第310話 砂漠に砦を造ろう
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話が決まり僕たちはその足でパピルサグ族の村の向かった。村では族長のクリムゾンが快く僕たちを出迎えてくれて話を聞いてくれたよ。
「なんとこの近くに砦をか。それは喜ばしいことだが本当にいいのか?」
「いや、こちらこそ問題はないか確認する立場だからね。建てさせてもらってもいいかな? 勿論有事の際はパピルサグ族の皆に被害が及ばないよう全力を尽くさせてもらうつもりだよ」
僕がクリムゾン相手にそんな話をするとその顔から笑みが消えて不機嫌な顔になった。
「俺たちも舐められたものだな」
「あ、そうだよね。危険が及ぶかもしれないのに砦を建てるなんて族長として看過出来ないか。その気持ちもわかるよ」
「そうではない! 全くわかっていないな。俺が怒っているのはホルスが我らを頼らないことにだ!」
「え?」
クリムゾンが語る理由に僕は思わず彼を二度見したんだ。
「我々は戦士の一族だ! そして俺はホルスが王であると同時に我が友と考えている! そんな友が戦うと決めたなら当然我々も戦う! その覚悟は出来ているつもりだ!」
熱弁するクリムゾン。あぁそうか。僕は勝手に彼らに迷惑を掛けたくないなんて考えていたけど、それは独りよがりの感情だったんだ。
「友を前線に立たせて守られているだけなど俺の仲間にそんな腰抜けなどいない。だからこそ我々がお前に望む言葉は一つだ。この意味わかってくれるな?」
「……うん。そうだね。わかったよクリムゾン。それなら僕も友としてお願いするよ。いざとなった時は是非一緒に戦って欲しい」
「その言葉を待っていたぞ!」
そして僕はクリムゾンと固い握手を交わした。砦を造ると決まったことで僕たちの絆はより深まった気がするよ。
「陛下はよい友を持ちましたな」
「当然であろう。ホルスは妾が認めた王であるからな。人を見る目もあるのだ」
ジャハルが感心しフィーが僕について語っているのも聞こえた。何だか改めて言われると照れくさいかもね。
そしてその日は改めて友情を誓いあったという理由で宴に招かれることになった。そんな気はしていたけどね。パピルサグ族はお酒も好きだし祝い事も大好きだからね。そして翌日からパピルサグ族とも話し合って砦の建設場所と配置など色々と話し合ったんだ――
◇◆◇
「デュハンはいるか! どこだデュハン!」
帝国の城にて皇帝の怒号が響き渡った。その顔からは不機嫌さが滲み出ている。
「そう大声で何度も呼ばなくても聞こえておりますよ」
「な、き、貴様どこから出てきた!」
皇帝が叫んだ。確かにデュハンはいつの間にか皇帝の目の前にいた。それを不気味に感じているようだが、呼ばれたからこそこうして出てきたのでありそれで怒鳴られるのも理不尽というものだ。
「それでご要件は?」
仮面の奥に見える瞳で皇帝を見据え問うデュハン。相手が皇帝だからと下手に出る様子は一切感じられず堂々としていた。
「そうであったな。偵察隊から知らせが届いたぞ! あの馬鹿が砦まで建て始めたらしい! 貴様がまごまごしている間にこの体たらくだ! やはりとっとと攻めに転じるべきなのだ!」
皇帝が叫ぶとデュハンはやれやれといった様子で皇帝を見た。
「こちらの動きに感づいたのでしょう。それならば相手とて指を咥えて眺めているわけにもいきませんからね。しかし砦の建設程度十分想定出来たこと。特に問題はありません」
「随分な自信だが向こうは砦の建設がやたらと早いという話だ。これでもまだ大丈夫と言い張るのか!」
「追放された皇子の属性は砂属性――でしたな。先の戦いの報告書を見るに相手は砂を利用して様々な物を作成出来るようですからな。砦も砂属性の魔法で建造したのでしょう。我々とはやり方そのものが異なるのです。確かに魔法で建てる分、砦を建てるだけならば早いでしょうがその分穴もあるのですから心配はありません」
「それならば逆にその穴を利用して攻め込めばいいだろう!」
デュハンは仮面の中でため息を付いた。皇帝にしては短絡過ぎると呆れているようでもあった。
「以前も申し上げましたが今、侵攻を急いだところで良いことはありません。外聞的な意味でも、ね。まずは地盤をしっかり固めてから望むべきなのです」
「くっ、ならばそれは一体いつだ! いつまであのゴミをのさばらせておくつもりなのだ!」
皇帝が叫ぶ。これが一国を任された皇帝の姿か、と呆れる他ないが、口調からここまでムキになる理由がわかった気がした。ようはこの皇帝は気に入らないのだ。自分が無能と思って追放した子が建国し成長し続けていることが。
「私から申し上げられることは、今は特に冷静になるべきということです。そもそも偵察隊の話も私は聞いていなかった。そのつもりがあるなら言って頂ければふさわしい人材で編成したというのに勝手に命じたことでムダに犠牲が増えてしまいましたからな」
「グッ!」
デュハンに痛いところをつかれ皇帝が奥歯を噛み締めた。確かに皇帝が勝手に偵察隊を向かわせた結果、そのうちの九割が砂漠で死亡している。死の砂漠と呼ばれた地は甘くはない。偵察一つとっても本来は命がけなのである。
「――とは言え、相手も動き出したからにはこちらもそろそろ次の手を考えるべきでしょうな」
「何? 貴様、何か考えがあるのか?」
「……フフッ。そうですねまぁ見ていてください。この手がうまく行けば砂漠の王国は砂城が崩れ落ちるように瓦解することでしょう」
仮面の奥に瞳に怪しい光が宿る。その様相に皇帝を息を呑むのだった――
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