第311話 ロベリアの弟
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「バラムドーラでの仕事は順調なようね――」
ロベリアは書類を確認しながら自室で呟いた。トヌーラ商会から派遣した火竜建団の働きぶりはバラムドーラでも評価されているようであり、建材の追加発注も定期的に来ていた。
その対価としてトヌーラ商会にはバラムドーラで採取される砂金や宝石の砂などを受け取っており、これらを加工して流通させることでトヌーラ商会にもかなりの利益が出ていた。まさに現状はウィンウィンの関係だとも言えるだろう。
「それにしてもこの発注書――フフッ、まさかあの兄さんがね」
ロベリアは発注書に担当者として記載されたアングルの名前を確認し微笑んだ。当初はバラムドーラ王国に残ることに不満を口にしていたアングルだが今はホルスの下で真面目に仕事をこなしているようだった。
正直言えばトヌーラ商会で働いていた時よりも遥かにいい仕事をしているといえる。ロベリアはアングルが会長の席を狙っているのを知っていた。その為に裏でコソコソ動き回っていたことも察していた。
ただアングルは正直その手の工作が下手だった。本人には自覚がないようだったが詰めが甘く正直泳がしておけばいずれボロが出ると思ったわけだが案の定だった。
ロベリアにとって想定外だったのはその結果バラムドーラにとって役立つ人材に変わり始めていることだったが、これは彼女にとっても嬉しい誤算でもある。
勿論ロベリアはしたたかだ。嬉しいという意味にはいざとなればアングルを利用してバラムドーラの内情を知ることも出来るというものもある。
もっとも現状ロベリアからみてもバラムドーラとの関係は良好であり、今は大人しくことの成り行きを見守っていようとも思っている。
「後は――アマネトの事かしらね」
アマネトはロベリアがホルスに託した奴隷でもあった。それはアマネトを狙う存在があまりに危険だった為。
だからこそ死の砂漠という本来なら誰も立ち入らないような場所に建国したホルスを頼ったのである。
「姉さんちょっといいかなぁ?」
その時、会長室のドアがノックされすぐにガチャリとドアが開かれた。
「返事ぐらい待ってから開けなさい」
「あははは、ごめんね~♪」
軽い調子で入ってきたのはボング・トヌーラ。アングルと同じくロベリアの腹違いの弟である。
「それにしても貴方が部屋に来るなんて珍しいわね」
「そうかな? 僕はいつだって姉さんの事を気にかけているつもりなんだけどね」
「はいはい」
適当にあしらうロベリア。このボングは奔放な男であり、トヌーラ商会に所属こそしているが仕事は基本適当であり自由に遊び歩いている事も多いような存在だった。
その為か今は亡きヨクゴウも手を焼いていた。だがロベリアは会長の座に就いた後もボングを見捨てることはなかった。なぜなら彼は一見するとボンクラに思えても時折思いつくアイディアには秀逸な物も多くそれが大きな利益を生むことも少なくなかったからだ。
ロベリアはそれがボングの個性だと思っていた。そしてその個性は好き勝手な振る舞いから生まれているとも考えていたわけだが――
「ところでアングル兄さんはまだ出向中なの? なんだっけ死の砂漠に出来た国のバラバラドームだっけ?」
「バラムドーラよ。今のウチにとって大事な取引先でもあるのだから名前はしっかり覚えておきなさい」
「はは、善処するよ」
その適当さに嘆息するロベリアであるが。
「それでさ。その国から入ってきてる砂があればこんなこと出来ると思うんだけど」
ふと、ボングがそんな提案をしてきた。提出された書類を確認するロベリア。それはバラムドーラ王国の砂をうまく利用したフェアの開催を提案するものだった。
「あら、いいじゃない。やっぱり貴方はこういう事を企画するのが得意ね」
「それはどうも。姉さんに喜んで貰えて嬉しいよ」
そう言って笑うボング。ロベリアはボングから渡された書類を確認し感心していた。
「ところこで姉さんいつの間にかバラムドーラと奴隷取引も始めたんだね」
「――まぁ、そうね」
ふとボングから問いかけられたことにロベリアは軽く答えた。ボングがこの事を知っているのは特に不思議なことではない。取引記録はそれ相応の権限さえあれば誰でも閲覧可能になっているからだ。
「でもどういう風の吹き回しなんだろうね。確かバラムドーラって前は奴隷に対して否定的だって話だったんだよねぇ? それなのに急に取り引きしたいだなんて」
「そういうところは覚えているのね」
目を細めロベリアが言葉を返した。ボングはどこか飄々とした態度を変えることなくロベリアと視線を交わしてくる。
「一貫性がないなと思って気になったんだよ。それで今後大丈夫かなって」
「そんな心配は不要よ。バラムドーラは国として成長している真っ只中だから人手が必要だった。そこで私が提案した。お互いに利害が一致したからこそ成り立った契約よ」
「ふ~ん……そっか。それならまぁ安心だね」
にっこり微笑みボングが立ち上がる。
「それじゃあその企画考えておいてよ」
「そうね。それにしても貴方しっかり覚えていたのねバラムドーラ王国の名前」
「はは、さっきので覚えたんだよ。それじゃあ宜しくねぇ♪」
そしてボングは手をヒラヒラさせて会長室を後にしたのだった――
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