第304話 砂漠で因縁に決着
「そもそも余は炎の魔神であることを忘れたか? にも関わらずその程度の炎で勝った気になるとは随分と舐められたものだな」
リタがバルバトス相手に言い放つ。確かにリタは炎を得意とする魔神だ。そんなリタが炎で燃え尽きるとか考えられないよ。
「ハッ! だったらこれでも喰らえ!」
バルバトスは再び口から業火を吐き出した。今度は先程のものよりも大きく激しい炎がリタを襲う!
「ハハッ! これなら流石に耐えられねぇだろ!」
どうだと言わんばかりに叫ぶバルバトス。だけどリタは避ける様子も見せず迫り来る業火を正面に笑ってみせた。
「舐めるなよ」
リタは業火を両手で受け止め、かと思えば炎を回転させ掻き集め巨大な火の玉に変えてしまった。
「な、お、俺の炎を!」
「フンッ。汚い炎だな」
リタが集めた炎にフッと息を吹きかけた。すると炎が燃え上がり美しい紅蓮の火球へと変化する。
「余の炎を混ぜれば多少はマシになるか。さてどうしてくれよう?」
「グウゥゥウゥウゥウウ!」
バルバトスがうめき声を上げ、どこからともなく長柄の斧を現出させた。そしてリタに向けて思いっきり振り下ろす。轟音と共に砂が噴水のごとく吹き上がった。
「どうだ! 俺のパワーがあれば貴様なんざ軽くひねり潰せるんだよ!」
「確かにパワーだけなら大したもんだな。だがそれだけでは余には届かんぞ」
「な、どこから」
バルバトスがキョロキョロと首を振ってリタを探すけど、それじゃあ見つからないよ。だってリタは既にバルバトスの頭上にいるんだから。
「どこを見ている」
「な、上! か――」
ようやく気がついたバルバトスがリタを見上げるけど、その表情は絶望に変わっていた。だって頭上のリタは更に巨大になった火球を掲げていたのだから。
「ほら、返すぞ」
そしてリタは巨大な火球をバルバトスに投げつけた。バルバトスが両手で火球を押さえ防ごうとするけど、それも長くは持たなかった。
「グギギギギッ、こ、こんな馬鹿な。俺とお前でここまで差がつくなど、グ、グアァアアアァアアアァアアア!」
そしてバルバトスはリタの火球に飲み込まれ全身を業火で焼かれることになった。あとに残ったのはバルバトスの形をした黒い焼け跡だけだったんだ――
「フンッ。やっと決着がついたようだのう。しかし偉そうな事を言っていたわりに時間がかかったではないか」
地上に降りたリタに向けてフィーが挑発じみたことを言った。リタがフンッと鼻を鳴らして見せる。
「まさかここまで弱かったと思わなかったからな。あまりに拍子抜けしすぎて逆に時間がかかったぞ」
そう言ってリタが紅蓮の髪を掻き上げた。その姿がすごく綺麗に思えたよ。
「ま、妾であればあの程度、秒で倒せたがのう」
「はは、終わった後ならなんとでも言える」
「ならお前で試してやろうか」
「やってみるがいい」
そしてリタとフィーの間に火花が散る。もう、なんでこうなるのさ。
「ストップストップ! もう決着はついたんだから二人ともその辺りで、ね?」
「主がそういうのであれば妾は従おうではない」
「まぁ主がそう言うなら仕方ない。しかし――余が強くなれたのも主様のおかげであろうな。感謝しよう」
そう言ってリタが頭を下げてきたよ。いやいや、僕は特に何もしてないからね!
「頭を上げてとにかくリタが無事で良かったよ」
「はい。何事もなくてよかったです」
僕がリタを労うとイシスも隣にやってきて安堵していた。
「これで工事も再開できますね。お兄様!」
モルジアが僕の手を取って嬉しそうに言った。確かにバルバトスも倒された今、後は工事を進めるだけだね。
そして改めて皆で地下水路の工事を再開させた。もうそれほど時間はかからないと思うし、あとちょっとだね!




