武器、ねぇのかよ」

「鎧どころか盾ひとつないぞ」

「刃物は? 包丁しかないのか」


 冒険者たちがあからさまに不満顔。その気持ちはわかるけど、こういった品も大事なのは確かだ。


「ライゴウ、念のため確認しておこう。アリババ商会の時みたいに、生活用具に見せかけた“何か”かもしれない」

「まぁ、そうかもな……」


 スイムに言われ、ライゴウが手押しポンプのストロークを確かめ、乾燥棚の目合い、圧搾機のねじ山まで一通り見る。石臼は回るだけ、日除け布は日差しを遮るだけ。どう見ても、ただの生活用品だった。


「――紛れもない生活用品だ。出力を上げても火も氷も出ない」

「悪いけれど、戦争に利用できるような品物は用意できないのよ」


 ロベリアがきっぱりと言う。目は笑っていない。そこは、はっきりと線を引いてきたわけだ。


「ううん、十分助かるよ。ポンプがあれば各家に水を供給しやすくなるし、保存瓶や乾燥棚があれば食料だって安定する。ありがとう」

「陛下にそう言っていただけるなら嬉しいわ。これでも役立つものは用意したつもりよ」


 ロベリアがにこっと微笑む。改めて見ると、本当に綺麗な人だ。


「やれやれ。こんなものしか用意できないとは、使えぬ女狐よのう」


 すかさずフィーが挑発してくる。やめて、火種を撒かないで。


「フィー、言い過ぎだよ。生活が整えば、皆が無駄に傷つかなくて済む」

「そうですよ、フィー。私もホルスに同意します。こういう時はフィーもしっかりお礼を言うべきですよ」


 イシスがきっぱりとたしなめる。肩の上のアイも「愛のためにも反省!」と元気よく追撃。はい、そこは愛じゃない。


「ふん。そんなものかのう。――まあよい、妾からプレゼントじゃ」


 フィーが指先で何かをつまみ、ひょいっとロベリアへ放った。黒くて、細長くて、足がやたら多い、あのフォルムは――


「……えっ、ちょ、まっ――きゃあああああああ!」


 ムカデが見事な放物線を描いてロベリアの胸元へ。谷間に吸い込まれて、消えた。


「ロ、ロベリア、落ち着いて!」


 僕は思い出す。そういえばロベリアは、こういった足の多い虫が大の苦手だったんだ。


「むりむりむりむりむり! 陛下ぁっ、とってぇ! 早く、とってぇぇ!」


 腰を抜かしたロベリアが、涙目で僕の腕にすがりついてくる。近い、近い近い近い……!


「し、失礼、しますっ!」


 僕は深呼吸して、布巾でそっと挟み込む。肌に触れないよう、角度を変えて――今だ。するり、と引き抜き、そのまま砂地へ。ムカデは元気に走り去っていった。よかった。とりあえず、これで安心だよ。


「情けない女狐よのう。これしきで腰を抜かすとは」

「……ッ」


 ロベリアがキッとフィーを睨む。次の瞬間、ふっと表情を切り替えると、今度は僕にぎゅっと密着してきて、顔を胸に押し付けた。


「陛下……ありがとう。助かりましたわ……」

「ちょ、ちょっと、ロベリア?」

「ドサクサに紛れてお兄様に何してますの!?」

『へへっ、おもしれぇじゃん。いいぞ、もっと過激に責めろ!』


 イシスが固まり、モルジアが叫び、カセは面白がって煽ってくる。笑い事じゃない。心臓の鼓動が耳まで響いてるんだけど。


「――いい加減にしますの!」

「えっ」


 パチン、とモルジアが指を鳴らした瞬間、僕とモルジアの位置が入れ替わる。空間魔法でスイッチ。ロベリアの胸に押し付けられていたのは、次の瞬間モルジアの額になった。


「どういうつもりですの? 説明、お願いできますか」

「あら? あなたにそんな趣味が? それとも、これが羨ましかったのかしら?」

「なッ!? そんなことないですの!」


 モルジアがロベリアから離れ、自分の胸元をぺたぺたと触った。モルジア……


「フンッ。やはり女狐か。しかし色気は妾には到底及ばぬがのう」

「随分と自信があるようだけど、陛下はまんざらでもなさそうでしたよ」


 笑顔で睨み合うロベリアとフィーが何か怖いんだけど。それにしても、あの感触――


「ふん。妹程度の色香に惑わされるなど、情けないぞ」


 僕たちの様子を見ていたアングルが鼻で笑い、眼鏡を押し上げる。いや、惑わされてない、惑わされてない……はず。多分。たぶん?


 いやいや! 落ち着け、落ち着け僕。深呼吸。えっと、次に確認するのは手押しポンプの設置場所で――


「ス~……」

「ンゴォ」


 そんな僕を見て、呆れ顔のスーとラクだった。そして何故かイシスはジト目で僕を見てくる。やめて、そんな目で見ないで!

本作のコミカライズ版の単行本1巻と2巻が好評発売中です!

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