第322話 武器になるものは売れない
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アリババ商会が色々と運んできてくれた。今回頼んでいたのは魔導具が中心で、戦に備えて使えそうな物もお願いしていた。
だけど、アリババと挨拶を交わした直後、彼は頭を下げて謝罪してきた。
「申し訳ないにゃ~。評議会から待ったが入ってしまったにゃ~。戦争に使える魔導具は卸せないことになってしまったにゃ~」
「そ、そんなお兄たま! どうにかならなかったのかにゃ!」
ペルシアがアリババに訴えた。アリババ商会から仕入れる魔導具は強力だからね。コレクト公爵と一戦交えることになるなら、ぜひとも利用したいところなのだけど。
「いいんだペルシア。こちらもあまり無理ばかり言えないからね。アリババ商会にも事情があるわけだし」
「ですがお兄様。アリババ商会の魔導具があるとないとでは大違いなのです」
「モルジアの言いたいこともわかる。でもアリババさんの気持ちも考えないといけない。これまでも助けてもらうことが多かったけど、だからといってそれに甘えて僕たちの問題に巻き込むわけにはいかない」
僕は間に立って皆に納得してもらうよう話をした。アリババ商会とはこれからも仲良くやっていきたいし、このことで不満を持たれたくない。
「わかってもらえて嬉しいにゃ~。戦いに使えそうな品は持ってこなかったにゃ~。けど、生活に役立つ魔導具は色々持ってきたにゃ~」
「それは助かるよ。見せてもらっても?」
「勿論にゃ~」
そして僕たちはアリババ商会が持ってきた魔導具を見せてもらうことになった。
「しかし、武器に使える物がないとはな」
「仕方ないですよ、ライゴウ。その分、私たちが協力して立ち向かえばいいのです」
アリババ商会が戦いに使えそうな魔導具を持ってきていないと知り、ライゴウは不満を滲ませていた。けれど、さすが冒険者ギルドのマスターを務めてもらっているスイムだけあって、アリババの気持ちを汲み取って諭してくれている。
「先ずはこれにゃ。魔導バーナーにゃ~。これがあれば食材を焼いたり金属の加工に使ったりととても便利にゃ~」
そう言ってアリババが細い口のある魔導具を出してくれた。腰に下げておく程度の大きさの魔力タンクとホースで繋がっていて、取っ手のレバー操作で炎を噴出できるようだ。
「便利そうですね」
「そうにゃ~、だけど注意が必要にゃ~」
「注意ですか?」
「ンゴッ?」
アリババが真剣な目で語ると、イシスとラクが疑問符混じりの顔を見せた。
「この魔導バーナーはこのタンクのダイヤルで出力の調整が可能にゃ~。これを最大にして使うと――」
そう説明した後、アリババが実際にダイヤルで出力を最大にしてからバーナーを使用した。するとゴォオォォオォオオ! と轟音と共に、竜の息吹を思わせるような炎が噴出された。
「見ての通り、最大にして使うととても危険にゃ~。当然人に向けて使ったり――これはあくまで例えだけどにゃ~――戦争が起きたからといって敵に使うなんて言語道断にゃ~。あくまで生活に役立つために使ってほしいにゃ~」
そう言って笑顔を見せるアリババ。一方で僕たちは揃って目が点になっていた。
「それとこれにゃ~。これは氷結機にゃ~。地面に設置したり壁につけたりも可能にゃ~。一定範囲を涼しくしてくれる便利な魔導具にゃ~」
「そ、それは砂漠では助かりますね」
バーナーで驚きつつ、次の魔導具に感心した。砂漠は暑いから、こういう魔導具は嬉しいよね。
「だけどこれも扱いには気をつけてほしいにゃ~。出力を最大にして設置してしまうとにゃ~」
そう言って出力を最大にして氷結機を設置。魔導具に向けて石を投げると、石がピキィイイン! と凍りついた。
「見ての通り、人間だって簡単に凍るにゃ~。この状態で設置したら危険にゃ~。例えば敵が攻めてきた時に罠として使用するなんてしちゃ駄目にゃ~。あくまで生活に役立てるために使用してほしいにゃ~」
「――プッ、ハハッ、アハハハッ、これは面白いではないか。なるほどのう、確かにこれは戦いに使うには危険よのう。これは言いつけを守って使わないといけぬのう。ただ、場合によっては間違ってしまうこともあるかもしれんのう」
フィーがニヤニヤしながらそんなことを言った。うん。さすがの僕でもここまでくればアリババの意図がわかったよ。
「勿論、その場合は自己責任になるにゃ~」
「なるほど。自己責任の範囲で上手く使えということか」
リタも納得がいったように頷いていた。その後もアリババが色々と生活に役立つ魔導具を見せてくれたけど、そのどれもが使いようによっては武器になったり身を守るために役立つような、そんな代物だったんだ――。
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